ゼンリンは6月3日、各社の荷物の配送状況を一括管理する「共同配送システム」を、ヤマト運輸の協力により構築したと発表した。本システムは同日から埼玉県秩父市において、ヤマト運輸、西濃運輸、福山通運の3社の荷物を集約し、地域の事業者による配送サービス「おむす便」にて、実運用を開始する。
共同配送システムは、地域の配送を担う事業者が専用の端末を操作して、荷物に貼付された配達伝票のバーコードをスキャンし、各種情報を登録する。情報はクラウドを通して共有され、物流事業者各社はブラウザ上で、荷物の状況を確認できる。導入にあたって既存の基幹システムの改修は不要で、共同配送を実現する新たな配達管理システムとして利用できるという。
ゼンリンは埼玉県秩父市において、山間地域における生活インフラの維持を目的とした実証実験を、2019年から実施。2022年9月には、複数の物流事業者の荷物をヤマト運輸が配達する形で、共同配送のプレサービスを開始した。プレサービスの結果、「荷物の配送管理システムが各物流事業者で異なるため、日々の配達状況の管理や配達結果をアナログで管理しなければならず、荷物を管理する各物流事業者や、配送を担当する地元事業者の業務負担が増加する」などの課題が判明したという。
本課題の解決に向け、サービスの全体統括を行うゼンリンが、配送管理システム構築の運用ノウハウを持つヤマト運輸に協力を依頼。パナソニックコネクトの「配送見える化ソリューション」をカスタマイズし、各社の荷物の配送状況を一括管理できる共同配送システムを開発した。
秩父市は山間地域が多く、若年層を中心とした都市部への人口流出や、住民の高齢化による交通や物流などの生活インフラの維持が課題となっており、2014年には日本創成会議が提起した「消滅可能性都市」に数えられた。
これを受けて、2021年に「秩父市生活交通・物流融合推進協議会」が発足して以来、山間地域における物流と公共交通ネットワーク「秩父モデル」構築に向けて数々の実証実験を実施。6月3日から共同配送サービスのおむす便以外に、遠隔医療サービス「そばいる」、交通や気象など地域のさまざまな情報をウェブ上にてリアルタイムで発信する「秩父市ダッシュボード」、各種事業で収集したビッグデータとオープンデータを組み合わせ事業分析や行政業務の効率化を可能にする「ZENRIN Local Area Insight」の実運用も、同時に開始するという。
ゼンリンは、全国の物流課題を抱える自治体や地域の配送を担う事業者の課題解決に向け、ヤマト運輸と連携し、共同配送サービスおよび共同配送システムの水平展開を目指していくとしている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」