中国の小米科技(シャオミ)が「Mobile World Congress(MWC)」でAndroidスマートフォン「Xiaomi 14 Ultra」のグローバル版を発表したとき、筆者はすぐに興味をそそられた。MWCで、シャオミは他にもさまざまな製品を披露した。電気自動車の「SU7」、何種類ものスマートウォッチ、一斉にバク転を決めるロボット犬などだ。しかし筆者の目を奪ったのは、この新しいハイエンドスマートフォンだった(次点は僅差でロボット犬だったことは認めよう)。
Xiaomi 14 Ultraは、MWCの開幕前にすでに中国国内では発表済みだった。その際に公開された機能リストは、スマートフォン愛好家が写真家などのクリエイター向けに書き上げた短いファンタジー小説のようだった。80Wのワイヤレス充電、1インチ(対角では約0.6インチ)の大型イメージセンサーを搭載したメインカメラ、メインカメラに搭載された多様な環境への対応力を高める可変絞りレンズ――。
Xiaomi 14 Ultraについて知れば知るほど、この端末が持つ優れた特長が次期「iPhone」(おそらく「iPhone 16」)にも搭載されたらと思わずにはいられなくなった。iPhone 16のデザインとハードウェアはすでに確定しているだろうが、iPhone 16にあったらうれしいXiaomi 14 Ultraの機能をつぶやいてもバチは当たるまい。
Xiaomi 14 Ultraを初めて見た瞬間から、筆者の目は背面に飛び出た巨大なカメラに引きつけられた。まるでアイスホッケーのパックを横半分にスライスし、宝石をちりばめたような姿だ。米国にある巨大な岩山「デビルスタワー」を思わせる出っ張り部分に、広角カメラ、超広角カメラ、そして2つの望遠カメラの計4つのカメラが埋め込まれている。
2つの望遠カメラのうち、1つはフルサイズ換算で75mm(3.2倍)、もう1つは120mm(5倍)の焦点距離を持つ。望遠レンズを2つ搭載したスマートフォンはXiaomi 14 Ultraが初めてではない。サムスンの最上位モデル「Galaxy S24 Ultra」も3倍と5倍の望遠レンズを搭載しており、背面カメラは同じく4眼構成だ。米CNETが実施したカメラ性能の比較テストでは、Galaxy S24 Ultraの3倍ズームレンズは「iPhone 15 Pro Max」を上回った。
iPhone 15 Pro Maxには5倍望遠カメラしかないため、3倍ズームの写真をとりたい場合はデジタルズームを利用しなければならない。iPhone 15 Pro Maxの3倍デジタルズームで撮った写真も悪くはないが、Galaxy S24 Ultraの3倍望遠レンズで撮った写真の方が仕上がりはいい。
シャオミやサムスンの端末に搭載されている焦点距離の短い望遠カメラがiPhoneにも欲しい。iPhone 16 Ultra に、iPhone 15 Proの3倍望遠カメラと「iPhone 15 Pro Max」の5倍カメラの両方が搭載されていたら最高だ。
Appleはワイヤレス充電を効率化するために、2020年発売の「iPhone 12」シリーズから「MagSafe」を導入した。しかし2024年になっても、MagSafeを利用したワイヤレス充電の最大出力は15Wしかない。Wireless Power Consortium(WPC)が策定した最新のワイヤレス充電規格「Qi2」はMagSafeの技術をもとにしており、Androidスマートフォンにも対応するが、最大出力はやはり15Wにとどまる。
一方、Xiaomi 14 Proのワイヤレス充電は最大80Wの出力が可能だ。これはiPhone 15の有線での最大充電速度である27Wより3倍以上も早い。
筆者はPeak DesignのモバイルウォレットやTwelve Southの充電スタンド「HiRise 3 Deluxe」(「スタンバイモード」との相性が最高)など、iPhoneとシームレスに連携できるMagSafe対応のマグネット式アクセサリーを愛用しているが、iPhoneの充電速度が劇的に速くなるなら、その方がいい。
