KDDIとKDDI Digital Divergence Holdingsは3月18日、東京大学松尾研究室発のELYZA(イライザ)と資本業務提携を締結したと発表した。
4月1日を目途に、ELYZAの株式の43.4%をKDDI、10.0%をKDDI Digital Divergence Holdingsが保有し、KDDIの連結子会社とする予定。生成AIの社会実装力を高めることで、企業や自治体を対象に、生成AIを用いた課題解決の促進を目指す。中期的に1000億円規模の計算基盤投資を構想するとともに、4月から国内最高性能のLLMを順次提供するという。
昨今、少子高齢化による人手不足が加速する中、生産性向上は喫緊の課題となっている。また、事業環境の変化に対し、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革が求められているという。
生成AI活用による業務効率化や生産性向上の実現が期待される一方、グローバルモデルの利用だけでは本格的な課題解決に至らないケースも出ている。日本語に最適化された汎用LLMや業界・領域、さらには個社に特化・カスタマイズしたLLMによる課題の解決が求められ、LLMを実証実験(PoC)フェーズで終わらせないため生成AIを現場に導入・運用するための支援、ツールのニーズが高まっているとしている。
ELYZAは、AI研究の第一人者である東京大学で教授を務める松尾豊氏の研究室メンバーが立ち上げたAI企業。「ChatGPT」登場以降も汎用LLMの開発に取り組み、70億パラメーター、130億パラメーターのLLMを商用利用可能な形で公開している。3月12日には日本語特化のLLMシリーズ「ELYZA LLM for JP」を発表。大規模な追加事前学習とPost-trainingを実施し、グローバルモデルに匹敵する700億パラメーターのLLMの開発に成功したという。
4月1日以降は、ELYZAの持つLLMの研究開発力とKDDIグループの計算基盤、ネットワーク資源などのアセットを組み合わせ、3社で生成AIの社会実装を加速させる。生成AIの利用や社会実装を加速するための人材組織を共同で設置するほか、企業や自治体向けに2024年春から、生成AI関連のサービスを提供するという。
具体的には、(1)オープンモデル活用型の日本語汎用LLM開発、(2)領域特化型のLLM開発、(3)生成AIを活用したDX支援・AI SaaS提供――の3点を軸に協業する。日本語汎用LLM開発では、2024年春から高性能な日本語LLMのAPIサービスを順次提供する予定だ。
企業や業界、業務といった領域特化型のLLM開発では、一例としてKDDIの関連会社でデジタルBPO事業を展開するアルティウスリンクと連携。コンタクトセンター特化型LLMの開発・実装を視野に入れ、企業や自治体におけるコンタクトセンターの顧客対応業務のDXを推進するという。金融、小売りをはじめとしたほかの特定領域においても、順次サービスを展開するとしている。
また、生成AIを活用したDX支援サービスも強化。生成AIを組み込んだAI SaaSを共同で開発・販売し、より多くの企業や自治体での生成AIの本導入を広げるという。
なお、ELYZAはKDDIグループの支援を受け、将来的な「スイングバイIPO」を目指すという。KDDI 代表取締役社長 CEOを務める高(漢字ははしごだか)橋誠氏は、「重力を利用して宇宙探査機が惑星から飛び立つという宇宙(業界)での専門用語である『スイングバイ』を参考に、スタートアップが大企業に参画、アセットを最大限に活用して上場を目指すスイングバイIPOを進めている」と話す。既に先行しているソラコムやKKCompany同様に、生成AI領域でのIPOを支援していきたいと語った。
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