米航空宇宙局(NASA)は、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士が「Twitch」プラットフォーム上で視聴者と交流する、初の試みとなるライブ配信を行った。配信はNASAの公式Twitchチャンネルで行われ、現在宇宙にいる宇宙飛行士と地球に戻った宇宙飛行士の2人が登場した。
宇宙にいるのはNASAの宇宙飛行士Don Pettit氏で、2024年9月に第72次長期滞在の一環としてISSの乗組員に加わった。ソーシャルメディアに頻繁に投稿する素晴らしい宇宙の写真で知られている。もう1人の宇宙飛行士は、10月に「Crew-8」ミッションの宇宙船で帰還したNASAの宇宙飛行士Matt Dominick氏だ。同氏もまた、ISSから素晴らしい写真を撮影した。
このストリーミング配信は、NASAのTwitchチャンネルで全編視聴できる。
Twitchのチャットは時に荒れることもあるが、NASAは十分な数のモデレーターを用意しており、誰かが騒ぎを起こすことはなかった。この配信の同時視聴者数は、最大で1万6000人を超えた。
NASAにとって、Twitchを利用した地球の大気圏外からの配信は初めてではない。過去にも、Twitchや独自のプラットフォーム「NASA+」で宇宙遊泳の様子を配信してきた。
しかし、今回の配信では、チャットに参加した人々が宇宙飛行士と交流し、質問をしたりするなど、宇宙にいる人々と交流する機会が初めて設けられた。これまでの配信は、ほとんどが視聴のみだった。
Dominick氏は、ISSが地球の周りを高速で移動すること、そしてそれが写真撮影の時間に影響することについて語った。あるとき、同氏はハリケーン「ミルトン」の写真を宇宙から撮影する作業を任されたが、ISSが「信じられないほど高速」で移動するため、撮影時間はわずか30秒しかなかったという。
Pettit氏は配信開始から約10分後に参加。2人の宇宙飛行士はすぐに、宇宙からの写真撮影の複雑さと難しさについて話し始めた。2人は、活動中の雷雨の上空に現れる光の点滅である「レッドスプライト」の写真を撮影するために、特に雷雨の写真を数千枚撮影したことについて語った。2人とも過去にレッドスプライトの撮影に成功しただけでなく、雷雨から上に向かって放たれる稲妻の一種である「ブルージェット」の撮影にも成功している。
Pettit氏は、「Nikon Z9」にさまざまなレンズを頑丈なマウントで取り付けた撮影機材も披露した。
宇宙飛行士たちはファンや学生からの質問に答え、宇宙で過ごした後に地球に帰還した際の様子についても語った。
Pettit氏は、「胃の感覚」を取り戻すのに丸1日ほどかかると述べた。これは「胃の中身を吐き出す」ことを上品に言い換えたものだ。Dominick氏もこれに同意した。
Pettit氏がヨーヨーを使った物理の実演を試みたとき、ISSが衛星との通信を失い、同氏の短いTwitch配信デビューは終わった。
Pettit氏は、NASAの「Capillary Cup」の設計者だ。このカップにより、宇宙飛行士はISSで熱いコーヒーをこぼさずに飲むことができる(そして、その心地よい香りを堪能できる)。宇宙で窮屈な袋とストローを使うことなく飲み物を飲みたいという同氏の思いが、このアイデアを生み出した。
これはアサインされた任務ではなく、Pettit氏が思いつきで発明したものだとDominick氏は語った。
Dominick氏によると、Pettit氏は「今日のコーヒーは明日のコーヒー」とよく言っているという。なぜなら、尿などの廃棄物を含むほとんどの水は、繰り返しリサイクルされ再利用されているからだ。廃棄された水の90%以上が再利用のためにリサイクルされている。
Dominick氏は、宇宙飛行士のSuni Williams氏とButch Wilmore氏について質問された。Boeingの「Starliner」が2人を帰還させることができないため、両氏は6月からISSに滞在している。
Dominick氏は、ISSには十分な物資があり、水や酸素といったリソースの配分はまったく問題ないと述べた。
しかし、もし同様の問題が月や火星へのミッションで発生した場合、はるかに危険で、リソースの制限も厳しくなるだろう。
Dominick氏は、地上の科学者が実験を考案し、宇宙飛行士はそれを行うための訓練を受けていると語った。
「多くの場合、何をしているのか全く分からない」という。
同氏はストレスとメンタルヘルスについて話し、会話を締めくくった。ISSの宇宙飛行士はメンタルヘルスを維持するために、さまざまな活動に参加することが推奨されている。
同氏にとって写真撮影は趣味であり、オフの時間を充実させ、ストレスを軽減するのに役立った。
配信に登場したNASAのLeah Cheshier氏は、AurorasaurusとSpot the Stationという2つのウェブサイトを紹介し、配信を締めくくった。それぞれオーロラの観賞と、ISSが上空を通過する際にそれを発見するのに役立つものだ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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