いや、正直にいうなら両方ほしい。アクセサリーを利用するためのマグネットと、80Wワイヤレス充電の両方を手に入れたい。
しかし、80W充電にはデメリットもある。長期的に見ると、iPhoneの15Wのワイヤレス充電よりもバッテリーにかかる負荷は大きくなる可能性がある。3月にリリースされた「iOS 17.4」には、iPhone 15でバッテリーの状態を確認できるようにするアップデートが含まれていた。80Wのワイヤレス充電機能は欲しいが、スマートフォンのバッテリーがすぐに劣化してしまうのは避けたい。
筆者の希望は、MagSafe経由でiPhoneを50Wでワイヤレス充電することだ。これなら十分に速く、かつ自宅や職場で愛用しているスナップオンケースや便利な充電スタンドなどのMagSafe用アクセサリーもそのまま使える。来る「iOS 18」ではバッテリー周りが充実し、パススルー充電(バッテリーを充電せずにスマートフォンに給電する機能)や、急いでいないときの低速充電オプションなども利用できるようになることを期待したい。
Xiaomi 14 Ultraには、別売アクセサリーとして専用の撮影キット「Photography Kit」が用意されている。これをXiaomi 14 Ultraに装着すると、物理ボタンを使った細かいカメラ操作が可能になる。グリップ部分には、2段階のシャッターボタン、ズームレバー、カスタマイズ可能な録画ボタン、追加のカスタムダイヤルなどが搭載され、キット自体を1500mAhの外部充電バッテリーバンクとしても使える。充電機能の面でも、シャオミには見習うべき点が多い。
なぜAppleはこうした機能をiPhoneに搭載してこなかったのだろうか。確かにiPhoneはサードパーティー製のアクセサリーが充実している。しかし、以前のAppleは主力製品と同じくらいアクセサリー類にも力を入れていた。iPhoneの「ファインウーブン」ケースの話をしているわけではない。
かつてAppleが販売していたスピーカー「iPod Hi-Fi」を覚えているだろうか。30ピンのドックがついたiPod用のポータブルスピーカーだ(運よく初代iPhoneを手に入れられた場合はiPhoneでも使用できた)。2007年時点での価格は349ドル(当時のレートで約4万円強)。iPodを入れられる最高のスピーカードックかといわれるとノーだが、欲しかったかといわれるとイエスだ。値段は高かったが、他にはない魅力があった。
もしAppleがiPhone専用の撮影キットを開発したら、どうなるだろう。iPhoneのために作られた純正カメラアクセサリーは、新しい「Shot on iPhone」(iPhoneで撮影した)ショートフィルム、イベント動画、広告キャンペーンを生み出すはずだ。
Apple純正の後付けカメラグリップは、どのような形をしているのだろうか。もちろんアルミニウム製で、MagSafeの技術を生かし、セキュリティも強化されるだろう。充電やカメラアプリ用のUSB-Cコネクターが搭載される可能性もある。超広帯域チップが搭載され、「探す」アプリで位置も特定できるようになるかもしれない。
このアクセサリーを真にAppleらしいものにするためには、グリップを装着することで「カメラ」アプリのプロ向けシークレット機能が解放され、手動のシャッターボタンやレバーと連動するようになるといった仕組みも欲しい。いずれはサードパーティー製のアプリやサブスクリプションがなくても、フォーカス、シャッター速度やISO、ホワイトバランスを手動で調整できるようになるだろう。
もちろん、これはスマートフォンのレビュアーとしての筆者の妄想にすぎない。Xiaomi 14 Ultra(とその撮影キット)を実際に使ってみたいと思う一方で、この端末の優れた特長がiPhoneにも採用されることを願わずにはいられない。いずれはAppleがロボット犬を作る日も来るかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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