「原子力発電」(原発)への関心が高まっている。Googleは米Kairos Powerの小型原子炉から電力を調達すると発表。Amazonもデータセンターの電力供給を目的とした原子力発電プロジェクトの契約を3件締結した。加えてマイクロソフトもかつての事故で知られるスリーマイル島の原発からデータセンターに電力を供給する。
この背景には、すでに知られている通り「ChatGPT」などの生成AIの台頭がある。大規模言語モデルの動作やデータセットの学習には莫大な電力が必要なためだ。
国際エネルギー機関(IEA)のレポートによれば、データセンターの電力消費量は2022年に世界全体で約460TWhだった。しかし、生成AIの普及で2026年には中位推計でも2倍弱の800TWhに達するという。英National Gridの予測では、データセンターの電力消費量は2050年までに最大10倍に増加する。
日本も例外ではない。国内の電力需要は2007〜2010年頃にピークを迎え、その後は人口減少や省エネ技術の進展で右肩下がりとなってきた。しかし、データセンターの建設が活発化したことで、再び増加に転じることが予想されている。そのため、電力供給の拡大は急務というわけだ。
ここで重要なのが、大電力の供給と同時に「脱炭素」も求められる点だ。米国のビックテックはデータセンターにおいても、再生可能エネルギーやカーボンフリーな電力の利用を前提にしている。その点で、大電力を供給でき、さらに二酸化炭素の排出も抑えられる原発は現実的な選択肢というわけだ。
あわせて原発の技術革新も進んだ。米Kairos Powerなどが手掛ける小型モジュール型原子炉(SMR)は、原子炉を工場で大量生産できるため建設コストを抑えられる。広い敷地が不要で立地の自由度も高く、データセンターに直結させれば送電ロスも無くせる。加えて、小型で冷やしやすく安全性も高い。Googleなどが注目しているのはこのためだ。
昨今は「カーボンニュートラルでなければ取引に応じてもらえない」という事例も増加している。日本の電源構成は約70%を火力発電に依存しているが、脱炭素電源が不足すれば日本企業がグローバルな取引から弾き出されるか、炭素排出を相殺するカーボンクレジットへの余分な支出を余儀なくされる。資源エネルギー庁の資料でも「脱炭素電源の制約に起因するデジタル敗戦は、日本の産業基盤を根こそぎ毀損する危険性をはらむ」と指摘する。その点でも原発は注目されているのだ。
かつて「脱原発」論者として知られた前デジタル大臣の河野太郎氏も、生成AIの急速な普及と電力需要の変化を受けて、方針を転換しつつある。自由民主党総裁選への出馬会見では、原発の建て替え(リプレイス)も選択肢に含まれると述べ、次のような見解を示した。
「電力の供給が追いつかないから、データセンターを日本からシンガポールへ移そうとか、AIの投資を日本から他所の国にもっていく動きが起きては経済に影響が出る、今はまず電力の供給を最大化するために、(原発や核融合を含めた)あらゆる技術に張っておく必要がある」(河野氏)
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