ソフトバンクグループは11月9日、2024年3月期第2四半期決算を発表。売上高は前年同期比1.4%増の3兆2271億円、純損益は1兆4087億円の赤字決算となった。
赤字は依然、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を中心とした投資の損失によるところが大きい。ただ、同日に実施された決算説明会に登壇したソフトバンクGの取締役専務執行役員 CFO兼CISOである後藤芳光氏は、「金額だけ見ると昨年同期と比較して同じレベルに見えるが、内容はだいぶ変わっている」と話す。
実際、2022年上期のSVFの投資損益はおよそ4兆3000億円で、アリババの株式に関する一時益があったことで8496億円にまで抑えたという。2023年は9636億円の投資損益のうち、SVFの損益は5833億円にまで縮小したとのことだ。
一方で、同社が重要な指標として位置付けるNAV(時価純資産)やLTV(純負債を保有株式価値で割ったもの)、資金の手元流動性といった指標は改善が進んでいると後藤氏は説明。経営上問題ないことをアピールしている。
また、今四半期の大きなトピックとしては、英ARMが9月14日に上場したことが挙げられる。ARMの上場時の時価総額は520億ドル、日本円でおよそ7兆8691億円に達しており、3兆3000億円を投資して8兆5000億円のリターンを得ているとのことで、アリババや米スプリントなどと比べても遜色ない投資パフォーマンスを出していると後藤氏は評価。今後のソフトバンクGの戦略上最も重要な存在と位置付けて強化を図っていく考えを示した。
そのARMの四半期業績は過去最高益を記録したほか、2023年6月までにARMの設計をベースとしたチップの累計出荷数が2700億個以上となり「われわれが買収した時の予測とほぼ全く同じ曲線で成長している」(後藤氏)と、ARMの事業が順調な様子を説明。モバイル以外にもクラウドやオートモーティブ、IoTなどの市場で採用が伸びている様子を示す一方、今後については従来クラウドで動いていたARMベースのチップによりエッジで動作し、身近な分野に入り込むことでAIの利活用がより進むのではないかと話す。
課題となっているSVFに関しては、全てのファンドを合わせた投資損益が2億3200万ドル(約351億円)となり、ARMの貢献で伸びているとのこと。後藤氏はまだ厳しい環境が続くと見ている一方、2四半期連続で黒字化できたことで「最悪期を脱したという材料になる」とも話している。
実際、ARMを含むSVF1の累計投資成果はプラスに転じているが、SVFの2号ファンドの累計投資成果は「パフォーマンスを見るレベルに達していない」と後藤氏は評価する。ただSVF2は投資している企業の数が多く、しかも投資を始めてから2〜3年程度ということもあり、当面は各社の価値を上げる作業を進めながら成長を見守りたいとのことだ。
また、業績が回復基調にあることから、AI関連の投資もこの2四半期で再開させているとのこと。「2〜3年前に1兆円くらい投資していたのでだいぶ小さいが、昨年から比べると2〜3倍まで現金が出ている」(後藤氏)とし、ピーク時ほどではないが投資を増やしている様子を示している。
ただ、その割合を見ると、SVFからではなくソフトバンクG自身が投資する割合が増えている。その理由について後藤氏は、ファンドでの投資は経済的なリターンをどう得るかに重点を置いているのに対し、自身での投資はAIが普及する今後のサービスやビジネスモデルを考える上で、重要なパーツとして機能する可能性が高いものに対して実施するとしている。
なお、どちらで投資するかという線引きは「われわれも定義しきれていない」(後藤氏)と答え、幹部による議論の中で決めていく形になるという。また、ファンドはSVF1のように、環境変化によって外部からの資金が入る可能性もあることから、今後も継続していくとの考えを示した。
一方で、そのSVFで投資し、財務面でも支援していた米WeWorkが、11月6日に経営破綻したことが明らかになった。後藤氏は「非常に残念に思うし、会社としては結果を真摯に受け止めて、今後の投資活動に生かしていかなければらない」と話す一方、会社の価値が下がっていることを認識し、保守的に評価していることから、現時点で会計上変化が出る訳ではないとも説明している。
また、WeWorkへの投資に対する、代表取締役会長兼社長執行役員である孫正義の経営責任を問う声について、後藤氏は「彼も意思決定に入っているが、組織として認識すべきテーマだと思う」と話し、孫氏個人ではなく組織的な投資体制の見直しが必要との認識を示している。
ちなみに決算発表と同日には、ソフトバンクGと関係が深いみずほフィナンシャルグループが、グループ企業であるみずほ証券を通じて楽天グループ傘下の楽天証券への追加出資を発表している。みずほフィナンシャルグループが他社グループに接近する動きに対し、後藤氏は「先方は日本を代表する金融機関で、多くの顧客がいる。銀行の判断でやること」と話し、両者の関係性に変化を生じさせるものではないとしている。
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