女性のみなさん、残念だが、SNSのメッセージであなたへの愛を告白しているのはブラッド・ピットでもキアヌ・リーブスでもケビン・コスナーでもない。実在の人物ですらないかもしれない。
バレンタインデーに愛を求めている人にとっては、オンラインで求愛する人、特にそれがセレブであればロマンチックに思えるかもしれないが、セキュリティの専門家は、それはあなたの心ではなくお金を盗むための詐欺の可能性が高いと警告している。しかし、注意すべき点を知っていれば、こうした詐欺から身を守ることができる。
バレンタインデーはオンライン恋愛詐欺のピークシーズンであり、米連邦取引委員会(FTC)によると、2024年の最初の9カ月間における報告済みの損失額は3億8400万ドル(約590億円)に上る。これは入手できる最新のデータだ。
この数字には、このような詐欺に引っかかったことを恥じて被害届を出さない人々の数は含まれていない。また、自分の恋愛関係が本物だと信じ込んでいる人々は、たとえ捜査官から連絡を受けても、それが詐欺だとは信じないだろう。
このような詐欺は長年存在しているが、専門家によると、かつてないほど深刻な脅威となっているという。オンラインでの出会いやアプリを通じた交流は特別なものではなく、一般的になっている。一方で、人工知能(AI)ツールの普及など、テクノロジーの進歩により、詐欺師たちはより攻撃的かつ巧妙になってきている。
詐欺は、ソーシャルメディアを通じた一見無害なメッセージや、一方的に送られてくる電子メールやテキストメッセージから始まることが多い。詐欺師は、紛争中の国に住む女性や、海上の石油掘削施設で働く男性として自己紹介してくる。会いたくても会えない人物を装うわけだ。
サイバーセキュリティ企業McAfeeが米国時間2月12日に発表した報告書によると、ディープフェイクなどのAIツールも、詐欺師が著名人に成り済ますことを容易にしているという。AIを搭載したチャットボットは詐欺をさらに高度化し、標的を人同士のような会話に引き込み、詐欺師がさらに多くの人々と「偽りの恋愛関係」を築けるようにする。
相手が著名人であろうと一般の人であろうと、多くの詐欺師は計略が長期に及ぶことを恐れない。詐欺師は数カ月にわたって被害者をだまし続け、完全に感情移入させてから金銭を要求することが多い。いったん金銭を手に入れれば、その金とともに姿を消す。
そのような詐欺には引っかからないと言うのは簡単だろうが、だまされる人は後を絶たない。McAfeeの調査では、回答者の52%が、オンラインで知り合った相手から金銭をだまし取られるか、金銭や贈り物を求められたことがあると報告している。
さらに21%が、ソーシャルメディア上でセレブや著名人を装った人物から接触されたことがあると回答したという。セレブ詐欺の被害に遭った人のうち、33%が金銭を失い、21%が個人情報を盗まれたと回答した。金銭を失った人の平均額は1985ドル(約30万円)だった。
これは残念な結果に思えるかもしれないが、ほとんどのオンライン詐欺と同様に、少し考える時間を取れば、被害に遭うことは通常避けられる。
ありふれた表現だが、うまい話には裏があるのだ。
一方的に送られてくる電子メールやテキストメッセージ、ソーシャルメディアのメッセージを疑うこと。送り主が著名人でも同じだ。その背後にいる人物が誰なのかを知る方法はない。相手が海外にいると主張したり、直接会うことができない、あるいはビデオ通話もできないと言ったりする場合は、重大な危険信号だと考えよう。
フォローしている著名人からメッセージを受け取ったとしても、偽物の可能性はある。本人の認証済みアカウントから発信されていない場合は、特にそうだ。たとえ発信元が本人のアカウントでも、ハッキングされている可能性がある。
出会い系アプリにとどまろう。出会い系アプリは詐欺師の排除に努めている。なぜなら、詐欺師はアプリの評判に悪影響を及ぼすからだ。そのため、詐欺的な行動を特定するアルゴリズムなどの対策を用意している。「WhatsApp」や「Signal」など外部のメッセージアプリでやり取りしたいと相手が言ってきたら、用心しよう。
特に、相手に直接会ったことがない場合、告白が早すぎると感じたら疑ってかかるべきだ。
また、信頼できる出会い系アプリを必ず使用するようにしてほしい。McAfeeの研究者は最近、詐欺的な出会い系アプリをダウンロードさせようとする1万1000件近くの試みを特定しており、そのうち84%が「Tinder」と「OKCupid」のアプリを装ったものだった。さらに、同社はわずか7週間で、恋愛詐欺に関連する32万1500件以上の詐欺的なURLをブロックしたと発表した。
リアルで面識の無い人にお金を渡してはいけない。実際に会ったことのない相手から、あなたに会うために渡航する費用、医療費、あるいは突然の悲劇に対処するための費用を要求された場合、それは詐欺だと考えるべきだ。
個人情報を保護する。個人情報を決して送信してはならない。これは仮想通貨ウォレットの鍵についても同様だ。裸の写真や露骨な写真を要求された場合は、断るべきだ。FTCは、金銭を支払わなければそのような写真を相手の連絡先に送信すると脅迫する「セクストーション」(性的脅迫)の事例が増加していると述べている。
下調べをしよう。出会い系のアプリやサイトを利用する人は、おそらくソーシャルメディアも利用しているはずだ。確認してみよう。ついでに、デートの相手の写真で画像検索をしてみよう。もし、他のサイトで別名とともに表示されたら、その相手とは距離を置こう。
大きな見返りには用心しよう。たとえ巨額の見返りを約束されたとしても、素晴らしい投資機会があると言うオンライン上の友人には、お金や仮想通貨を送らないこと。
優れたサイバーセキュリティ策は身を守るのに役立つ。他の場合と同様、良いパスワードを設定し、2要素認証を使用し、ウイルス対策ソフトウェアやOS、アプリを最新の状態に保つ。こうした基本的な対策は、アクセスすべきでないものをクリックまたはダウンロードしてしまった場合に、身を守るのに大いに役立つ。
犯罪が発生した場合は報告する。詐欺の被害に遭った場合は、しかるべき機関に報告する。出会い系のサイトやアプリを通じて詐欺師と知り合った場合は、その運営元にも報告する。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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