シャープCEOが事業変革の核に据えた「世界を変える」技術とは--「2024年度こその転換点に」

 シャープの代表取締役兼CEOの呉柏勲(Robert Wu)氏は3月13日、社員向けのCEOメッセージを、社内イントラネットを通じて配信した。

 メッセージのタイトルは「2024年度春季労使交渉の回答について」としたが、そのなかで、策定中の中期経営計画の考え方や新規事業への取り組み、AIに関する考え方などを示した。

  1. 収益性重視の確かな成長戦略を構築へ
  2. 会社は社員の挑戦を後押ししていく
  3. 生成AIを核とした事業変革に全社を挙げて取り組む

収益性重視の確かな成長戦略を構築へ

 シャープでは2月に、2023年度業績予想を下方修正し、最終赤字となる見通しを明らかにしている。

 呉社長兼CEOは「ブランド事業の業績回復を期待しているものの、ディスプレイデバイス事業の厳しさは当面残る。年間最終黒字を必達目標に掲げ、一年間、全社一丸となって取り組んできたが、それが未達となることに、私自身、CEOとして責任を痛感している」と語り、「さまざまな構造改革の立案や新たな成長シナリオの構築など、再成長に向けた中期経営計画の策定に全力をあげて取り組んでいるところである」とした。

 中期経営計画の詳細については、「固まり次第、改めて説明する」としながら、「かねてより方針に掲げている『ブランド事業を主軸とした事業構造の構築』を一層強力に推し進めるとともに、収益性重視の確かな成長戦略を構築していく」と述べた。

 また、「非常に厳しい事業環境下にあるが、今後も、私が先頭に立ってさまざまな改革を強力に推し進めていく。そして、2024年度こそ、シャープの転換点となる一年にしていこう」と呼びかけた。

会社は社員の挑戦を後押ししていく

 新規事業への取り組みについては2月28日に、2023年度の新規事業提案会の最終審査を行ったことを報告した。

 約200チームが参加するなか、最終審査では、各本部代表の14チームのうち、3チームが事業化に向けた次のステージへと進み、2チームが継続審査になったという。

 また、2022年度の優秀提案に対する事業化に向けた進捗確認会も並行して進めていることも明らかにした。

 「今後はこうした施策をベースに、全社のインキュベーションの仕組みを早期に体系化し、取り組みを加速していく」と述べている。

 さらに、ビジネスグループ横断での新規事業立ち上げを強力に支援する全社プロジェクトなど、新たな施策も次々と展開することを示しながら、「勇気をもって新たなことに挑戦し、失敗から学びを得るというプロセスを何度も繰り返すことこそが新規事業成功の秘訣であり、挑戦した結果の失敗は大きな資産になる。会社はこれからも社員の皆さんの挑戦を後押ししていく。ともに困難に立ち向かい、さらなる成長を実現していこう」と提言した。

生成AIを核とした事業変革に全社を挙げて取り組む

 最後に、呉社長兼CEOは、2月15日にOpenAIが公開した動画生成AI「Sora」について触れ、「一昨年、同社がChatGPTを発表して以降、生成AIは凄まじいスピードで進化を続けている。私自身、年初にアメリカで行われたCES2024に足を運び、生成AIが非常に大きな存在感を示し、近い将来、世界を変えることになると改めて確信した」と前置きし、「シャープにおいても、現在、ユーザーとのタッチポイントとなるさまざまなハードウェアを持つ強みを活かしたエッジAIの活用や、世界的なAI関連企業との取引関係を持つ鴻海グループとの連携を生かした新たなビジネスの展開など、さまざまな生成AI関連事業への挑戦を開始している。今後は、こうした生成AIを核とした事業変革に全社を挙げて取り組むことで、将来のシャープの新たな姿を創り上げていきたい」とした。

 なお、春季労使交渉については、3月13日に、シャープ労働組合に対して春季労使交渉の回答を行ったことを報告。その考え方について説明した。

 「シャープを取り巻く事業環境は極めて厳しい状況が続いているが、業績を回復させ、再成長していく上では『人への投資』が最も重要であると考えている。いかなるときも“HITOを活かす経営”を貫く姿勢に変わりはない。今回の回答にあたっても、こうした考えのもとで、信賞必罰の基本方針は堅持しつつ、足元の物価上昇等を踏まえて、昨年度を上回る水準の給与改定を行うことにした」と述べた。

 HITOは、「複数の専門性を持つHybrid人材の育成」「Innovationが生まれる環境や風土づくり」「社員の才能(Talent)を十分に生かす適材適所の人材配置」「優秀人材への成長機会(Opportunity)の提供」の意味を持たせている。

 また、月給水準が相対的に低く、物価上昇の影響を受けやすい若手社員などの層に対する給与の引き上げも行うという。

 さらに4月から、会社に対する共感度合いを可視化する意識調査「エンゲージメントサーベイ」を導入することも明らかにした。「これにより、“HITOを活かす経営”のPDCAを着実に回し、“若くて活気あふれる企業風土”の醸成を一層加速していきたい」と語った。

 一方、シャープでは、パイオニアとの光ディスク事業に関する合弁を解消すると発表。2009年6月に設立した同事業を行うパイオニアデジタルデザインアンドマニュファクチャリング(PDDM)の株式を、PDDMに譲渡すると発表した。シャープはAV事業拡大を目指し、光ディスク事業を継続するという。

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