Wikipediaの2023年閲覧回数トップ記事は「ChatGPT」--これが良いことだと思う理由

Gael Fashingbauer Cooper (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年12月21日 07時30分

 「Wikipedia」は12月、2023年に英語版Wikipediaで最も閲覧された記事のトップ25を発表した。いつものように、このランキングは時勢をよく反映している。

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提供:NurPhoto/ Getty Images

 映画「バービー」(13位、閲覧回数1800万回)や、歌手のTaylor Swift(12位、1940万回)など、想像に難くない記事が並ぶ中、4940万回もの閲覧数を獲得して1位となったのは、「ChatGPT」だ。ChatGPTは、OpenAIによって開発されたチャットボットで、1年あまり前の米国時間2022年11月30日にリリースされた。応答内容も賢く、人間のように会話を続ける能力を有していたことから、世間の注目を集め、さまざまな議論を巻き起こした。そうした状況は、リリースから12カ月経った今でも続いている。

 世の中に存在する生成AIチャットボットは、なにもChatGPTだけではない。Microsoftの「Bingチャット」(現在は「Copilot」)やGoogleの「Bard」もあれば、Anthropicの「Claude」などもある。

 とはいえ、人工知能(AI)について考えるとき、多くの人の基準となったのはChatGPTである。おそらく、1年前と比較すると、誰もがAIについて考えることがはるかに増えているはずだ。だからこそ、無料のオンライン百科事典であり、非常に人気の高い情報源でもあるWikipediaで、ChatGPTの記事が閲覧数ランキングの1位に輝いたのだろう。学生の場合は宿題を助けてくれるツールとして、スポーツや映画のファンは気になるちょっとした疑問の答えを見つけるために、求職者は就職先候補の企業について調べるために、Wikipediaを使用している。手当たり次第に記事を閲覧していった結果、気がついたら何時間も経過していた、という事態に陥ることも珍しくない。CNNに提供されたデータによると、Wikipediaの2023年の閲覧数はこれまでに840億回を突破しているという。

 ChatGPTが1位になったという事実は、この生成AIツールが2023年の時代精神に非常に大きな影響を与えたこと、そして、ChatGPTとはどんなもので、何をするものなのかについて、人々が今もほとんど理解していないことを明確に示している。

1年で圏外から一気に首位へ

 ChatGPTの閲覧数の伸びはすさまじかった。2022年に最も閲覧されたWikipedia記事のランキングには、ChatGPTは当然ながら入っていなかった。その時点では、リリースされたばかりだったからだ。そもそも2022年のランキングには、AI関連の記事は1つも含まれていなかった。

 ChatGPTの記事は、Wikipediaで最も長い記事ではないものの、脚注が200以上も付けられており、複雑な内容になっている。記事の構成としては、ChatGPTの概要を説明して、成り立ち(ちなみにChatGPTは2023年1月までに1億人以上のユーザーを獲得し、現在では1億8000万人を超えている)を少し紹介し、機能や訓練、評判について解説している。

 ChatGPTのGPTとは、Generative Pre-trained Transformer(生成的な事前訓練された「Transformer」)の略だ。膨大な量のデータを使って訓練されたそのAIが、ChatGPTの基盤となっている。

 ChatGPTの基礎を成す訓練については、論争が巻き起こっている。「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作者であるGeorge R. R. Martin氏をはじめとした複数の作家が、ChatGPTの開発元であるOpenAIを提訴している。自分たちの作品が訓練に使用されていることは著作権の侵害に当たる、というのが原告側の主張だ。

ChatGPTとWikipediaに通じるもの

 ChatGPTがWikipediaで最も閲覧された記事のランキングの1位になったというのは、面白い。なぜなら、このふたつには、さまざまな類似点があるからだ。ユーザーは、対象のトピックについて何も知らなくても、ChatGPTやWikipediaを使用して、情報を得ることができる。人々が両者を利用する理由はそこにある。この2つは出発点となるからだ。一方で対象のトピックについて深い知識を持っている人は、情報の範囲を絞り込んで、Wikipediaで特定の記事を閲覧したり、ChatGPTに具体的な質問をしたりできる。

 Wikipediaの記事は、人間の編集者によって作成されており、出典も明記されている。意図的かどうかに関係なく、Wikipediaの記事には、誤った情報が含まれていることもある。このことは、物議を醸していた著名人が亡くなった後、その人物の記事をチェックしてみればよく分かるはずだ。多くの場合、意地悪なジョークや虚偽の説明が追加されている。ただし、そうした書き込みはサイト運営側によって速やかに削除される。

 Wikipediaは基本的な情報をまとめて、より多くの情報を見つける方法を提示することに非常に長けている。

 条件がきちんと整っていれば、ChatGPTでも同様のことが可能だ。例えば、上司や義母にデリケートな内容のメールを送らなければならないとしよう。ChatGPTは、相手のことを知らないので、具体的な情報を盛り込んでその人に合うようにメールをカスタマイズして、受信者に好印象を与えるといったことはできない。しかし、面談を申し込んだり、家族旅行の予定を変更したいといった場合によく使われる基本的な文章を提示することはできる。

 筆者が学生だった頃は、昔ながらの、複数巻で構成された紙とインクの百科事典があった。信じられないかもしれないが、教師たちは、百科事典を参考資料として使うことに厳しい制限を設けていた。学生が論文で百科事典を引用することも好ましく思っていなかったのだ。あまりにも安直で怠惰で、情報に具体性が欠けているというのが理由だった。

