VTuberプロダクション「ホロライブプロダクション」を運営しているカバーは3月12日、同社では初めてとなる海外拠点「COVER USA」を北米に開設することを発表。グローバル展開に向けた現地化(ローカライズ)を推進していくという。
VTuberは、モーションキャプチャーを用いてアニメルックアバターで活動するバーチャルエンターテイナーのこと。ホロライブプロダクションは、所属タレント(IP)86名、総チャンネル登録者数8625万、月間ユニークユーザー数2000万人以上という、国内大手のVTuberプロダクションとして展開している。
海外展開も進めており、英語圏向けVTuberグループ「ホロライブEnglish」をはじめとして、海外向けのタレントが33名所属。すでに多言語圏においてもVTuber IPの規模は拡大しており、地域別のタレントチャンネル登録者数は2023年12月時点で2902万人となり、海外比率は35.3%にも及ぶという。
海外展開の背景として、世界のIPビジネスにおいて、日本とアメリカがけん引している状況であるうえ、キャラクターIPの総収入のうち、トップ10に入っているほとんどが、アニメルックであると説明。またキャラクターIPの収益はマーチャンダイジング(MD)が中心となっており、グローバルで収益を作るにはアニメ文化が根付いていること、さらにMDやライセンス、タイアップなどコマース領域で収益を作ることができるビジネス環境が必要という。
カバーとしてもこれまで言語別のIP創出や多言語コンテンツの制作、海外イベントの出展、現地のコラボイベントのグッズ販売などリアル商品の販路拡充、ホロライブEnglishの米国ライブなど取り組んできたという。それを踏まえ、グローバルでVTuber事業を展開するには徹底したローカライズが重要とし、北米に拠点を設立するのは、すでにIP展開している言語圏において、MD収益やライセンス契約の見込めるポテンシャルがあるエリアと説明する。
米国拠点は「COVER USA」として、すでにカリフォルニア州で設立済みとなっており、2024年7月から営業を開始する。「コンテンツの現地化」「UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ。二次創作)の現地化」「ビジネスの現地化」の3つをテーマに展開するという。これまでコンテンツ供給をはじめ、イベント企画や物販企画、顧客対応などを含めて、日本を中心にして海外での活動を展開してきたが、今後コンテンツ供給はクオリティ維持の観点から日本を基点にしつつ、現地でのイベント施策や物販、営業などの収益分野の活動を現地化させていく方針という。
海外拠点設立の発表にあわせて、説明会を実施。登壇したカバー 代表取締役社長CEOの谷郷元昭氏によれば、初期段階ではスモールスタートという形で、日本からVTuberビジネスの立ち上げに関わってきた少数のメンバーを派遣し、ゆくゆくは現地での採用を検討していくという。また現状において、現地でのタレント発掘や採用の窓口ということは考えておらず、現在所属しているタレントのサポート強化が目的であると説明。日本では露出の機会など活躍の場面が増えているものの、米国においてはホロライブEnglishとしての全体ライブを1回行っただけの状態であり、現地に拠点ができることで現地パートナーと交渉などもやりやすくなり、海外向けタレントの活躍の場を広げていきたいという。加えて、海外圏におけるECの比率を日本と同程度に引き上げていくことも展望として語っていた。
またこの先のロードマップとしても、北米拠点やグローバル展開で培ったノウハウをもとに、アジアやヨーロッパなども含めたグローバル体制を構築し、多文化圏でのコンテンツ展開を加速させていく考えを示す。谷郷氏は、VTuberは、漫画・アニメ・ゲームに続くことができる⽇本発の新たなコンテンツカテゴリーであり、まずは北⽶からポジションを確固たるものにし、世界で勝負できる⽇本発の新たなコンテンツ産業に昇華していくと意気込みを語った。
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