NTT西とマクニカ、西日本での自動運転実装を支援--仏Navya Mobilityと連携

 西日本電信電話(以下、NTT西日本)は8月29日、まちづくりにおける自動運転の社会実装をめざすイベント「次世代モビリティ DAY 2024」の開催にあわせて、8月8日にマクニカと発表した、仏の自動運転会社Navya Mobility SAS(以下、Navya)への共同出資について説明会を行った。出資の経緯や自動運転事業の協業ロードマップなどを紹介し、会場の京橋「QUINTBRIDGE」構内では、Navyaが開発する自動運転EVバスの体験試乗会も行われた。

 NTT西日本グループとマクニカは、自治体での自動運転EVバス実証を支援すべく2023年8月から事業提携を開始している。Navyaが本拠地とするフランスで開発した車両や運転システムを使用し、地域交通のスマートモビリティ化に向けた実証実験に関するトータルサポートや、関連サービスをワンストップで提供してきた。自治体の自動運転事業を全額補助する国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)」で、10事業以上が採択されている。

 さらなる事業強化を目指し、マクニカの子会社であるNavyaに対し、NTT西日本が新たな出資契約を8月8日に締結し、共同経営を行うこととなった。事業内容は、都市部や郊外向けの15人乗り自動運転EVバス「ARMA」と「EVO」の販売、次世代型自動運転バス開発などで、両社の出資比率はNTT西日本が29.15%、マクニカが70.85%となっている。なお、両社による出資ならびに社名変更は、フランス当局の許可を経て正式完了となる。

出資の経緯と関係の変化 出資の経緯と関係の変化
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 発表会では、NTTビジネスソリューションズ バリューデザイン部 自動運転担当部長の宮崎一氏が、協業の経緯や出資目的などについて説明した。主な役割としては、自動運転導入の統括事業会社として自治体と伴走しなが各ステークホルダーをリードし、国交省や警察、交通事業者とのハブ役を務める。Navyaへの資金提供で関連技術の研究開発を加速し、デリバリーから運用までバリューチェーンを上流から下流までトータルに提供できる能力を強化する。


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それぞれの事業での役割が説明された それぞれの事業での役割が説明された
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 宮崎氏は「自治体によってそれぞれ異なるニーズに合わせた自動運転事業を実現するべく、次世代モビリティを交通基盤として確立し、通信インフラ事業で培ってきた経験や技術を生かした総合的な支援を、単年の実証実験で終わらせず複数年にわたり長期的に行っていきたい」と述べた。

 続いてマクニカスマートシティ&モビリティ事業部の可知剛氏から、Navyaの概要や自動運転の支援実績などが紹介された。Navyaは、自動運転ソフトウェア開発、車両実装と運用を専門とする企業で、世界26カ国で200台以上の自動運転EVバスを販売する実績を持つ。マクニカは2023年5月に仏GAUSSIN SAと合弁会社GAUSSIN MACNICA MOBILITY SASを設立し、旧Navyaの資産を取得。さらに2024年6月に完全子会社化している。

マクニカス マートシティ&モビリティ事業部の可知剛氏 マクニカス マートシティ&モビリティ事業部の可知剛氏
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マクニカは6月にNavyaを完全子会社化している マクニカは6月にNavyaを完全子会社化している
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 8月現在でマクニカは、Navyaが開発した車両を使用した実証運行を全国49地域で行っており、6地域で定常運行している。そのうちの11地域がNTT西日本との連携によるもので、導入地図を見ても西日本エリアの件数が多いことがわかる。東日本エリアの一部はNTT東日本と連携しており、今後NTTグループ全体で事業連携が進む可能性も伺わせた。

 説明会では自動運転バス事業の実現性やマネタイズについても質問が寄せられた。公共交通の維持に悩む自治体では、たとえ自動運転バスになったとしても運賃収入による維持はハードルが高く、多くの自治体が実証実験どまりで計画が進まない要因となっている。可知氏は「だからこそ無人で一人が複数台をリモートで運用できるレベル4の実現が不可欠だ」とし、マクニカではオリジナルの遠隔モビリティ管理システム「everfleet」を開発していることを紹介した。

 また可知氏は、交通手段以外での活用も可能性が広がっているとし、ヘルスケアや医療支援での活用や、移動図書館、エンタメ提供、観光地やイベント会場への送迎など、さまざまな対応ができるシステムを開発し、実証実験で検証データも蓄積されていることを紹介した。その多くは安定で信頼性のある通信環境が不可欠でもあり、その他にもさまざまなノウハウが必要となることから「実現に向けてNTT西日本をはじめ、多くのパートナーと連携をしていきたい」とコメントした。

 試乗会はNavyaが開発する乗員数やサイズが異なる複数タイプの車両のうち、11人乗りの自動運転EVバスが使用して行われた。車内にはハンドルや運転席はなく、無人で会場内を最高時速10kmの安定した速度で走ることができ、歩行者を検知して停まることなどが体験できた。また、車内のディスプレイに生成AIによる対話型のガイドが表示され、アバターに質問すると回答するデモも行われた。

 最後にNTT西日本代表取締役社長の北村亮太氏とマクニカ代表取締役社長の原一将氏が、締結を記念して車内にサインするセレモニーも実施され、本格的なレベル4の実現を目指して協力関係を強めていくことをアピールした。

NTT西日本代表取締役社長の北村亮太氏(左)とマクニカ代表取締役社長の原一将氏(右)
NTT西日本代表取締役社長の北村亮太氏(左)とマクニカ代表取締役社長の原一将氏(右)

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