Appleの「iPad mini」は何年も前から存在しており、ファンもいる。小型タブレットの利点は、価格が安いことや持ち運びやすいことなどだ。上着の大きめのポケットや小さなバッグにも入るし、ダッシュボードに取り付けたり、パイロットの業務に使ったり、店舗でPOS画面として使用したりできる。筆者の子供たちは小型のiPadが好きで、筆者も小型のテクノロジー製品は全般的に好きだ。
しかし、2024年のiPad miniは、小規模なアップグレードがなされたにもかかわらず、筆者にはそれほど魅力的に映らない。2021年のアップデート時点からあまり変わっておらず、大きな追加機能は、「Apple Pencil Pro」への対応と、「Apple Intelligence」だけだ。
本稿執筆時点では、こうした新機能のうちの1つしかiPad miniで試せなかった。Apple Pencil ProをiPad miniに数日間装着して、ゲームや動画、メッセージ、読書などで思いつく限り使ってみた。残念ながら、iPad miniでApple Intelligenceをきちんと試すことはまだできていない。本記事を書き上げる数時間前まで、筆者がテストしたレビュー機ではApple Intelligenceを利用できなかったからだ。
新型のiPad miniは購入する価値があるのだろうか。iPad mini好きな人であれば、その答えはもう分かっているはずだ。本記事では、そうでない人が知っておくべきことを解説する。
Appleのタッチペンのラインアップは本当に分かりにくく、iPadのモデルによって、対応するタッチペンも異なる。少なくとも、最も新しく、最も高性能なApple Pencil ProはiPad miniで機能するため、iPad miniはApple Pencil Proを使用できる最も低価格のデバイスということになる。
Apple Pencil Proには、サポート対象のアプリでサブメニューを表示するスクイーズ機能、ツールを「事前に選択」したり、機能を実際に適用する前にプレビューしたりするのに使用できるホバー機能、選択したオプションを教えてくれる触覚フィードバック機能、デジタルブラシを回転させることができるバレルロール機能がある。さまざまな可能性を秘めているが、こうした機能をフル活用できる「iPadOS」のアプリはまだそこまでない。それどころか、iPadOS自体もまだこうした機能を有効に活用できていない。
iPad miniがApple Pencil Proをサポートしているのはうれしい。129ドル(日本では税込み2万1800円)という価格も、旧モデルの「Apple Pencil(第2世代)」の価格と変わらない。最新のiPad miniでは第2世代のApple Pencilは使えないので、Apple Pencil Proが必要だ。あるいは、代わりに無印の「Apple Pencil(USB-C)」(79ドル、同1万3800円)を使うことも可能だが、Proと違って、圧力を感知するセンサーが非搭載なうえ、タブレット本体の側面にマグネットで取り付けて充電する機能や、ホバー、スクイーズ、バレルロールなどの機能も利用できない。
今、新しいApple製品を購入しようとしている人は、今後発売される製品に搭載が予定されている大注目の変革ツールとしてAppleが宣伝しているApple Intelligenceを使用できる製品を選ぶとよいだろう。Apple Intelligence(10月下旬に初期ベータ版としてリリース予定)は、現時点ではほとんどの場合、生成AIをベースとした要約作成ツールや作文支援ツールにすぎず、筆者の意見としては、これを目当てにアップグレードする価値はほとんどない。また、今回のiPad miniのレビューでは、Apple Intelligenceを試すことさえできなかった。レビューで使用したデバイスでは、本記事が完成する数時間前までApple Intelligenceのベータ版を利用できなかったからだ。
Apple Intelligenceは今後、「iOS」とiPadOS、「macOS」の機能の一部として、ますます重要になっていくはずだ。古いAppleデバイスでは、重要な追加機能はおそらく提供されないだろう。
新しいiPad miniが少なくともApple Intelligenceの機能を利用できるのは素晴らしいことだが、今後、どれだけの機能が制限されるのかは気になるところだ。Appleによると、新型のiPad miniはApple Intelligenceの機能をどれも適切に処理できるというが、iPad miniのA17 Proチップは、2023年に発売された「iPhone 15 Pro」に搭載されていたチップであり、「M1」チップよりも性能は劣る(後で詳しく説明する)。
しかし、少なくとも現時点においては、新型のiPad miniではAIが強化されている。これは、2021年モデルのiPad miniではできないことだ。ただし、Apple Intelligenceに対する筆者の第一印象は賛否が入り混じったものとなっている。Apple Intelligenceは主に、特定のアプリでのメッセージの要約と文字起こし、文章の改善点の提案、「写真」などの一部アプリでの強化された検索機能、いくつかの追加ツール(写真内の不要なものを消去する「クリーンアップ」など)で構成されている。「Siri」も強化され、作動時に光を放つようになった。また、Siriへのリクエストをタイプ入力することも可能になった。これは便利だが、筆者が実施した初期のテストでは、変な答えが返ってくることもあった。
新型iPad miniのUSB-Cポートは、より高速なデータスループット(10Gb/s)に対応している。用途によっては、この速度が必要になるかもしれない。また、Wi-Fi 6Eにも対応している。
