“1+1=2以上の力を生み出す「コラボ力」”をテーマに、業種や組織の垣根を取り払って新規事業にチャレンジし、結果を出しているオープンイノベーションの取り組みを紹介するオンライン・セッション「CNET Japan Live 2024」。2月26日は「次々と共創を生み出す”QUINTBRIDGE”流『コラボ力』とは!?」と題し、年間400回以上の共創イベントを開催するNTT西日本のオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」の運営を担当する宮永峻資氏、洞桐健人氏、今田梓氏、村山七海氏に話を聞いた。
大阪京橋にあるNTT西日本本社の敷地内に設立されたQUINTBRIDGEは、数字の100京を意味するquintillionとbridge(橋)から付けられ、ここから次々と共創を生み出すことで社会課題解決や新規事業の創出に貢献するという意味が込められている。2022年3月の開業から法人会員約1200組織、個人会員約1万7000人を超えるコミュニティに成長し、年間で400回以上の共創イベントが開催されている。
法人、個人会員ともに幅広い業種、業界、年齢が参加しており、自治体や病院経営者、中学生も登録している。入会金、年会費、イベントの開催はすべて無料だ。学ぶ、つながる、共創するという3つの軸で様々なイベント・プログラムを提供し、会員同士のマッチングや交流会も含めて毎日1~3回ほどイベントを開催しているが、その約8割が会員の持ち込みによるものである。延べ利用者数は累計14万人を突破し、平均して1日で約300名が来館している。
開設1年目から現在までに、会員数は約2倍に増えた。コミュニケーターも含めてさまざまな経験を持つ面白い人たちがたくさん集まっている。さらに、貸し切りや会議などでの利用はできず、共創を目的としたオープンなイベントだけを開催して参加しやすくし、にぎやかな空間が、よりギバー精神/共創意欲の高い人たちが集まる好循環を生み出している。
コラボイベントの企画運営などを担当する村山氏は「レゴを使ったワークショップやその場にいる人たちと気楽につながれるコーヒーミートアップなど、初めての方でも参加がしやすく、参加者同士のつながりや交流が生まれるイベントも企画・提供している」と説明する。
広報とブランディングを担当する今田氏は、「QUINTBRIDGEでは『Self-as-We』という考え方を施設理念として運営しており、NTT西日本のための共創施設ではなく、社会課題を中心に置き、解決したい思いを持つ会員同士が自由に交流し共創する場であるというところに非常に共感いただいている」という。また、施設や会費を無料にする代わりに、共創を作るアセット、課題、アイデアなどを持ち寄ってもらい、オープンにしていくことで共感が生まれ、人が集まる仕組みを生み出すことが、QUINTBRIDGEのユニークさにもつながっている」と話した。
また、「Self-as-We」を実現するための行動指針として以下の5箇条を会員と共有することで共創活動の促進を図っている。
その結果、「全体としてギバー精神という言い方をしているが、自ら主体となって社会課題を解決したいという思いを持つ会員が多く集まり、核となり、質のいいイベントやつながりができていると思う」と話す。それが口コミやSNSで輪を広げ、会員が増えたのではないかと分析している。
QUINTBRIDGEのコラボレーション力といえば、多様なバックグラウンドを持つコミュニケーターの存在も欠かせない。QUINTBRIDGEとしても様々なイベントやワークショップを主催・共催で実施しており、インタビューやワークショップ、インタビューなどの設計もコミュニケーターが実施。それらの映像配信まですべて内製化していることから、相談を受けた時にその場で回答できるという。多彩なバックグラウンドを持ち、つねに新しいことにチャレンジする精神を持つコミュニケーターが10名以上所属しており、幅広いサポートができることも強みとしている。
その他のオープンイノベーション組織やVC、地域金融機関など60組織と連携。イベントの連携や事業創出に関する相談、資金調達支援などを行いながら、幅広い共創の機会を生み出している。つい先日も大手製造企業との連携を目的としたリバースピッチ大会を開催したり、スタートアップと実証実験をしたりしたという。
会員やNTTとのコラボを担当する宮永氏は、自治体との共創にあたり「その自治体ならではのピンポイントだけれど非常にわかりやすい、ここでしか見つけられない課題に出会える。一緒に何かできる具体的なことを思いつきやすくなるよう工夫している。課題の本質や、誰と誰をつなげば共創が生まれそうなのかといったところに関しても、コミュニケーターが介在しているのがポイント」と説明する。
方法もいろいろあり、沖縄の自治体とのコラボでは、一泊二日で現地に行き、インタビューをした上で社会課題を解決するワークショップを実施している。「参加者に水槽を使うアーティストの方がいて、産業廃棄物としてコストをかけて捨てていた赤土でアートを作る、というアイデアにつながった」(宮永氏)
さらにQUINTBRIDGEでは、社内にも目を向けてしっかりと巻き込みを行っている。「Shining Startup」というテーマに沿って複数のスタートアップが登壇するピッチイベントでは、参加者の半数がNTT西日本のグループ社員だという。また、NTT西日本グループとスタートアップのアセットを掛け合わせて新たなプロダクトやビジネス、ユースケースを作るBussiness Match-up!やFuture-Buildというプログラムも実施している。
共創プログラムの企画や運営を担当する洞桐氏は、「イノベーション戦略室としても各事業部に対してキャラバンを行い、共創できるアセットを探す、対話するといったことに、非常に長い時間をかけている。書類審査があるプログラムでは事業部の幹部層の方にも出ていただいてコミットを強めたり、共創、ブランディング、人材育成の3つの軸で四半期に1回ぐらいレポーティングしたり、実績を作って視える化をしていくことも重点的にやっている」と説明する。その影響もあってか、NTT西日本はイノベーティブ企業ランキングで順位を上げている。
3月22日に開催される2周年イベントでは盛りだくさんのプログラムが用意されており、2年間の共創事例も紹介される。登壇した4名は「この機会に関西以外の方もQUINTBRIDGEを訪れて、どんな場所か、どんな会員がいるのか、現地に来て感じてほしい」と参加者にメッセージを送り、セッションを締めくくった。
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