「ChatGPT」を手掛けるOpenAIはGPT-4 Turbo with VisionのAPI提供を開始したり、動画生成AI「Sora」を発表したり、アジア初となるオフィスを東京に構えるなど、相変わらずものすごいスピードで進化し続けている。
3月、ChatGPT越えを謳うAnthropicの生成AI「Claude 3」がリリースされた。Claude 3はChatGPTの「GPT-3.5」や「GPT-4」と同じように複数のモデルを用意している。「Haiku」は安価で高速応答できるのが特徴で、「Sonnet」はバランスタイプ、そして「Opus」がフラッグシップモデルとなる。このOpusは、さまざまなベンチマークでGPT-4より高いスコアを出している。
今回は、ChatGPTと「Claude 3」をビジネスで利用する際に、チェックしたいポイントを紹介する。
まずは、価格をチェックしよう。ChatGPTは無料プランと月額20ドルの「Plus」プラン、月額30ドル(最低2ユーザー)の「Team」プラン、大企業向けの「Enterprise」プランとなっている。無料版で利用できるLLMは「GPT-3.5」、有料版であれば「GPT-4」も利用できる。
Claude 3は無料プランと月額20ドルの「Pro」プランが用意されている。他のAIサービスもメインとなるプランは月額20ドル程度となっています。無料版はSonnetを用意し、OpusやHaikuは有料版として利用できる。
ChatGPTの無料プランではテキストベースのGPT-3.5しか利用できないが、Claude 3の無料プランではマルチモーダル機能も利用できる。無料プランという縛りであれば、Claude 3をお勧めする。
ただし、ビジネス利用であれば、高性能な有料プランを利用したいところ。月に20~25ドルの経費など、業務を効率化することであっという間に回収できる。
「ナレッジカットオフ」も更新されている。AIの情報を更新した日付のことで、情報が更新されない限り、AIはそれより後のことは知らない。このナレッジカットオフはChatGPTが2023年12月、Claude 3が2023年8月となっている。もちろん、新しいに越したことはないが、生成AIは検索サービスではないので、そこまで重視しなくてもよいだろう。
使用制限も比較してみよう。以前のChatGPTは3時間ごとに40メッセージという利用制限があった。しかし、現在は「利用制限が適用される場合があります」と表示され、テキストによるチャットをしている限り制限がかかることがほとんどなくなった。
「Claude Pro」は無料版の5倍利用できるが、ヘルプには「少なくとも5時間ごとに100以上のメッセージを送信できる」とある。Claude 3はメッセージ数と言うよりも送受信するトークン数によって制限がかかるイメージだ。長文のやりとりをすると、意外とすぐに使えなくなってしまう。その際は、あらかじめ「あと7メッセージで制限がかかる」などと表示してくれるのが親切だ。
高性能のLLMを使える回数と言う面ではChatGPTの方が有利だろう。とは言え、どちらにせよ使用制限がかかったら、無料版でも使えるGPT-3.5やSonnetに切り替えて作業を続行することは可能だ。
ビジネスでAIサービスを利用するなら、入力した情報を学習に使われては困る。ChatGPTのTeamやEnterpriseプランは、ユーザーの情報をAIの学習に使うことはない。
Plusプランはオプトアウト申請することで、学習されないようにできる。「OpenAI Privacy Request Portal」にアクセスし、「Make a Privacy Request」をクリック。「Do not train on my content」をクリックし、メールアドレスを入力すると、メールが届くのでリンクを開く。OpenAIのウェブページが開いたら、国(JAPAN)を選び、「Confirm Request」をクリックすれば完了だ。
「Claude 3」はどのプランもプロンプトや会話をAIの学習に使わないと明言している。
操作方法は似ており、入力フォームにプロンプトを入れて、Enterキーを押せば、生成が始まる。出力が長くなると、ChatGPTは一時中断し「生成を続ける」をクリックしなければならず面倒だが、Claude 3であれば最後まで出力してくれるので、手間がかからない。
