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利用率は1年で1割から5割に--「課題で使った」「友達がコピペ」大学生に浸透したChatGPT

 2022年11月の「ChatGPT」登場以来、生成AIは常に話題となり、徐々に一般人の間にも浸透してきている。若者における利用の実態と変化について見ていきたい。

  1. 1年で利用率は1割から5割に
  2. 「課題で使った」「友達が課題でコピペ」
  3. 高校生でも利用率は5割

1年で利用率は1割から5割に

 筆者が講師を務める大学の受講生を対象に、2年連続でChatGPTについての調査を行っている。男女比はほぼ同数で、1年生が6割近くを占め、2年生が3割程度、残りが3、4年となっている。有効回答数は、2023年4月は163人、2024年4月は272人となっている。

 ChatGPTの認知度、利用の有無について聞いたところ、2023年には「知っていたし使っていた」は10.4%、「知っていたが使っていない」は44.8%と、認知度は5割強、利用率は約1割だった。「名前は聞いたことがあるがよくわからない」(16.0%)、「知らなかった」(28.8%)など、半数弱が「わからない」という回答だった。

2023年4月 2023年4月
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 一方2024年には、「知っていたしプライベートで使っている」(26.3%)、「知っていたし課題・就活などで使ったことがある」(20.6%)、「他の生成AIも使っている」(3.7%)など、利用率だけで約5割に上るように。「名前は聞いたことがあるがよくわからない」(4.4%)、「知らなかった」(1.8%)など、知らない人は5%程度に留まっており、認知度は9割以上となった。

2024年4月 2024年4月
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 認知度は5割から9割以上、利用率も1割から5割と、大学生の間で急速に浸透したことがよく分かる。

「課題で使った」「友達が課題でコピペ」

 2024年、ChatGPTについての意見を聞いたところ、数名が「課題で使っている」「友達が課題で使っていた」「友達が課題でChatGPTの回答を丸写ししていた」などと回答。ChatGPTを使えば楽ができると気づいた大学生は多く、こっそり回答を丸写ししている例も少なくないようなのだ。

 大学では当然、「ChatGPTなどの出力したものをそのまま或いは多少表現を変えた程度でレポートや学位論文を提出しないこと」「利用した場合は明示し、自分の考えとの区別に留意すること」「ChatGPTの利用は教員からの指示に従うこと」なとど指導されている。しかし、これを守る学生ばかりではないというわけだ。

 実際、「課題で使っている。ChatGPTを使うだけでできる課題もあり、そのようなものはChatGPTを使うほうが効率的」と書いている学生もいたほどだ。

 就活のエントリーシートでの利用も人気が高く、「効率的に就活ができる」と歓迎する声が多かった。タイパ、コスパを重視する世代に、ChatGPTは非常にハマっているのだ。

 なお、ChatGPTが話題になりたての頃、過去に自分が出していた課題を入力したところ、それっぽい回答が出てきてしまった。ChatGPTだけでできるレポートなどで単位を出すわけにはいかなくなり、それ以来、プレゼンをさせるなどで工夫している。

 今期は、テーマを決めてChatGPTに回答させ、その回答に対する自分の意見を書くという課題を出した。ChatGPTに懐疑的で利用しない学生には利用させ、既に使っている学生にはChatGPTだけではできない課題を出して対処したのだ。

高校生でも利用率は5割

 ChatGPTは、利用規約により13歳以上対象とされている。つまり小学生までは利用できないものの、中学生以上は指導の元で利用が可能となるというわけだ。

 中3の息子は、「ChatGPTは間違っているらしいし使ったらまずい。絶対にバレると思うから使わない」と言っていた。学校で先生から指導があり、中学生らしく素直に従っているようだ。

 高校生新聞調査のChatGPTの利用状況に関するアンケート(2024年7月)から、高校生の利用実態についても見てみよう。ChatGPTを使ったことがあるか質問したところ、「よく使う」(8%)、「ときどき使う」(23%)、「使ったことはある」(22%)と、やはり大学生同様、5割以上が利用したことがあるという結果に。

 利用者を対象にどのような用途で利用しているか聞いたところ、「調べもの」「英語の和訳や英訳、英作文の添削」という回答が多く、それぞれ20%を占めた。「レポート作成の補助」「イベントなどに向けたアイデア出し」の他、「悩み相談」「現代文の要約」「数学の問題演習」「小論文の添削」などの回答もあった。高校生らしく、学習利用が多くを占める結果となっている。

 ChatGPTの利用についてルールがある高校もあるようだ。全体に、自分の考えを求める課題で利用を禁止するところが多い。課題で利用した場合は、その課題や成績も0点になるなど、厳しく対処する学校もあるという。

 作文や自分の考えをまとめる課題で利用すると、その時こそ楽ができるが、能力が身につかず、学習に繋がらない。受験などの本番では利用できないことを考えると、少なくともそのまま利用するべきではないだろう。ただしもはや完全に拒む時代ではなく、使いこなす力を求められている。学生は、適切な利用を学ぶべき時にきているといえるだろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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