スマートフォンネイティブが見ている世界

インスタ・Facebook等で続く「著名人なりすまし詐欺広告」--前澤さんらMeta提訴、実態と対策は

 「Facebook」「Instagram」などにおける著名人のなりすまし広告が問題となっている。警察庁の発表によると、SNS型投資詐欺の2023年の被害額は約277億9千万円(2271件)に上る。著名人のなりすまし広告を中心とした、SNS型投資詐欺の特徴と実態、対策について解説したい。

  1. 男性はFacebook、女性はInstagram経由が最多
  2. なりすまし広告の大半は外国人等によるものか
  3. SNSに不慣れで投資初心者の中高年が被害に
  4. SNSで検索するなど自衛行動が大切

男性はFacebook、女性はInstagram経由が最多

 SNS型投資詐欺は、主としてSNSその他の対面しない状態での詐欺行為により投資を勧め、投資名目で金銭等を騙し取る詐欺のことだ。

 男女で加害者と知り合うSNSが異なっている。男性はFacebook、女性はInstagramが最多であり、それぞれ利用者の多いSNSが詐欺の場として選ばれていると考えられる。

 男性が加害者と知り合うのはFacebook(22.1%)の他、「LINE」(21.1%)、Instagram(17.9%)など。女性はInstagram(31.5%)の他、LINE(19.2%)、マッチングアプリ(14.1%)などが多くなっている。

 SNSのダイレクトメッセージをきっかけにやり取りが始まり、その後LINEに移ってやり取りをして被害につながることが多い。いきなりLINEグループに追加され、そのまま騙されてしまったケースも少なくない。

 被害者は男性が50~60代、女性が40~50代が多く、特殊詐欺と比べ若い世代が被害に遭っているのが特徴だ。特殊詐欺の場合は被害者の8割が65歳以上のため、比べると中年層の被害が多くなっている。

なりすまし詐欺広告の一例 なりすまし詐欺広告の一例
※クリックすると拡大画像が見られます

なりすまし広告の大半は外国人等によるものか

 SNSの著名人なりすまし広告の多くは、著名人をかたり、「儲かる話を無料で教える」としてLINEグループに誘導する。被害者たちは、LINEグループでやり取りするうちに、投資名目でお金をだまし取られてしまう。FacebookとInstagramに集中しているため、運営会社であるメタに非難が集まっている。

 著名人なりすまし詐欺広告について、調査も行われている。運営会社であるメタの広告ライブラリで、2024年に日本で配信された「投資」という言葉を含む日本語の広告を調査したものだ。

 詐欺広告に登場する著名人は、森永卓郎さんが最多で3000回以上。続いて堀江貴文さん、西村博之さん、村上世彰さん、池上彰さん、小手川隆さん、前澤友作さん、岸博幸さん、三崎優太さん、中田敦彦さんなど。経営者や投資家だけでなく、芸能人などの著名人も含まれている。著名人の名前や写真で目を引き、信頼感で騙す悪質なものというわけだ。

 広告の配信元の約65%に当たる910個のアカウントには、日本語が含まれていなかった。大半は英語だが、韓国語やベトナム語、タイ語のアカウントも。多くは使い捨てアカウントと見られる。漢字でも一部が中国簡体字になっているなど、不自然なものもあったという。外国人が著名人なりすまし詐欺広告を出している可能性が高いと考えられるのだ。

なりすまし詐欺広告の一例 なりすまし詐欺広告の一例
※クリックすると拡大画像が見られます

SNSに不慣れで投資初心者の中高年が被害に

 いきなりLINEグループに追加されてなぜ信じるのか、不思議に思われる方も多いだろう。

 被害にあったある40代女性は、「友達の友達に追加されたのかもしれない」と特に疑いもせず受け入れたそうだ。「LINEではそれまで友達とのやり取りしかしていなかったし、危険なことなど何もなかったから疑わなかった」という。中高年世代にとって、LINEは身近な人とのみやり取りするものであり、このような感覚でだまされる人は少なくないのだ。

 SNS上に表示された広告詐欺についても同様だ。被害にあった50代女性は、「テレビにも出ている有名な人の広告だし、信じてしまった。いつもやり取りしている友だちの投稿の中に表示されていたから、嘘のはずがないと思った」という。なりすましの可能性など考えず、有名な人を信じてだまされてしまったという感覚なのだ。

 物価高や上がらない給料などが頻繁に話題になる。働いているだけでは暮らしていけず、投資しなければならならないという投資熱が高まっている。SNSではこのような詐欺行為が多く行われており、若者層は既に騙された経験があるなど、危険が多いことがわかっている。一方中高年層は、SNSにも不慣れで投資初心者のため、このような被害にあってしまっているのではないか。

SNSで検索するなど自衛行動が大切

 メタは、AIや目視でのチェックなどで詐欺広告の排除を行っているというが、効果は現れていないようだ。

 前澤友作さんや堀江貴文さんは、何度も申し入れしているにも関わらず自身等のなりすまし広告の被害がやまないため、メタを提訴。総務大臣を務める松本剛明氏も、著名人の偽広告対応を問題視しており、同社などに対して適正な対応を求めるという。対するメタはAIや目視でのチェックなどで詐欺広告の排除を行っているというが、効果は現れていない。

 このようななりすまし広告を見かけたら、通報をすることが大切だ。ただし筆者も繰り返し通報してはいるものの、やはり表示され続けているので、各自での自衛が必要となる。

 知らない人にLINEで友だち追加されない設定、友達以外からはメッセージを受け取らない設定にしておくと安心だ。「設定」→「プライバシー管理」→「IDによる友だち追加を許可」をオフ、「メッセージ受信拒否」をオンに。「友だち」→「友だち自動追加」「友だちへの追加を許可」はオフにしておこう。

 気になる広告を見かけた場合は、著名人の名前で検索をかけて調べてみよう。本人がSNSなどで「自分ではなく詐欺」と警告していたり、メディアなどで被害が報告されたりしていることも多い。先程ご紹介したランキングにある著名人の場合は、特に注意してほしい。

 このような被害は多数報道されており、毎回同じパターンで行われている。日頃からニュースを見て被害のパターンを知り、リテラシーを高めることこそが一番の自衛につながる。家族などにもこのような被害が続いていることを伝えてあげてほしい。

 お金を取られてしまった後に取り戻すのは難しいので、気になった段階で「消費者ホットライン」(#188)に相談してほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]