今、市場で特に話題を呼んでいる新しいスマートリングの1つが、「Ultrahuman Ring AIR」だ。健康に特に気を使っている人にとっては、Ouraより一歩先を行く機能やデータ収集の方法を提供する。筆者はこの1カ月、Ultrahuman Ring AIRと「Ouraリング」の「Horizon」モデルの両方を24時間ずっと指にはめ、朝のコーヒーから深夜のカクテルまで、いろいろなことを記録しながら試用した。あえて言うなら、Ultrahuman Ring AIRは、健康とフィットネスを意識している人が期待できる製品といえるだろう。
Ouraリングは、スマートリングを買ってみようと思っているどんな人にも訴求しそうだが、Ultrahumanの方はもっとニッチでありながら、性能はおそらく上だ。Ouraリングが、どこにでもいそうな気取らないタイプだとすれば、Ultrahuman Ring AIRはシリコンバレーに住み、健康食品を常用しなから、ビットコインをマイニングしているようなタイプというところだろうか。とはいえ、本格的なフィットネスファンが十分に活用できる一方、ライトなフィットネスを楽しむ層を含め誰にとっても、身体を理想の状態に保つのに役立ちそうだ。
Ouraリングが月額5.99ドル(日本では999円)のサブスクリプションを必要とするのに対して、Ultrahuman Ring AIRはサブスクリプション不要。色はMatte Grey(マットグレー)、Aster Black(マットブラック)、Space Silver(シルバー)、Bionic Gold(ゴールド)、Raw Titanium(ローチタン)がある。筆者が試用してきたあらゆるスマートリングの中でも飛び抜けて薄く、素朴で、目立たない。そのうえ、マットグレーの表面は1カ月使った後でも傷つかず、変色することもなかった。光沢のあるメタル仕上げが多い他社のスマートリングでは、こうはいかない。
起床してから眠りに落ちる瞬間まで、Ultrahuman Ring AIRはエネルギーと体内時計の有効な使い方について、通知を送ってくる。そうやって、自分の身体についての科学的な知見が送られ続けていると、どうしても自分の健康をハッキングしているかのよう気分になる。あるいは、神のような全能感かもしれない。
起床から1時間以内に、「残留アデノシンレベル」について通知してくる。何のことか分からず、調べる必要もあった。アデノシンとは、体内で自然に発生する物質で、人の覚醒状態に関係している。通知の情報によると、カフェインを含む覚醒効果のある飲み物は、目が覚めてから約2時間以上後に摂取した方がいいらしい。アデノシンが一掃され、カフェインが体の活力に与える効果が高くなるからだ。また、早寝早起きを目指すなら、その時間に日光を浴びるか、運動するとよいとも教えてくれた。
それからも1日中、同じような通知が届く。覚醒効果のある飲み物を摂取してもいい時間帯、つまりカフェインを摂っても睡眠を妨げられない時間帯がもうすぐ終わることも知らされるが、それだけではない。飲み物ごとのカフェイン含有量、それが体内にとどまる時間、その時間で適切な摂取量を超えていないかどうかといったことまで分かるのだ。
1日の時間が過ぎていく間に、脚を伸ばすよう指示したり、十分な睡眠をとるために望ましい就寝時間を教えてくれたりする。いずれも、自分の起床時刻、睡眠時間、回復などのデータに基づいて計算されている。
Ultrahuman Ring AIRは、心拍数、皮膚温度、心拍変動(HRV)、安静時心拍数などを測定して、睡眠、回復、運動用のデータを収集する。VO2Max(最大酸素摂取量)、つまり運動時に体が消費する酸素の量も測定される。
こうしたデータのすべてがアプリを通じて分かりやすい形で表示され、3大データ、つまり睡眠、運動、回復についてはスコア(と説明)が示される。例えば、睡眠のスコアが95だったときは、いつもより速やかに入眠し、休息時間のほとんどで眠り続けていたと記されていた。高かった睡眠のスコアと並んで表示される回復のスコアも90で、これはかなり良好らしく、「脳のフィットネスと身体のフィットネスのどちらも、目標をもう少し高くしてみてもいい」と言われた。一方、睡眠のスコアが49で回復スコアが64だったときは、長めのウォーキングをして、昼間のうちに「睡眠はとらない、深い休息時間」を設けてみようと指示された。
