増収減益のNTT島田社長、ローソンの「dポイント」継続を希望--「irumo」好調もドコモは収入減

 NTTは2月8日、2023年度第3四半期決算を発表。売上高は前年同期比1.5%増の9兆7168億円、営業利益は前年同期比2.3%減の1兆4862億円と、増収減益の決算となった。

決算説明会に登壇するNTTの島田氏
決算説明会に登壇するNTTの島田氏
  1. 電力高騰もNTTドコモ・NTTデータは過去最高の売上高
  2. irumoがNTTドコモのARPU引き下げ要因に--通信品質低下の影響は

電力高騰もNTTドコモ・NTTデータは過去最高の売上高

 同日に実施された決算説明会に登壇した、代表取締役社長の島田明氏によると、営業収入は電力事業を手掛けるエネットの電力調達価格の高騰があった一方で、NTTドコモを中心とした総合ICT事業と、NTTデータを中心としたグローバル・ソリューション事業が伸びて過去最高の売上高を更新したとのこと。

 また、営業利益に関しては、NTT東日本・NTT西日本を中心とした地域通信事業が、コロナ禍による光ブロードバンドや音声通話の需要が一巡したことから厳しい状況にあるが、資産のスリム化や不要資産の撤去などで現在の水準にとどめたとしている。

 今後もセキュリティ対策や能登半島地震からの復旧費用などがかさむというが、ノンコア資産のスリム化や成長分野の拡大、コスト削減の一層の推進などにより通期では増収増益の達成を見込むとのこと。島田氏は、「厳しい環境下だが、連結での利益達成を目指す」と自信を示している。

 なお、能登半島地震の被害額について島田氏は、まだ復旧が途上であり正確な費用を算出できてはいないとしながら、過去の熊本地震などを参考にすると「100億円程度」と回答。競合他社と比べると1桁大きな数字となるが、費用がかさむ理由として島田氏は「固定系(ネットワーク)の方が復旧に費用がかかる」と説明。費用の3分の2は固定通信網に向けたものになるとの見解を示した。

 ただ一方で島田氏は、「東日本大震災の時から、顧客のニーズはモバイル回線の復旧の方が強いと認識している」とも説明。能登半島地震の際にも「モバイルファーストで復旧しようとドコモに指示を出したし、NTT西日本にも携帯4社からの要望を優先するよう(伝えた)」と、モバイル回線の復旧に重きを置いて取り組んだとしている。

 そうしたことからNTT法の見直しに関して議論が進められているユニバーサルサービスのあり方についても、島田氏は「これからのユニバーサルサービスはモバイルファースト、モバイルを中心とした体系を作っていく必要がある」と説明。固定通信よりモバイルに重きを置いてユニバーサルサービスの議論を進める必要性を訴え、ラストリゾート提供義務を負う事業者もNTT東西だけでなく、「もしかすると携帯電話事業者自体がそういう覚悟を持っていく必要があるかもしれない」との見解を示している。

 また、その能登半島地震においては、NTTグループも衛星回線を積極活用して復旧を進めているが、バックホール回線としての活用だけでなく衛星携帯電話の「ワイドスターII」を375台提供するなど、避難所などの公衆電話としての活用も進めている。ちなみに、ワイドスターIIを多く持ち込んだ理由として島田氏は、すぐ音声通話が利用でき、使いやすいのが理由だとしている。

 それに加えて「Starlink」を9台導入、低軌道衛星の活用も進められているが、NTTは衛星通信に関して、スカパーJSATと共同でSpace Compassを立ち上げて取り組みを進めたり、2023年11月にはAmazon.comの「Project Kuiper」との協業を発表したりするなど、1社によらず複数企業のリソースを活用することに重点を置いている様子だ。

 その理由について島田氏は、「その時々で用途によって使い方が分かってくるし、これからさまざまな進化をしていく中で、どういう利便性や特徴があるのか、使うタイミングで見ながらチョイスしてやっていくことが当面必要」と説明。低軌道衛星だけでなく、Space Compassを通じて研究開発に力を入れているHAPSも含め、さまざまな手段にチャレンジして実用的な使い方をしていく必要があるとの認識を示した。

irumoがNTTドコモのARPU引き下げ要因に--通信品質低下の影響は

 NTTの主力子会社であるドコモの2023年度第3四半期決算も同日に発表されており、売上高は前年同期比2.1%増の4兆5188億円、営業利益は1.5%増の9022億円。こちらは増収増益の決算となっている。

 ただ、主力のコンシューマ通信事業は、モバイル通信サービス収入が前年同期比で359億円減と、依然減少が続いている様子だ。島田氏はその理由として「irumo」の好調を挙げている。irumoは競合他社のサブブランドに近い低価格プランであり、提供開始時期が2023年からと遅いこともあって従来プランからの移行がいま積極的に進んでいると見られ、その影響からARPUも「4000円をちょっと切って、今期は3990円になっている」(島田氏)と微減傾向にあるという。

 加えて2023年12月末に、電気通信事業法の一部改正による「1円スマホ」の規制があり、競合他社はその直前までスマホの値下げ攻勢を強めていた。積極的な値下げをしていなかったドコモだが、島田氏は「端末の利益は少し出ているが、必ずしもMNPの成績が良かったというとそうでもない」と回答。ARPUが本格的に反転するのはirumoなどの影響が落ち着いてから、との見通しを示している。

 一方で、通信品質の低下による解約については、「あまりいないんじゃないかと思っている」(島田氏)と回答。コロナ禍明けのトラフィックを読み切れず対応が後手に回ったことを改めて反省する一方で、2023年12月までにネットワーク改善を推し進めるなどさまざまな対策を施したことで今後改善は進むとの見方を示し、「(通信品質で)会見をすることがないよう、これから務めていきたい」と話している。

 また、他社と比べて出遅れている要素としてもう1つ、金融サービスと連携した料金プランの提供が挙げられる。島田氏はその理由について、「元々NTTグループの方針は、従来B2B2Xの“ミドルB”の顧客をサポートしていくのが基本路線だった」と、均等な立場で金融各社のサービスを顧客とつなぐことに注力してきたことを挙げる。

 しかしながら、1つのグループのサービスやアプリで全てのサービスが完結するものを顧客が求めるようになったことで、島田氏は「NTTドコモは少し、その分やや出遅れたのは事実」と回答。そこでマネックス証券の子会社化をするなどさまざまな施策を進めているというが、「まだまだ全然足りない」と話し、2024年度くらいには他社をキャッチアップしたいとしている。

 なお、ドコモを巡っては、同社が出資しているローソンを、競合のKDDIがTOBにより50%の株式を取得、三菱商事と共同運営することを明らかにしている。そこで注目されるのが、1つに保有するローソン株の扱いについてだが、島田氏は「まだ決めていない」と回答するにとどめている。

 そしてもう1つは、ローソンで利用できる「dポイント」や「d払い」などの今後の扱いについてだ。この点について島田氏は「高橋社長(KDDI代表取締役の高橋誠氏)も自分のところ(のサービス)だけに、というのはしないと会見で言っていた」と話し、両サービスともに継続したい意向を示している。

 また、KDDIと同様、コンビニエンスストアの経営に直接参画することについて、島田氏は「同じような戦略を取るかというと、そのつもりはない」と否定。小売りをはじめとしたサプライチェーンのデジタル化をサポートする取り組みは進めていくというが、自ら小売り事業に参入することは考えていないとのことだ。

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