NTTドコモが6月5日から提供する新料金プラン「ドコモMAX」への評価が二分している。スポーツ配信サービス「DAZN」の視聴料をセットにしたことで「安価にJリーグやプロ野球、F1が見られるのはありがたい」と高評価が上がる一方、「DAZNなんて見ない。不要だからもっと安くしろ」という批判の声も相次いでいる。
DAZNは日本に上陸した2017年、NTTドコモで契約すれば月額980円だった。しかし、年々、値上げが続き、いまでは月額4200円にもなっている。Jリーグは全試合、DAZNで配信されているため、「Jリーグを見たいが、DAZNを契約するのはつらい」と解約してしまう人も多い。DAZNの値上げによって、スポーツのファン離れも起きつつある。
NTTドコモとしては、2020年ごろの菅義偉政権による「値下げ圧力」によって、オンライン専用プラン「ahamo」、低容量プランとなる「irumo」などを提供してきた。
その結果、通信料収入はガタ落ちで、収益に相当なダメージを負うことになった。
そんな中、ここ数年、世間のあらゆるものが値上げとなっている。しかし、なぜか通信料金だけは、菅政権時代の「亡霊」がいるのか、なかなか値上げが許容される雰囲気になっていない。
ソフトバンクの宮川潤一社長は「通信業界は値下げの話ばかりしている。一番、心配なのは取引先で給料があがっているのかどうか。業界全体が好循環になるよう正常化させたい」と訴えるも、自分たちから「いまは値上げに動く気はない」とのジレンマが現れていた。
当然のことながら、同じデータ容量で単に毎月の支払額を上げるような、わかりやすい値上げをしてしまったら、すぐにユーザーは離れてしまうだろう。日本では、キャリアは4社、さらに主要なMVNOだけでも数十の事業者が顧客を奪い合っている。
NTTドコモとしては「いかにデータ容量だけで横並びで比較されないか」という点で新料金プランを検討し、DAZNや6ヶ月のAmazonプライム、国際データローミング30GBをセットにすることでお得感を出す一方で、金額を上げるという苦肉の策に打って出たのだった。
こうしたやり方は、すでにKDDIがNetflixやYouTube Premium、Apple Musicなどを組み合わせたプランを提供。一人あたりの通信料収入を上げるやり方として定着しつつある。
ただ、こういった手法について、SNSでは「DAZNなんていらないから安くしろ」という意見も多い。NTTドコモの担当者は「そうしたユーザーに対してはahamoの大盛りを勧めることになる」と語る。ahamoは2970円で30GBのデータ容量が使えるが、それに1980円の大盛りオプションをつけることで合計で4950円、110GBが使えることになる。
シンプルで大容量のデータ容量を使いたければ「ahamo大盛りをどうぞ」というわけだ。
今回、発表になった「ドコモMAX」はプレゼン資料では「データ無制限でも5148円」とアピールされている。
しかし、これは様々な割引施策を組み合わせたあとの金額で、実際の料金は8448円だ。「3回線以上の契約で-1210円」「20年以上、ドコモを契約してたら-220円」「dカードゴールド以上で支払っていたら-550円」「光回線とのセットで-1210円」「ドコモでんきを契約してたら-110円」といった割引が存在する。
長期契約割引は過去にはあったが、近年は辞めてしまっていた。ドコモは特に長期契約ユーザーが多いのだが、今回、あえて復活させたのはユーザーの声を反映したようだ。
ただ、「5つもの割引施策を組み合わせて5148円」というのは複雑で、かつ「囲い込みだ」という批判が上がっているのも事実だ。
こうした複数の割引施策を組み合わせる手法は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの常套手段であり、もはや日本キャリアの伝統芸だ。この仕組みを受け入れられないのであれば、すぐにでもNTTドコモを解約し、MVNOを契約すればいい。
一方で、「長年、ドコモを使っており、愛着がある」という人は、家族みんなでドコモを契約し、光回線もクレジットカードもみんなドコモにして、割引施策を最大限、享受すべきなのだ。
その昔、日本にキャリアが3社しかなく、提供する料金プランも限られていた時に、今回のような料金プランが発表されていたら「値上げでけしからん」という批判の声が上がるのは当然のことだろう。
しかし、今回、NTTドコモからは「ドコモMAX」「ドコモポイ活MAX」「ドコモポイ活20」「ドコモmini」という、4つの新料金プランが登場し、さらにahamoという選択肢がある。
KDDIはau、UQモバイル、povo、ソフトバンクはメイン、ワイモバイル、LINEといった具合に、キャリアの中でも複数のプランやブランドがあるし、もちろん「第4のキャリア」として楽天モバイルも存在する。
MVNOは、総務省の調べでは1890社もあるという(2023年12月末現在)。IIJmioやmineoといった世間的には格安スマホ、業界的にはMVNOと契約すれば、とてもシンプルな料金体系であり、何もせずとも月々の支払いを安くできる。
昔と違って、いまは「選択肢」にあふれており、自分にあった料金プランを自由に選ぶことができるのだ。
NTTドコモの新料金プランに納得がいかないのなら、とっとと見切りをつけて、別のキャリアにMNPすればいい。
逆に「ドコモからは離れたくない」という、ドコモ愛にあふれている人にはdポイントがザクザク貯まる「ドコモポイ活MAX」を契約し、ドコモ沼にどっぷりとハマればいい。
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