イトーキは2月14日、オフィスの移転やリニューアルする顧客向けに、オフィス内のセンシングデータなどを活用し、オフィス構築とその運用を伴走型で支援するコンサルティングサービス「Data Trekking」を発表。同日からサービス提供を開始した。
従来型のオフィスは、働く人が1カ所に集まることで効率的に業務を遂行し、その管理を行うための場所となっていたが、近年では、経営ビジョンを具現化し、従業員のエンゲージメントやWell-Beingを高め、チームのコミュニケーションを促進しながら、イノベーションを創出する場へと役割が変化。背景として、社会情勢やビジネス環境の急激な変化や働き方、多様性の拡大、人口変動による人材確保などの課題があり、これらの変化に対して高い適応力を持つオフィスは、人的資本経営の重要な一要素になっているという。
状況や目的に応じた働き方と、それを支える働く環境という2つの間の良好な関係性が生産性向上のカギとなっている一方、最適解を求めるとオフィスリニューアルは短いサイクルになり、オフィスのマネジメントの難易度が上昇する。今回のData Trekkingでは、働き方と働く環境をデータでとらえ、その関係性をモニタリング。ミスマッチを早期に発見、予知するとともに、分析結果とオフィスデザインの知見を掛け合わせることで、オフィスの継続的なアップデートを伴走型でサポート。常に状況に適したアジャイルなオフィスの構築と運用を可能にするという。
オフィスデータについては、データを収集、統合、活用するための独自プラットフォーム「ITOKI OFFICE A/BI PLATFORM」を基盤として、スペースの稼働データや組織サーベイデータ、レイアウトデータ、そのほか顧客が保有している指標データなどを集積し、分析を行う。データの取得は、ビーコンによる位置情報を活用した“働く”の見える化ができるアプリケーション「Workers Trail」と、独自開発のクラウド型組織サーベイで個人と組織のパフォーマンスとコンディションを可視化できる「Performance Trail」の2種を主に活用する。
サービスの特徴であり目的ともなるのは、オフィスリニューアル前では、実施後の成功確度を高め、オフィスリニューアル後には効果を最大化すること。前者であれば、オフィスの利用状況をデータで捉えることで、レイアウト設計や運用ルール策定に反映。後者であれば、再度データを継続的に収集し、レイアウト調整や運用ルールの見直しを提案するという。
同社では、ITOKI OFFICE A/BI PLATFORMを基盤に展開する各種サービスの総称を、「ITOKI OFFICE A/BI SERVECE」とし、今後はData Trekkingを含む複数のサービスやアプリケーションの展開を予定。オフィス構築や運用の品質を高め、顧客の人的資本経営の推進をサポートするという。
発表にあわせて実施した説明会では、イトーキ 常務執行役員 スマートオフィス商品開発本部長の長尾和芳氏が、イトーキとして生産性を高めるフレキシブルなワークスタイルの提案に取り組むなか、昨今では環境の変化が大きく急激になっているため、オフィスにおいても人の活動やニーズの変化に合わせて同時に最適化アジャイルなアプローチしなければ、よりよいオフィスを作ったとしても生産性があっという間に下がってしまう状況があると指摘した。そのうえで、重要になるのがデータであり、働き方と働く環境をデータでとらえ、ミスマッチを早期に発見、予見し、改善をしていくという新しいプロセスが必要と説明。そして「オフィスは作ったら終わりではなく、作ってからが本番。永遠に完成しない、データをもとに進化し続けるアジャイルなオフィスは、私たちが考える次なるオフィスの形」と語った。
サービスについて説明を行ったイトーキ スマートオフィス商品開発本部 ソリューション開発統括部ビジネス開発部 部長の藤田浩彰氏は、オフィスにおけるこれからについて「作ってからが本番」「激しい変化に常時アジャスト」「データを基に決定」「作る前にシミュレート」という言葉をあげ、イトーキとしてこれらを当たり前にしていきたいと意気込みを語る。またオフィスに関するデータの収集や可視化をするプレーヤーはすでに多数あるものの、実際に専門家が評価、施策の検討、実行するという、インプリメントまでを一貫して行うサービスは新しいアプローチだと付け加えた。
イトーキ 代表取締役社長の湊宏司氏も登壇。湊氏は日本オラクルに在籍した経歴を持っているなか、その当時から“オフィスはなんのためにあるのか”を考え、突き詰めると生産性を上げるためであり、イトーキとしても長年そのことを考えてきた会社であると説明。一方で、生産性向上にはITが不可欠となっているなかでも、オフィス什器の世界はIoT化が進んでいない現状があり、生産性を上げるためのオフィスと、それを構成するコンポーネントであるオフィス什器が一切IoT化されていないことが課題と指摘。データドリブンで生産性が高くなるオフィスを作っていくための第1弾となるのか、今回のData Trekkingであると語った。
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