2023年を象徴する2つの画期的テクノロジー:この10年で最も革新的な1年に

Jason Hiner (ZDNET.com) 翻訳校正: 中村智恵子 吉武稔夫 (ガリレオ)2023年12月18日 11時35分

 この10年、テクノロジー業界で大きな話題となったことと言えば、各国政府が技術系大手企業に監視の目を向けるようになったことと、「iPhone」などの象徴的な製品が繰り返しアップグレードされたことだ。しかし4Gの普及によって「Uber」や「Airbnb」といったリアルタイムアプリケーションが次々と生まれるようになる以前から、テクノロジー業界で大きな話題を占めるのは新しい革新的技術だった。

Apple Vision ProとChatGPT
提供:Jason Hiner/ZDNET

 2023年は2つのブレークスルーが話題をさらい、これまでとは異なる年になった。

1. 「ChatGPT」と生成AI

 厳密に言えばChat GPTが誕生したのは2022年11月だが、多くのイノベーションと人工知能(AI)に対する強い関心を引き起こした。その動きは2023年を通じて止むことなく、この1年で最大の話題なった。

 ChatGPTの最大のブレークスルーは、テクノロジーをより人間らしく感じられるようにしたことだ。コンピューターに話しかけて最適な結果を引き出すのに必要な特定のフレーズや構文を覚えなければならないGoogle、インターネット、その他の検索と異なり、ChatGPTには人と会話しているのと同じような自然な言葉で質問できる。返ってくる結果は驚くほどに優れていて役立つことが多く、全世界を席巻した。ChatGPTユーザーは公開から1週間足らずで100万人を超え、2カ月後の2023年1月にはアクティブユーザーが1億人を超えた。現在では2億人に迫っている

 ChatGPTは人間のように説明するのが上手なため、実際の能力以上のことができるのではないかと思わせることがある。さらには、「スタートレック」のDataのようなSFのAIのように驚くほど賢いのではないか、あるいは「ターミネーター」「アイ,ロボット」などの映画に出てくるAIのように恐ろしいものなのではないかとさえ思わせることもある。しかし、ChatGPTは質問を理解し、一般公開されている膨大なデータを素早く検索して、返答する時に人間が話しているかのように真似ることが得意なだけだ。

 このテクノロジーの背後にある真の魔法は、それを支える大規模言語モデル(LLM)から生まれる。これこそが生成AI(対話型AI)を実現する技術だ。ChatGPTを支えるLLMはOpenAIの「GPT-4」だが、現在では他にも多くのLLMがあり、そのことも2023年を語る上で大きな部分を占めている。ChatGPTと競合する「Bard」に搭載されているGoogleの「Gemini」は最も新しいLLMの1つだが、Meta Platformsの「Llama 2」やAmazonの「Olympus」といった他のLLMは、ChatGPTの競合になる可能性を秘めているだけでなく、他の目的での利用も想定したLLMだ。

 もちろん、LLMと生成AIの用途は単なるチャットボットの作成にとどまらない。他の使い方としては、以下のようなものがある。

  • OpenAIの画像生成AIツール「DALL・E」を利用した、アイデアからAI生成画像の作成
  • 調査報告書や法的契約書といった大量の文書の要約
  • マーケティングのための感情分析
  • ソフトウェア開発者のためのコード記述支援と自動化
  • 一般的な文書の草稿作成支援
  • ある言語から別の言語へのテキストの翻訳

 ただし、ここでは表面的なことを取り上げているに過ぎない。LLMは高速化し、効率性が高まり、さらに有能になっており、今後LLMを利用して対処することになる問題の数は飛躍的に増えるだろう。

2. Appleの「Vision Pro」とAR/VRの新時代

 メタバースは2022年、仮想通貨市場の暴落とメインストリームの消費者全体における関心の低さによって燃え尽きたかもしれないが、2023年になって、その灰の中からはるかに興味深いものが生まれた。それは、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)における次世代の3次元体験に対する関心の大々的な復活であり、その主なけん引役となったのがAppleだ。

 同社は6月に開催した年次開発者会議「Worldwide Developers Conference」(WWDC)で、開発に7年をかけたという複合現実(MR)ヘッドセットVision Proを発表した。強力なコンピューターに接続されていないスタンドアローンの消費者向けヘッドセットでは見たことがないようなMR体験の品質と迫真性に、開発者コミュニティー、テクノロジーアナリスト、メディアは大いに沸いた。実際、AppleはVision Proをモバイルデバイスとは呼ばず、新しい種類のコンピューター、「空間コンピューター」と呼んだ

 筆者はWWDCでVision Proを実際に使ってみた後、こう書いた。「AppleがVision Proによって成し遂げた画期的な進歩は、テクノロジー、生産性、エンターテインメントを今後10年にわたって再定義していくだろう」

 Vision Proの発売はまだ数カ月先のことだが、この見方は変わっていない。筆者は何年にもわたってさまざまなAR、VR、MRのヘッドセットを試してきたが、初めて使ってみた後で、すぐにまた使いたくてたまらなくなったのはVision Proが初めてだ。その体験がとてもリアルで魅了されたからだ。

 もちろん、Vision Proは価格が3499ドル(約50万円)もするため、初代モデルを使う人は限られる。しかし、この製品は新たなレベルのMR体験に向けた扉を開くものであり、はるかに多くの消費者が試してみたいと思うようになるだろう。

 ChatGPTとApple Vision Proはともに、「iPhoneモーメント」を私たちに与えてくれたかもしれない。つまり、その後に現われるものを定義し、まったく新しい世代の製品と体験を生み出す新製品が登場した可能性がある。これは時が経てば明らかになるだろう。いずれにせよ、両者がここ数年欠けていた楽観主義とエネルギーをテクノロジー業界に注入したことは明らかだ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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