ソフトバンクG、5四半期ぶり黒字はアーム・Tモバイルが貢献--孫氏は不在も「とんでもなく忙しい」

 ソフトバンクグループは2月8日、2024年3月期 第3四半期決算を発表。売上高は前年同期比2.6%増の5兆19億円、純利益は前年同期比から約1兆7000億円増加の9500億円となった。

 2024年3月期の累計は4587億円の赤字ながらも、ソフトバンクG 取締役 専務執行役員 CFO 兼 CISOの後藤芳光氏は、「久しぶりの四半期ベースの黒字で、少々ほっとしている」と話した。

2024年3月期 第3四半期の業績サマリー 2024年3月期 第3四半期の業績サマリー
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ソフトバンクG 取締役 専務執行役員 CFO 兼 CISO 後藤芳光氏
ソフトバンクG 取締役 専務執行役員 CFO 兼 CISO 後藤芳光氏
  1. 投資損益改善で念願の黒字に
  2. スプリントと合併のTモバイル、アームが貢献
  3. 孫正義氏の近況は

投資損益改善で念願の黒字に

 5四半期ぶりの黒字をけん引したのは、過去4四半期連続で純損失となっていた投資損益。4246億円となり、前年同期比で約9362億円を改善したことになる。

 なお、同社の投資損益は、本体の投資事業となる持株会社投資事業、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)によるSVF事業、その他に分類できるが、今回はSVF事業が大きく貢献している。

投資損益の内訳 投資損益の内訳
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スプリントと合併のTモバイル、アームが貢献

 ソフトバンクGは12月28日、Tモバイル株式4880万株(1兆1000億円相当)を無償で取得。2020年4月1日に完了した米T-Mobileと、ソフトバンクG傘下の米スプリントの合併取引の対価の一部となる条件付対価の条件が、12月22日に充足(アーンアウト条項)したという。

 後藤氏は、「スプリントの買収発表以降、各方面からさまざまなご懸念をいただくなど、随分長いこと苦労した。この合併は当初からもっていたアイデアだが、実現までだいぶ時間がかかった。新生Tモバイルは時価総額で世界一のキャリアとなり、大型のインフラ案件としてはよい投資になった」と話す。

新生Tモバイルの時価総額は世界最大に 新生Tモバイルの時価総額は世界最大に
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 同社が重要な指標として位置付けるNAV(時価純資産)やLTV(純負債を保有株式価値で割ったもの)、資金の手元流動性といった指標は、軒並み好調とアピールする。LTVは11.5%と低水準を維持、手元流動性は高水準を維持しており、順調な様子を見せた。

重要指標と位置づけるNAV、LTV、手元流動性 重要指標と位置づけるNAV、LTV、手元流動性
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 NAVは、為替の影響で約1兆1000億のマイナスがあったものの、株価が4兆2000億円のプラスとなり、計2兆8000億円の増加。Tモバイルのほか、特にアームの貢献が大きいという。後藤氏は「アームの株価は、上場来高値となる78ドル超にもなった。公開時点の株価は51ドルで、短期間で54%増加したことになる。パフォーマンスとしても素晴らしいが、世界のAIの発展に最も貢献できる会社であると信じている。今後の発展にわれわれ自身が最も期待している」と話す。

アームの株価変遷 アームの株価変遷
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アームの投資実績 アームの投資実績
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 SVF事業は、直近3四半期連続の黒字となった。「確かに2年、非常に厳しい時期があったが一安心。2年間着実に、着実に改善を積み重ねた」と安心する様子を見せる。累計では未だマイナスながら、合算損益が黒字化に転じる瞬間は近いと語る。

SVF事業の四半期投資損益 SVF事業の四半期投資損益
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SVF事業の累計投資損益 SVF事業の累計投資損益
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 SVF事業は、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド1」(SVF1)、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」(SVF2)、「ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド」(LatAmファンド)に大別できるが、ともに好調だ。SVF1は特にByteDanceが好調で、分散投資傾向のあるSVF2は株価上昇、資金調達ラウンドによる評価額上昇などが要因にあるという。

SVF事業の投資損益内訳 SVF事業の投資損益内訳
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SVF2の投資損益内訳 SVF2の投資損益内訳
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未公開投資先の資金調達状況も紹介した 未公開投資先の資金調達状況も紹介した
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 後藤氏は、アームの好調などに付随した効果として、アリババ依存からの脱却、AIへのシフトなどがあると説明する。

 「われわれの資産構成は直近5年ほど、どうしてもアリババ中心だった。かなりシフトが進み、プロジェクトとしては“まとまったかな”という段階」という。実際に、2019年末時点の保有資産の半分をアリババが占める状況から、2023年末には0.02%まで改善。アームやSVF、Tモバイルに通信会社としてのソフトバンクなど、多様な構成へと変化している。

保有資産構成の変化 保有資産構成の変化
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 また、いずれもAIでの中心となる企業、またAIを活用する企業であるため、AIへのシフトが進み、地域という観点で見た場合の中国集中というリスクも緩和していると加えた。

AIシフトが進んでいると表現 AIシフトが進んでいると表現
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地域構成でも集中リスクを回避 地域構成でも集中リスクを回避
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 後藤氏は、アームの具体的な状況についても紹介。ルネサス エレクトロニクス、MediaTek、Microsoftといったさまざまな業界リーダーとの戦略が進み、チップの累計出荷数は2023年9月までに2800億個を超えたという。

 売上高としては引き続き過去最高で、四半期のロイヤリティー収入も過去最高となった。四半期調整後の営業利益は前年同期比で17%増、今後の業績も堅調な推移を予想しており、売上高通期ガイダンスも上方修正している。「かなり大きな情報修正を、自信を持って発表してくれている」(後藤氏)と、満足げに話した。

 また、更なる成長を見込める背景として、チップの出荷数増とロイヤルティー単価の上昇による「ロイヤルティー収入」、開発コストを削減できる「サブシステムによる成長」、「AI需要の拡大」、「世界最大級のネットワーク」という4つを紹介。AIがあらゆる場所に必要となるとともに、AIにはアームが不可欠というアーム CEO レネ・ハース氏の言葉を引用し、さらなる成長への期待を口にした。

アームには世界最大級のネットワークがあるという アームには世界最大級のネットワークがあるという
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孫正義氏の近況は

 後藤氏は、代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義氏について、「毎日、とんでもなく忙しく過ごしている。会社には来ている。皆さんの前での最後のコメントはアームの成長やAI化だったが、実際にそういった壮大なテーマに取り組んでいる」とし、会見などの場に登場する機会を楽しみにしてほしいと語った。

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