 Wikipediaに関しても、多くの教師は同様のルールを設けている。Wikipediaを出発点として、対象のトピックへの理解を深めていくのは構わないが、参考資料にしてはいけない。ChatGPTを同じように使用する人のことを想像すると面白い。つまり、最初のきっかけやアイデアを得るツールとしてChatGPTを使うのは構わないが、AIに学校の課題の作文を生成させて、自分が書いたものとして提出するといったことはやってはいけない。

 ChatGPTはまだ初期段階にあるが、2023年には、5000万人近くの人がWikipediaを使って、ChatGPTについて詳しく学んでいる。おそらく、この数はさらに増えるだろう。

人類の存亡にかかわるリスクも

 ChatGPTに関するWikipediaの記事が本当に面白くなってくるのは、「Use and Implications」(使用と影響)という見出しの文章からだ。

 この記事では、子供たちが学校でChatGPTを使用して不正行為をすることから、ChatGPTが信頼できない情報を返したり、ハルシネーション(幻覚:生成AIがもっともらしい情報をでっち上げること)を起こすことまで、ChatGPTをめぐるさまざまな論争に言及している。実際に、Dictionary.comは米国時間12月12日、AIの文脈で使われる「hallucinate」(ハルシネーションを起こすこと)を同サイトの2023年の単語に選出し、「ユーザーの意図に反する虚偽の情報を生成し、あたかも事実であるかのように提示すること」と定義した。

 AIの強大な力は映画「ターミネーター」のような未来をもたらし、人間がもはや機械を制御できなくなるのではないか、という大きな不安もある。10月にScientific Americanに掲載された記事では、生成AIの急速な台頭に対する不安を表す「AI anxiety」(AI不安)という用語が説明されている。

 多くの人は、AIにやがて仕事を奪われるのではないかと心配している。また、人間が衰退してしまうのではないかという大きな不安を抱いている人もいる。正直なところ、筆者も強いAI不安にさいなまれていることは間違いない。ターミネーターを観たことがあるからだ。それに、X世代である筆者は、人類が自らもたらす破壊がすぐそこまで迫っているという考えとともに育ってきた。自分たちが接する楽曲や書籍、映画でも、そうした破壊は描かれていた。映画「ウォー・ゲーム」では、主人公の少年がコンピューターに何気なく打ち込んだ指令から、危うく世界全面核戦争に発展してしまうところだった。

 11月に解任された後、1週間もしないうちに復帰したOpenAIの最高経営責任者(CEO)Sam Altman氏は、12月にTrevor Noah氏のポッドキャスト「What Now? with Trevor Noah」に登場した。Noah氏は、生成AIが世界の終わりを引き起こすのではないかという懸念について、Altman氏に尋ねた。

 Altman氏はポッドキャストでNoah氏に対し、「社会には、(中略)安全性の基準とすべきものを集合的に判断するための、乱雑ではあるがかなり優れたプロセスが実は存在する」と語った。「私たちは世界全体として、破滅的なリスク、あるいは人類の存亡にさえかかわるかもしれないリスクが存在することを(中略)直視する必要があると思う。正確に定義できないからといって、無視してはいけない。だからこそわれわれは、それらの問題がどのようなものなのか、いつ起こりそうなのか、そして、どうすれば早期に発見できるのかを予測して測定できるように、懸命に努力しているところだ」

 同氏の答えは、筆者のような心配性の人間にとって、必ずしも安心できるものではなかった。

 Wikipediaの記事では、ChatGPTやAIに関して、こうしたニュアンスを含んだ解説は提供されていないかもしれない。しかし、筆者は、ChatGPTがWikipediaのランキングで1位になったことを強く支持している。発展途上にあるこのテクノロジーの良い点と悪い点、未知の点について、より多くの人が明確に理解すればするほど、より良い方向に進めるだろう。

AIは1年後にどうなっているか

 筆者は、10代の娘とその友人たちに、自分の将来の職業についてあまり心配しなくてもよいと言っている。なぜなら、未来の仕事はこれから生み出されるからだ。

 同様に、ChatGPTが1年後にどうなっているかも全く分からない。おそらく、いくつかの素晴らしい用途が定着しているだろう。また、当然のことながら、人々が望まないChatGPTの機能について、さらに多くの論争が巻き起こっているだろう。

 もし人生が「トワイライト・ゾーン」のエピソードなら、私たちは何らかの方法で2024年にWikipediaで最も閲覧された記事のランキングを先回りして確認し、そこから、世界が2024年の12カ月に経験したことを学べるかもしれない。残念ながらそれはできないので、その代わりに筆者はChatGPTに、2024年にWikipediaで最も閲覧されるであろう記事のランキングを予測してほしいと頼んだ。予想通り、返ってきた答えは漠然としたものだったが、示唆に富んでもいた。

 「それを教えてくれる水晶玉があればいいのですが。未来を予測するのは、少し難しいです。インターネットのトレンドに関する予想の場合はなおさらです。しかし、あえて推測するなら、重大な世界的出来事や科学的発見、テクノロジー分野のブレークスルーに関連したものになるかもしれません。あなたはどのように予想しますか」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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