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三重交通キャラ炎上に学ぶ、「萌え絵」の扱いの難しさ--批判だけでなく擁護の声も

 三重交通の公式キャラクターが炎上した。三重交通グループ創立80周年に合わせて、運転士の男女キャラクターを発表、この絵が一部で非難を浴びたのだ。

 確かに炎上のターゲットになりやすい「萌え絵」系ではあるものの、過去の例のように胸を強調したり、露出が多かったりしたわけでもなかった。炎上の経緯と三重交通グループがとった対応までをご紹介したい。

  1. くねくね、くびれ強調で批判を浴びる
  2. 炎上を疑問視、擁護する声も大きい
  3. 非がない場合は炎上に屈しないことも必要か

くねくね、くびれ強調で批判を浴びる

 三重交通グループが発表したキャラクターは、女性は23歳の運転士という設定で、片手を上げて若干腰を捻った形のポーズを取っている。男性は28歳の運転士という設定で、帽子に手をかけ、足を広げて立っている。

 調べると、実際に批判しているユーザーはおり、メディアが煽っているだけで実際は批判などの実態がない「非実在型炎上」ではないようだ。

 「X」(旧Twitter)内でも、「くねくねきゃぴきゃぴ愛想をまいている」「くびれが誇張されすぎている」「女性キャラだけくねくねさせている」などの声はあがっていた。しかしそのような声は多いわけではない。

炎上を疑問視、擁護する声も大きい

 見ていくと、「反応が過剰すぎる」「これがどこが性的なのか」という擁護の声も多い状態だ。「三重交通さんクレームに屈しないで」という声も多い。「露出が多いわけでもないのに」「バスのユーザーでもないんだから意見を聞く必要ない」などの声もあった。

 くねくねとされたポーズも、ただの体重を片足にかけて立つポーズ、いわゆる「コントラポスト」ではないかという指摘がある。片足に体重をかけたことで、肩と腰の動きが相反し、動的で人物が美しく見えるポーズとなることはよく知られている。

 女性のグラビア写真などでは炎上しないが、これまでにも、萌え絵系のキャラクターによる炎上は何度も続いている。萌え絵系は炎上のターゲットになりやすいのだ。

 たとえば、2014年に三重県志摩市は17歳の海女という設定の「碧志摩メグ」を公認キャラクターに採用したが、胸や太ももを強調しすぎていると炎上、公認を取り消されることに。しかし現在、全国のファンの2700万円を超えるクラウドファンディングに支えられ、ラッピングバスなどのさまざまな企画を実現させている。

 2016年には、東京メトロの公式キャラクター「駅乃みちか」が、やはり顔を赤らめ、スカートが透けている様子が「公共交通機関のキャラクターとしてふさわしくない」と炎上。この時は、スカートを塗りつぶす修正が行われている。

非がない場合は炎上に屈しないことも必要か

 三重交通グループは、炎上に対してさまざまな意見が寄せられていることは把握しているとした上で、「キャンペーンに変更はない」としている。1月27日からは、既に一部で同キャラクターのラッピングバスが運行を始めている。

 過去の炎上事例のように、「意味なく胸を強調」「意味なく露出が多い」などの明らかにNGとされる例ならともかく、今回は特に該当しないようだ。あらゆる人に好意的にとられることは不可能であり、どのようなものでも「不快」と否定的にとらえる人はいる。

 今回は、事態に対する三重交通グループの態度が「毅然としている」とむしろ好評となっているようだ。過去にも、スープストックトーキョーが離乳食提供で炎上した時も、自社の理念を説明し理解を求める毅然とした対応で評判が上がっていた。

 萌え絵系は炎上しやすいが、碧志摩メグ人気からも分かる通り、人気のジャンルでもある。炎上を恐れて使わないというのも意味はないだろう。この炎上も公認キャラクター自体がどうこうではなく、萌え絵を使う文化自体に対する不満分子と問題ないとする層との対立で起きているように見える。

 自社に明らかな非がないのであれば、炎上したからと言って、必ずしも変更を加える必要はない。三重交通グループの対応は、炎上に対する対応の一つの正解と言えるかもしれない。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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