ソニーは5月14日、2023年度通期(2023年4月~2024年3月)の連結業績を発表した。売上高は前年比19%増の13兆208億円、営業利益は同7%減の1兆2088億円、当期純利益は同3%減の9706億円となった。金融、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)、音楽、イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の各分野で⼤幅増収となったほか、G&NS、音楽分野の増益により増収増益となった。
アドオンコンテンツを含む自社制作以外のゲームソフトウェアの販売が増加したG&NS分野は、売上高が前年度比17%大幅増の4兆2677億円、営業利益は増収効果などにより、前年度から402億円増の2902億円となった。「PlayStation 5」の販売台数は、前四半期では450万台、2023年度通期では2080万台となり、3月末時点での累計販売台数は5920万台となり、「PlayStation 4」の累計販売台数6000万台に近い水準になっているという。ソニーでは2024年度のPlayStation 5の販売台数は1800万台を見込む。
3月における「PlayStation」全体のアクティブユーザー数は前年同期比9%増の1億1800万アカウントと高い水準を維持。ソニーグループ 執行役員経営企画管理グループDE&I推進担当金融事業・エンタテインメント領域補佐の松岡直美氏は「PlayStationのビジネスモデルは、コンソールサイクルで俯瞰するとPS4発売以降で大きく変化した。PS3までのビジネスモデルは、コンソールの世代ごとに新規に販売したハードウェアに対して、ソフトウェアの販売本数を増やしていくモデルだったが、PS5ではコンソールの世代を超えてユーザーコミュニティを広げ、プラットフォーム上でより長くプレーしてもらうモデルに転換している。ビジネスモデルの変化に伴い、急速なデジタル化とネットワークサービスの伸長で、G&NS分野の利益を大きく成長させられた」とコメントした。
今後については「コンソールサイクルの後半を迎え、PS5の新規販売台数は徐々に減少していくが、継続的に増加するアクティブユーザー数とユーザーエンゲージメントを着実に維持、拡大し、事業コストのコントロールも強化していくことで、PSプラットフォームの収益は今後も着実に伸ばしていけると考えている」(松岡氏)と今後について話した。
4年連続で最高益を更新し、6事業セグメント中で最大となった音楽分野はストリーミング売上の増加や為替の影響により、売上高が前年度比17%と大幅増の1兆6190億円、営業利益は増収効果により前年度から386億円増の3017億円となった。
「音楽出版におけるストリーミング売り上げについては、リリースから一定期間が経過した音楽カタログの利益、利用機会拡大により え、2020年度からの4年間で年平均成長率38%と大きく成長。管理する楽曲数は3月末時点で624万曲と過去10年で1.7倍になり、音楽出版での世界トップシェアを維持している」(松岡氏)とした。
映画分野は、テレビ番組制作における納入作品数の減少はあったものの、劇場公開作品の増加や為替の影響などにより、売上高は、前年度比9%増の1兆4931億円、営業利益は増収の影響はあったが、公開作品増に伴う広告宣伝費の増加などにより、前年度比ほぼ横ばいの1177億円となった。
ハリウッドでのストライキによる2023年度損益へのマイナス影響は約180億円と試算しており、2024年度は、ストライキによる損益へのマイナス影響がピークとなる見込みとのこと。映画制作では「バッドボーイズ RIDE OR DIE」「クレイヴン・ザ・ハンター」などの大型作品が公開を控える。
エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野は、テレビの販売台数減により、売上高は前年度比ほぼ横ばいの2兆4537億円、営業利益はテレビ減収の影響はあったものの、主に為替の好影響や費用削減効果により、前年度から79億円増の1874億円となった。
収益の柱であるレンズ交換式ミラーレスカメラは、前四半期に中国、日本を中心に高い伸びを示し、4月以降も好調を維持しているとのこと。「この市場成長は、2024年度下期以降、徐々に落ち着いてくると思うが、今後も安定的に推移すると見ている」(ソニーグループ 執行役員財務、IR担当の早川禎彦氏)と分析する。
I&SS分野は、モバイル向けイメージセンサーの増収と為替の影響により、売上高が前年度比14%と大幅増の1兆6027億円、営業利益は、増収の影響はあったが、減価償却費などの費用の増加により、前年度から187億円減の1935億円となった。
「スマートフォン市場は、中国で前四半期の販売台数が前年同期を若干上回ったものの、米国やアジアなどで停滞が継続。グローバルでは非常に緩やかな回復基調だと捉えている。この市場環境の中、モバイルセンサー事業は、センサーの大判化と高付加価値化、市場シェアの拡大によって成長を続け、2024年度も3年連続となる前年度比10%以上の売り上げ成長を見込む」(早川氏)とコメントした。
金融分野は、ソニー生命における市況変動の影響により、売上高は前年度比ほぼ倍増の1兆7700億円、営業利益は、ソニーペイメントサービス株式の⼀部譲渡に伴う譲渡益の形状はあったが、ソニー生命において、変額保険等にかかる市場へ市境変動による利益の減少に加え、前年度には不動産売却益の計上や不正送金にかかる資金回収があったことなどにより、前年度比1445億円の大幅減となる1736億円となった。
ソニーグループ 代表執行役社長COO兼CFOの十時裕樹氏は、2023年度を最終年度としていた第4次中期計画について「従来のエレクトロニクス事業の機能などを抱合した大きな本社から、グループ本社機能に特化し、規模を縮小したソニーグループに移行し、各事業と等距離でグループの成長を推進する体制とした。事業ポートフォリオについては、金融事業とそれ以外の各事業のさらなる成長を両立させることを目的に、2025年10月の金融事業のパーシャルスピンオフに向けた具体的な準備を進めている。成長領域であるエンタテインメント3事業と I&SSにキャピタルアロケーションを集中し、これら4事業セグメント合計の売上高を大きく伸長させることで、より成長型の事業ポートフォリオにできた」と総括した。
2024~2026年度にかけて実施する第五次中期経営計画については、営業利益年平均成長率を10%以上、3年間累計営業利益率を10%以上(いずれも⾦融分野を除く)という経営数値目標を掲出。
「グループ全体のさらなる成長に向け、これまで積極的に進めてきたシナジー実現の取り組みをもう1段進化させることを意図し、テーマを『Beyond the boundariesグループ全体のシナジー最大化』とした。引き続き、継続的な成長を通じて企業価値向上に取り組むという方針に変更はない。グループシナジー実現への取り組みをさらに強化しながら、エンタテインメント3事業とイメージセンサー事業、中長期的な成長に向けた施策の実行に注力していく。一方で、本中期経営計画期間及びそれ以降においても、不透明で変化が大きい事業環境が続くことを想定し、このような環境変化へのレジリエンスをさらに高めていくためにも、事業ポートフォリオの継続的な進化を通じた収益基盤の強化と投資効率や事業収益性の改善を進めていく」(十時氏)とした。
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