ファイルをアップロードするのもドラッグ&ドロップでOKだ。ただし、ChatGPTが全画面にドロップできるのに、Claude 3は入力フォーム周りにドロップしなければならないのがやや使いにくい。
どちらもプルダウンメニューから言語モデルを変更できる。やりとりの履歴にもアクセスできるが、ChatGPTは左側に常に表示され、Claude 3はメニューアイコンをクリックすると画面が切り替わる。長らくChatGPTを使ってきたからか、Claude 3で履歴にアクセスするのは手間に感じてしまう。
ChatGPTとClaude 3を日々使っているが、まずClaude 3の性能の高さに驚く。ベンチマークで高スコアを出しているのはもちろん、多くのユーザーが「GPT-4を超えた」というのも理解できる。
ChatGPTは論文調というか日本語がやや固く、Claude 3の方が日本語が柔らかく自然だ。そのため、カジュアルなブログやメール本文、小説、台本などを作る際は、Claude 3の方が簡単に狙った出力が得られる。
ChatGPTはロジカルな分、構成を作るのが得意。そのため、筆者はChatGPTで構成案を作り、Claude 3に文章を書いてもらうことが多い。
ChatGPTとClaude 3のどちらもPDFや画像をアップロードし、その内容を解説してもらったり要約してもらったりすることができる。コードを生成させることも可能だ。
ただし、プロンプトのコツは異なる。プロンプトを明確にシンプルに書く、というのがChatGPTの基本だったが、Claude 3はメッセージの数ではなく、やり取りするトークンで制限がかかるので、長文テキストやファイルに対してプロンプトを書く場合、複数の指示をまとめて書く方が効率的だ。使い勝手が大きく変わるわけではないが、覚えておきたい。
一度に扱えるコンテキストウィンドウとトークンも比較してみよう。コンテキストウィンドウとはAIが参照できるテキストの分量で、「GPT-3.5 turbo」が1万6385トークン、「GPT-4 Turbo」は12万8000トークンとなっています。最大出力トークン数はどちらも4096トークンになる。しかし、GPT-4モードで10万トークンの小説を読み込ませようとしてもエラーになるので、コンテキストウィンドウのサイズを小さく設定していると思われる。
それに対して、Claude 3は全モデルでコンテキストウィンドウが20万トークン、最大出力トークンは4096トークンとなっている。Claude 3の方がより大きなコンテキストウィンドウを利用できるのが特徴だ。江戸川乱歩の「怪人二十面相」、11万3207文字、12万トークンを一気に読み込んでまとめられるのはClaude 3ならではだ。
会社やチームで生成AIを利用するなら、ChatGPT Teamに軍配が上がる。ChatGPTには、プロンプトをパッケージ化してオリジナルのチャットボットを作成できる「GPTs」という機能を利用できる。生成AIに詳しい人がプロンプトやコンテキストウィンドウに読み込ませるデータを用意し、パックにして共有することが可能だ。プロンプトを構築するスキルのない人でも、ChatGPTの業務利用を推進できるので、社内のAI格差を小さくし、全社の業務効率をアップできる。
ちなみに、ChatGPT PlusでもGPTsを利用できるが、社内共有の機能がないので注意したい。
以上がChatGPTとClaude3をビジネスで使う際の比較になる。チームで利用するなら、ChatGPT Teamがお勧め。個人で利用する場合は、好みによるが、台本や小説など口語を出力することが多いならClaude 3が適している。プレゼン資料の構成やビジネスプランの検討などは、ロジカルなChatGPTが向いているだろう。とは言え、迷うのであれば、両方契約するのもありだと思う。筆者も両方契約し、同じプロンプトを両方に入れて活用している。
夏には「GPT-4.5」がお目見えしてChatGPTが巻き返しを図るとも噂されている。ChatGPTとClaude 3のどちらでもよいので、すぐに使い始めることをお勧めしたい。
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