AI無人決済店舗システムを手掛ける「TOUCH TO GO」は2月1日、新プロダクトの「TTG-SENSE SHELF」をお披露目。JR東日本品川駅の改札内イベントスペースにて、期間限定店舗をオープンし、テスト検証を実施することを発表した。
JR東日本スタートアップを母体とするTTGは、2020年3月、JR高輪ゲートウェイ駅にAI無人決済店舗の第1号店となる「TOUCH TO GO」を開業。その後、「ファミマ!!」や「ANA FESTA」などの無人決済店舗を次々とオープンさせ、今では全国140カ所に拡大する。
TTG 代表取締役社長の阿久津智紀氏は、「日本ではセルフレジが広がってきているが、海外では逆にセルフレジを廃止する動きが出ている。万引きの増加や商品をスキャンするのが面倒というのがその理由だが、われわれの無人決済店舗では商品をスキャンする必要がない。コールセンターを設けて遠隔監視もしているので、万引きを防ぐことができる。このサービスを世の中にもっと広げていきたい」と語った。
その言葉通り、TTGの無人決済店舗の一番の特徴は、顧客が商品をスキャンすることなく会計できるところ。それを実現しているのがAIカメラでのモニタリングや、棚の重量センサーなどだ。顧客が手に取った商品を自動で紐付けし、その人がレジ前に立つとそれらの商品を認識して、ディスプレイに商品名や価格などを表示する。
決済はクレジットカード、電子マネー、QRコードのキャッシュレス決済を基本に、オプションで現金決済にも対応。専用のアプリをインストールする必要がなく、交通系ICの電子マネーならカードやスマホをかざすだけと、実にスピーディーに決済できる。
商品を手に取ってから決済まで、スピーディーに完了する
TTGのAI無人決済店舗システムは、約200平方メートルの店舗規模の「TTG-SENSE」をはじめ、約7平方メートルの「TTG-SENSE MICRO」、約15平方メートルの「TTG-SENSE MICRO W」と、店舗丸ごとから小規模店舗まで幅広く対応。MICROやMICRO Wは工事不要で、自販機のようにユニットを組み込む形で無人店舗化できる。
今回、発表したTTG-SENSE SHELFはさらに狭小スペース向けで、レジ1台と棚2本からなる1.96平方メートルという最小ユニット。工事不要で電源さえあれば設置できる。
「多くの企業と接する中で、『店舗を運営するほど商品アイテムが多くない』『商業施設のデッドスペースを有効活用したい』という声を多く聞いた。それに応えたのが今回のTTG-SENSE SHELFで、駅、空港、サービスエリアなど、商業施設の空きスペースなどでも24時間、商品が販売できる」(阿久津氏)と、そのメリットについて説明した。
JR品川駅の改札内イベントスペースで実施されるテスト検証には、カルビー、靴下メーカーのタビオ、「東京ばな奈」を販売するグレープストーンの3社が協業。各社のユニットが隣接する形で設置されている。TTGのこれまでの店舗では入口や出口にゲートが設けられているのだが、ここでは商品が並ぶユニットの前に柵があるだけなので、かなりオープンなイメージだ。
心配される万引きについては、商品を手に取った時点で、「商品を手に取っていただき、ありがとうございます」といったアナウンスが、新たに流れるようにした。商品を持っていることを顧客に認識させるためだ。仮に決済しないまま商品を持ち去ろうとする人がいた場合には、「支払いをしてください」「万引きしないでください」といった厳しい言葉で忠告することも可能。コールセンターのスタッフが直接、話しかけることもできる。
棚の前に顧客が何人いても、それぞれが持つ商品を認識。手に取った商品を棚に戻したり、かばんに入れたりしても、ちゃんと商品を認識する精度を誇る。なお、商品を別の棚に戻した場合は、戻したことが認識されず、手に持っていることになるので注意が必要だ。
また、新たに「AI分析機能」を提供。AIカメラから取得した顧客の行動を特定した動線分析、棚のセンサーによる商品の取得と戻しのデータがわかる棚効率分析など、従来のPOSデータではわからなかった解析が可能。顧客の平均滞在時間や取得点数、来店したものの購入せずに帰った人数もわかるので、購買率などもわかるようになる。
このAI分析機能に魅力を感じたと言うのが、カルビー スペシャリティ事業本部の河合高志氏だ。「画像データからAI分析しているので、将来的にはその画像データが確認できるようになると、顧客の様子がよくわかり、商品作りに役立つのではないかと感じている。個人情報の問題で画像自体を見ることはできないが、POSデータではわからなかった情報が把握できることで、顧客の受け止め方など、商品に対する理解が深まっていくと思う」と言う。
ファッションビルなど、主にアパレルショップが並ぶフロアに出店するタビオのメンズ営業部の高野泰造氏も、「駅で周囲にアパレルショップがない環境で、どれくらいの反応が出るのか、無人店舗で顧客がどれほどスムーズに買い物できるのかなどを検証したい」と語る。
駅や空港、高速道路のサービスエリアなどでお土産を展開するグレープストーンでは、「営業時間が限られる有人店舗と違って、無人店舗であれば早朝や深夜でも営業できるので、これまで購入できなかったという人にも購入してもらえるチャンスが広がる。可能性が広がる取り組みなので、その効果を検証したい」と、営業本部の山上陽平氏。
各社それぞれの考えがあるものの、いずれの企業も口を揃えて言うのが、人手不足の問題だ。販売箇所を増やしたくても、そのための人員確保が難しい。今後はさらに人手不足が加速するので、無人店舗という新たな可能性が広がる取り組みに賛同したと言う。
JR品川駅のテスト検証は2月1~6日の7~21時まで、6日のみ20時まで。TTGでは現在、化粧品メーカーのオルビスと無人店舗の「ORBIS Smart Stand」を運営するが、商品の補充や発注などの品出し、メンテナンスなどの業務にも対応している。TTG-SENSE SHELFでもこれら品出しなどの業務にも対応できる準備を整え、6月頃にTTG-SENSE SHELFの発売を予定する。
TTGのAI無人決済店舗システムは人手不足の対策として効果を発揮できるのか。狭小スペースでも展開できるTTG-SENSE SHELFがメーカーの販路拡大につながっていくのか、今後の動きに注目したい。
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