大日本印刷(DNP)は4月23日、窓口業務などの対話の音声をリアルタイムで文字に変換し、目立たせたい単語をフォントで強調して透明スクリーンに表示する「DNP対話支援システム」を発売した。
同システムは、感情や話題に合わせたフォントに自動で切り替える「DNP感情表現フォントシステム」と、会話をリアルタイムで文字化・翻訳するアイシンの音声認識システム「YYSystem」を連携して開発。聴覚障がい者や高齢者など、音声を聞き取ることが困難な人や、訪日外国人との円滑なコミュニケーションを支援するものとなる。
障害者差別解消法の改正により、2024年4月から障がいのある人への合理的配慮の提供が義務化されている。また、社会全体で年齢や障がいの有無、母国語の違いなどに関わらず、必要な情報が届き、意思疎通ができるユニバーサルコミュニケーションのニーズが高まっている。
同社によると、コロナ禍後、外国人観光客などが増加するなか、窓口業務での多言語コミュニケーションの実現が求められているという。こうしたニーズに対し、テキストデータの内容を自動解析し、そこで表現された感情や話題に合わせて自動的にフォントを切り替える「DNP感情表現フォントシステム」(2018年開発)と、AIを活用した高精度なアイシンの音声認識システム「YYSystem」のそれぞれの強みを掛け合わせ、「DNP対話支援システム」を開発した。
同社では、会話による説明が多く、情報保証が必要とされる自治体・調剤薬局・金融・保険などの窓口。外国人観光客などとの会話の支援が必要な観光業界(観光案内所、ホテル)、公共交通機関の窓口での利用を想定する。
同システムでは、音声認識システム「YYSystem」によって、素早く、正確に発言者の音声を文字に変換。さらに、「感情表現フォントシステム」によって、音声認識されたテキストをリアルタイムで解析し、感情やイメージなどを表す単語について、12種のフォントから自動的に最適なものを選択して表示する。また、目立たせたい言葉や重要な単語のフォント・色・大きさを強調して表示することで、より円滑なコミュニケーションを支援する。
アイシンの「YYSystem」によって、日本語・英語・中国語・韓国語・ポルトガル語など23の言語のリアルタイム翻訳に対応。現在、「感情表現フォントシステム」は日本語のみの対応となっているが、今後は対応言語を拡張する予定だという。加えて、透明スクリーンに文字を表示することで、対面接客時に相手の表情を見ながら自然に対話できるように配慮。指向性マイクによって、周囲の雑音の影響を軽減し、対話音声を収音しやすくしている。
今後、同システムを自治体や公共交通機関などに提供し、関連サービスも含め2028年度までに10億円の売上を目指す。なお、同システムは、2024年4月3日〜5月31日の期間、JR九州の小倉駅に試験的に導入されている。2024年5月〜6月には、JR東日本の一ノ関駅に試験導入を予定する。
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