確かに、8.3インチのiPad miniは楽しく使えるサイズだ。前モデルと同じデザインだが、小さく感じられ、収納もしやすい。筆者は、「Apple Arcade」に最近登場した素晴らしいインディーズゲームの「Balatro」に夢中になっているが、iPad miniはこのゲームをプレイするのに一番適した画面サイズかもしれない(「Nintendo Switch」や「iPhone」よりも適しており、「Steam Deck」よりも大型である)。
iPad miniでニューヨーク・メッツのプレーオフの試合も観戦してみたが、これも楽しかった。ポータブルテレビにちょうどいい大きさで、アスペクト比も横幅がちゃんとあるので縦横の比率に違和感を覚えたりすることもない。読書にもぴったりのサイズだ。
ただし、分割画面モードで2つのアプリを表示した状態でマルチタスクを行う場合、ディスプレイが大きいiPadほど有効に画面を活用することはできない。また、新型のiPad miniでは、サイズの異なる複数のウィンドウにアプリを表示させる「ステージマネージャ」も利用できない。
エントリーレベルの499ドル(日本では税込み7万8800円)という価格は、Apple製品としてはそれほど高くない。ベースモデルでもストレージは128GBからとなっており、ストリーミングや読書、簡単なゲームといった基本的なニーズには十分すぎるほどだ。今回、新たに512GBモデル(799ドル、同13万800円)が追加されており、Apple Pencil Pro(129ドル、同2万1800円)やケース(Appleの純正品は59ドル、同9800円)、オプションの5Gモバイルワイヤレスサポート(150ドル、同2万6000円)が必要な場合は、あっという間に出費がかさむ。なお、このiPad miniは、無印の第10世代iPad(価格は349ドル《同5万8800円》から)よりも高価である。
新型のiPad miniでは、性能が劣る2023年モデルのiPhone向けプロセッサーが足かせとなっている。「Geekbench 6」のテストで、本機種のシングルコア処理速度はM1チップや「M2」チップを搭載したほかのiPadと同等のようだったが、マルチコアモードでは、M1チップを搭載した前世代の「iPad Air」よりも低いスコアだった。
A17 Proは、Apple Intelligenceのサポート対象になっているが、Mシリーズプロセッサーを必要とする一部のOS機能(特にステージマネージャ)は実行できない。Mシリーズのプロセッサーを搭載するiPadは、接続先のモニターで複数のアプリを追加で実行できるが、iPad miniでは、画面ミラーリングしか利用できない。ただし、4K/60fpsの動画をモニターで再生することは可能だ。
新型のiPad miniがある意味で「Mac mini」のようなデバイス、つまり、ほかのモニターに接続して、多くのことを実行できる小型デバイスになることを期待していた人にとって、これは残念な点だ。
iPad mini以外のiPadシリーズでは、前面カメラが長い方のベゼルに配置されたため、キーボードやスタンド付きケースと組み合わせたときに、ビデオチャットで顔が中心からずれて見える問題が軽減された。ところが新型のiPad miniでは、相変わらずiPhoneと同じように短い方のベゼルにカメラが配置されている。本体を手に持って使用するのなら、この位置は理にかなっているが、家族や子供向けに本体を立てて使用する場合、チャットのときに顔が中心からずれてしまうことになる。
カメラの位置は変わるだろうと筆者は思っていたが、外れてしまった。
iPad miniは2021年にデザインが刷新され、モダンな感じになった。また、本体側面の「Touch ID」搭載電源ボタンなどが採用され、ほかのiPadに似た外観になった。それでも、そこから3年が経過し、筆者は最新モデルで少なくとも2つか3つくらいは新しいアイデアが登場することを期待していた。ところが新型のiPad miniの本体サイズと厚さは前モデルと同じで、ディスプレイも相変わらず120Hzのリフレッシュレートには対応していないし、有機ELでもない。これでも悪くはないが、ハイエンドの「iPhone Pro」モデルや最新の「iPad Pro」と比べると、見劣りしてしまう。
もう1つ言うと、Apple Pencilももう少し小さくなってくれたらと思う。Apple Pencil ProをiPad miniの本体側面にドッキングできるのは便利だが、小型タブレットに取り付けると、不自然なほど大きく見える。iPad miniのデザイン(またはケース)に小型のタッチペンを差し込む、より良い方法もまだ開発されていない。ケースについても同じことが言える。iPad mini向けのApple製キーボードケースはまだ提供されていないが、サードパーティー製のキーボードケースはある。とにかく、AppleがiPad miniのコンセプトを見直そうとしたようには全く感じられない。
一方、miniではない無印のiPadは、現行モデルの発売から2年が経過したにもかかわらず、2024年のアップグレードはなかった。第11世代iPadには、新型iPad miniと全く同じ、Apple Pencil ProとApple Intelligenceのサポートが追加されるだろうと筆者はみており、またそうなってほしいと思っている。
3年ぶりに登場した新「iPad mini」、Apple Intelligenceに対応(価格をAmazonでチェック)
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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