HRVやVO2Max、安静時心拍数など他のヘルスデータも追跡されており、日々のデータが集計されて1日、1週間、1カ月間の傾向が、緑と赤のインジケーターを用いたグラフで示される。どのデータにも、自身の総合的な健康に対して各インジケーターが表す意味の説明が付いているので、データの複雑さを自分で読み解く必要はない。
Ultrahuman Ring AIRのもう1つのヘルス機能が食事の記録で、これには「ChatGPT」を活用した人工知能(AI)ツールの情報が利用される。筆者も、1日を通じて食べた食品を記録してみたところ、「Food Optimization」AI機能によって「Cyborgによる洞察」と称する内容が示された。特定の食品を食べたときに血糖値スパイクを避ける方法だった。ポテトチップス1袋を記録したときには、チーズやその他のタンパク質、例えば固ゆで卵なども一緒に食べた方がいいと言われた。その方が、ブドウ糖の吸収が遅くなるのだという。また、血糖反応を抑えるには、ポテトチップスを食べる前後に水を飲み、食べた後は早歩きでのウォーキングをした方がいいという指示もあった。筆者はめったにそのアドバイスに従わなかったが、フィットネスには有用な機能であり、栄養と健康のデータを有効活用したい人にも適している。
もちろん、ワークアウトも記録できる。筆者は、ハーフマラソンの練習のときによく使った。ただし、記録していないときに運動を始めたことを自動的に検出する機能はない。今後のアップデートで改良されることを期待したい。ランニングした場所のマップ、平均心拍数、最高心拍数、消費カロリー、平均速度などが表示されるのは気に入った。加えて、ワークアウトゾーンも表示される。長時間のランニングの記録をとるときには欠かせない機能である。
Ultrahuman Ring AIRがエクササイズ好きにとって理想的といえる理由となるもう1つの機能が、「Discover」タブだ。ピラティスからウェイトトレーニング、HIIT(高強度インターバルトレーニング)、ヨガなどの動画が用意されている。瞑想や、就寝時のサウンドスケープに使えるポッドキャストも利用できる。
バッテリーの充電が必要になるまで、およそ5日間は着用していられる。バッテリーの持続時間についてOuraリングと比較するために、火曜日の午後に両方を100%までフル充電し、通常の使い方と活動をしてどのくらい持つかを確かめてみた。日曜午前の時点で、バッテリー残量はOuraリングが7%、Ultrahuman Ring AIRが6%だった。Ultrahuman Ring AIRは充電後に触ると熱くなっていたので、その点には注意が必要だ。
Ultrahuman Ring AIRの次のアップデートでは、アプリのユーザーインターフェースの改善を望みたい。Ouraのアプリを参考にしてもいいかもしれない。ホームタブの上部に睡眠、レディネス、レジリエンス、アクティビティーのデータが表示され、下部にその集計が示される。Ultrahumanのアプリの下部のタブには、ホーム、メタボリズム、ゾーン、「Discover」、最小限のプロフィールのセクションがある。ログ機能ももう少しアクセスしやすくなることが望ましい。現状では、食品、エクササイズトラッキング、ウェイトなどを見るのにアプリを延々と下までスクロールしなければならないからだ。
Ultrahuman Ring AIRをお勧めできるのはどんなユーザーか。フィットネスや健康指標に関心がある人なら誰でも、フルに活用できるのではないだろうか。睡眠時間と、睡眠および回復のスコアはOuraの製品と似通っていた点が多いことを踏まえると、データやバッテリー持続時間が互角でサブスクリプション不要のOura類似製品、と呼んでも差し支えはなさそうだ。
総合的にいって、筆者はUltrahuman Ring AIRに好印象を抱いた。このような新製品が、フィットネススマートリング市場に登場して他社製品と競合する力を持つのは望ましいことだ。本格的なフィットネスファンに対してニッチな魅力があるだけでなく、そのデータ表示、健康指標、AIによるアドバイス機能などのおかげで、一般的なユーザーの使い方にも応えられるだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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