「Uber Eatsの存在意義は、単にフードデリバリーにとどまりません。社会課題を解決するプラットフォームとして、新たな働き方の提供や買い物弱者の支援、さらには災害時の物資配達など、多方面で活用できるポテンシャルがあると自負しています」──。こう語るのはUber Eats Japanで代表を務める中川晋太郎氏だ。
同氏は「CNET Japan Live 2025」に登壇し、Uber Eatsがどのようにして従来のフードデリバリーサービスから進化し、幅広い社会的課題に取り組むための基盤となっているのか力説した。
フードデリバリーサービスとして知られている「Uber Eats」だが、食事以外にも日用品や医薬品、家電の配達に対応していることをご存知だろうか。
2015年に米国とカナダで実証実験として始まったUber Eatsは、2016年9月に日本へ上陸。当初は飲食店の料理を届けるサービスとしてスタートした。
「それから3年ほど経った頃に、『飲食店以外の品目も配達できるのでは』という発想に至り、生鮮食品や日用品などへの拡大に踏み切りました」──。代表の中川氏はこう語り、その後は多様な品目を扱うことで利便性を大きく向上させた。
今では、食事以外にも医薬品、家電、さらにはクリーニングなど、さまざまな商品やサービスの配送に対応。「単なるフードデリバリー」というより、配達員のネットワークを活用した即時配送サービスとしての色彩が濃くなっている。この「即時配達」を実現しているのが、店舗と配達員をマッチングする技術だ。日本では少子高齢化や人口減少によって配送の担い手が不足しているが、Uber Eatsの仕組みなら、本業のスキマ時間に配達業務をして、収入を得られるため、社会全体として働き手を確保できる。
また、副業を推奨する流れは近年強まっているが、実際には固定シフトや拘束時間など、ハードルが高いケースが多い。その点、Uber Eatsならアプリを起動して好きなときに稼働し、必要に応じてオフにして休める。 「配達パートナーの9割がスケジュールの柔軟さを重視している」と中川氏は語り「本当にフレキシブルな働き方というものを提供し根付かせている」と自負した。
Uber Eatsは、こうした配達ネットワークを他社に提供する「Uber Direct」に注力している。
たとえば「セブン‐イレブンのアプリで注文を受けた商品を、Uber Eatsの配達パートナーが運ぶ」というように、Uber Eatsの配達ネットワークを「各社の配送サービスの裏側」に組み込むというものだ。
報道発表によれば、ソフトバンクもスマートフォンの配送にUber Directを用いているし、ケンタッキーフライドチキンも自社アプリからの注文をUber Directに流している。
ここには、各社が自前で配達サービスを構築することの困難さがある。自社配達する場合、直接雇用の正社員やアルバイトが必要だが、一方で、天候や予想外の要因によって、仮にAIを使っても需要予測が難しい。であれば、いっそのことUber Eatsの配達網を借りてしまうというわけだ。
「最近Uber Directを展開した例では、クリーニングがあります。クリーニングの場合、お客様がクリーニングを出す。そして終わったら受け取るという二方向の流れが発生します。こうした往復のトランザクションが発生するような商材やサービスは、Uber Directとの親和性が非常に高いと考えております」(中川氏)
店舗側が配送サービスを導入するにあたり、ネックとなるのが「商品を棚から探し出して、袋に詰める」という作業だ。Uber Eatsでは注文がいつ入るか不確定なため、人員の配置が難しいためだ。
そこでUber Eatsでは「ピック・パック・ペイ」という新たな仕組みを導入。これは、配達パートナーがスーパーなどで自ら商品をピックアップし、袋詰して決済まで済ませるというもので、すでに「まいばすけっと」などスーパー各社が導入。店舗の人手不足の改善にもつなげているという。
こうした取り組みによって、Uber Eatsで注文できるスーパーマーケット数が近年では大幅に増加。いわゆる「買い物弱者」の救済にも役立っていると胸を張る。
Uber Eatsは、ロボットデリバリーの実証実験も始めている。一方で中川氏は「配達パートナーが多くいらっしゃる地域では、別にロボットに変える必要はない」とし 「長期的には、買い物弱者が多いと言われる過疎地域で、ロボットデリバリーをどんどん展開することを想定している」と述べた。
また、災害インフラとしてのUber Eatsの活用も模索しているという。例えば、自治体とのパートナーシップのうえで「在宅避難者に配達パートナーを通じて物資を届ける」ことも、理論上は可能なのだという。
このように中川氏は「Uber Eatsは社会課題を解決するプラットフォームにしたい」と強調し、「何でも使っていただけるので、我々も今気づいていない使い方があると思っている。逆に提案していただくのも大歓迎」と結んだ。
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