Amazonの「Echo Hub」(180ドル、日本では2万5980円)が発売された。Echo Hubは、スマートホームのためのシンプルなコントロールパネルだ。スマートホーム市場をけん引するAmazonの音声アシスタント「Alexa」に対応し、家の中にあるさまざまなスマートデバイスを簡単に操作できる。広告も表示されない。複数の監視カメラの画像を表示できるスナップショット機能などは反応が遅いと感じたり、不具合が生じたりすることもある。現在のところ、スナップショット機能で表示できるのは「Ring」カメラで撮影した画像のみだが、将来的には他のカメラの画像も表示できるようになるという。
筆者を含めて、自宅のスマートホーム化を積極的に進めている人たちは、家のあちこちにあるスマートデバイスを操作するために、何種類ものアプリをスマートフォンに入れ、使い分けなければならないことにうんざりしている。スマートデバイスの新規格「Matter」の登場は、この手間を減らす役には立つが、問題を完全に解消できるほどにはまだ普及していない。
そのため、スマートホームの住民たちは、家の中のスマートデバイスを簡単に操作できるスマートディスプレイを探し続けてきた。技術に精通した人なら、古いタブレットを壁に取り付けてスマートホームのコントロールセンターにできるかもしれない。しかし、たいていの人はAmazonの「Echo Show」やGoogleの「Nest Hub」といった、スマートデバイスの操作機能を備えたスマートディスプレイを導入した。
しかし、スマートディスプレイも完璧ではない。Echo Hubがスマートディスプレイと違うのは、スマートデバイスの操作に特化しているところだ。Echo Hubは、この特徴によってスマートホームの操作をめぐる長年の課題を解消しようとしている。
Echo Hubには余分な機能がない。土台部分に空間オーディオスピーカーが仕込まれているわけでも、超高解像度の映像をストリーミングできるわけでもない。スタンバイ中に広告が流れることもない。Echo Hubはスマートデバイスのハブ、スマートホームのコントローラーという役割に徹している。
この1週間、自宅でEcho Hubを使ってみたが、これまでにないスマートホームを体験できたと感じている。Echo Hubの操作画面は、カテゴリーとウィジェットを軸に設計されている。ホーム画面のざっと3分の2を占めるのはウィジェットだ。画面の左側には「定型アクション」とスマートデバイスのある部屋が表示され、画面下部にはスマートデバイスの用途がカテゴリー別に表示されている。ホーム画面に表示されるウィジェットはカスタマイズ可能で、ウィジェットストアから好きなものをダウンロードして追加できる。
Echo Hubは8インチのタッチディスプレイを搭載しており、壁に取り付けるか、スタンドに立てて卓上に設置できる(専用スタンドは日本では未発売)。筆者は以前からタブレットを壁にかけてスマートパネルのようにしたいと考えていたので、壁かけを選んだ。
Echo Hubは、Alexa対応のスマートホーム用コントロールパネルだが、その名が示す通り、Wi-FiやBluetooth、Zigbee、Matter、Thread規格に対応したスマートデバイスも横断的に操作できる。
Amazonの製品ラインには、すでにスマートディスプレイのEcho Showが存在するのに、なぜEcho Hubを開発したのだろうか。Alexa対応のスマートデバイスは多く、Alexaが実現するスマートホームネットワークは、直感的に操作できるスマートホーム自動化システムとして急速に普及しつつある。実際、スマートデバイスの中でもAlexa対応製品は最も数が多く、Alexa搭載デバイスの販売台数は1億台を突破している。
スマートホームにAlexa対応デバイスを設置すると、Alexaアプリがすばやく自動で認識し、スマートホームのネットワークに追加する。ユーザー側でする作業はほとんどない。しかも、Alexaに対応してさえいれば、どのメーカーのデバイスでもEcho Hubから操作できる。デバイスに「Alexa対応」と書かれていれば、Alexaアプリ、Alexa、そして今後はEcho Hubでも簡単にセットアップし、操作できるのだ。
筆者の家にも多くのAlexa対応デバイスがある。Echo Showは3台、Echoスピーカーは4台だ。もともとはAppleのスマートホームプラットフォーム「HomeKit」を導入しており、最初はAlexaをAppleの音声アシスタント「Siri」と比較する目的でEchoスピーカーを導入した。続いてキッチン用にEcho Showを買い、夕食の準備をしながら音楽を聴いたり、ニュースを観たり、スマートデバイスを操作したりするようになった。Echo Showにはディスプレイがついているので、カレンダーの閲覧やスマートホームの管理も便利になるのではないかと思っていたが、この点は期待外れだった。Echo Hubのいいところは、宣伝文句通り、スマートホームの管理とスマートデバイスの操作を効率化してくれることだ。
筆者はEcho Showを毎日使っているが、その中で気付いた欠点についても率直に指摘してきた。特に気になるのは、スタンバイ中に表示される情報をコントロールできないこと、Alexaが筆者の指示を理解してくれる確率が8割程度であること、ハードウェア自体の動きが鈍く、反応に遅延があること、YouTubeをはじめ、ブラウザーが必要なアプリは音声操作が非常に難しいこと、スマートホームの操作がメインの機能ではないことだ。
Alexaは対応デバイスが多く、接続も安定している。定型アクションも使いやすい。認めたくはないが、わが家ではAppleの「Home」アプリよりAlexaを使う頻度の方が高い。Echo Hubを壁に取り付ければ、この利便性をいつでも気軽に利用できる。定型アクションの実行も、Ringアラームの解除も、防犯カメラの映像の確認や1階の空調の調整も楽々だ。夜、2階の寝室に上がりながら照明のオン・オフも操作できる。
Echo Hubのセットアップでは、Alexaに音楽の再生を頼んだ際に、家の中のどのEchoデバイスで再生するかも指定できる。これも他のEchoデバイスにはない、Echo Hubならではの機能だ。この機能が示しているように、Echo HubはEchoスピーカーに取って代わるものではない。家の中で、特に家のあちこちで音楽を聞きたいならEchoスピーカーを導入する必要がある。
自宅をスマートホーム化している多くの人と同じように、筆者もプライバシーやセキュリティ面の懸念から、AlexaやAmazonを完全には信用していない。Echo Hubはデータをローカルで処理しているわけではないことを考えれば、なおさらだ。どの企業も消費者のプライバシーを重視していると口をそろえるが、個人情報に関する限り、この主張を文字通りに受け取ることはできない。
Echo Hubこの記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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