Sam Altman氏はこの4年間、OpenAIの最高経営責任者(CEO)として非常に目立つ存在だった。2023年に入って「ChatGPT」が爆発的な人気を得ると、同氏はさらに、生成人工知能(AI)ムーブメントの顔としても非常に目立つ存在となった。
米国時間11月17日、そのAltman氏がOpenAIの取締役会によってCEOを解任されたというニュースがIT業界を揺るがした。解任の理由は「Altman氏が取締役会とのコミュニケーションにおいて常に率直とはいえなかった」というものだ。
そこから事態はさらなる展開を見せる。OpenAIに数十億ドルもの投資をしてきたMicrosoftがAltman氏を、OpenAIの共同創業者Greg Brockman氏とともに引き抜いたことを明らかにしたのだ。両氏は今後Microsoftで、同社CEOのSatya Nadella氏が言うところの「新たな先進AI研究チーム」を率いることになるという。
しかし、話はそれで終わらなかった。20日午前にWIREDが報じたところによると、OpenAlの従業員約500人が、取締役会が退陣し、解任されたAltman氏をCEOに再任命しないのであれば退職し、同氏のいるMicrosoftに合流するという内容の書簡に署名したという。
大きな騒動に発展しているが、これはChatGPTと生成AIの未来にとって何を意味するのだろうか。
断っておくが、以下に示すシナリオは、ほとんどが全くの憶測だ。筆者は追加の事実をひそかにつかんでいるわけではない。まず、われわれが知っていることをおさらいしよう。
以上の事実を踏まえて、筆者が考える今後の道筋は以下の3つだ。
この週末、OpenAIは最高技術責任者(CTO)のMira Murati氏を暫定CEOに指名した。その後、Twitchの元CEOであるEmmett Shear氏を暫定CEOに迎えたようだ。少なくとも、同氏のX(旧Twitter)の投稿にはそのように書かれている。
だが、もしOpenAIの開発チームのほとんどがMicrosoftに移ったらどうなるだろう。Microsoftは、今後もChatGPTを統合し続けるだろうか。それとも、OpenAIへの信頼を完全に失うだろうか。OpenAIは、能力の低下が避けられないなかで、現在のインフラを運用していくことさえ難しいのではないだろうか。
部外者である筆者から見れば、このシナリオは悪夢だ。「OpenAIはどうにかうまくやろうとするが、以前と同じように続けることは不可能」というシナリオだからだ。その結果、Microsoftを含むさまざまなライバルに門戸が開かれ、OpenAIがこの数年間見せていた驚異的な勢いは完全にそがれることになる。
このシナリオは、OpenAIの取締役会による一連の動きが、自滅的なミスであったことを裏付けるものとなるだろう。自らつけた傷が命取りになる可能性もある。
このシナリオは、ChatGPTと真っ向から競合するサービスを超高速で開発することを目指す大規模な取り組みにMicrosoftが着手するというものだ。「Copilot(旧Bingチャット)」は本質的に、ChatGPTのAPIを利用してChatGPTの中核技術の外観を変えたものだということに留意してほしい。筆者は、Microsoftはすでにこの分野である程度の研究を進めているとみている。Altman氏と、おそらく同氏のチームをさらに多く迎え入れることで、そうした取り組みが劇的に加速する。
Altman氏とBrockman氏が古巣のOpenAIから持ち出してMicrosoftに引き渡せるものと引き渡せないものなど、知的財産や企業秘密にまつわる問題があるのは明らかだ。
MicrosoftがOpenAIの既存技術を自社の最新サービスに組み込むのにどれだけ力を注いできたかを考えると、このシナリオが特に効果的とは思わない。Microsoftがこうした競合サービスを開発できるのは確かだが、3番目のシナリオと比べると、時間と資源の最善の活用法とは思えない。
MicrosoftがOpenAIの残りの資産を買い取り、今いる取締役を一掃する。OpenAIが今持っている技術のほとんどはすでに「Azure」上で動いているため、インフラの観点から見て、このシナリオは極めて理にかなっていると言えるだろう。
また、リーダーシップの観点から見ても大いに意味がある。MicrosoftはOpenAIの精神的な柱を獲得し、おそらく近いうちに、技術面でのリーダーを迎えることになるからだ。さらに、OpenAIの従業員が離脱を検討しているとすれば、MicrosoftがOpenAIを自社の巨大なポートフォリオに組み込んだとしてもまったく不思議はない。
OpenAIが生き残るには、これが唯一の現実的なシナリオだと筆者は考える。OpenAIが革新的なチームの大半を失えば、とてつもない勢いで進化している市場で、同社は既存の技術を使い続ける抜け殻のような存在となり、たちまちライバルに追い越されてしまうだろう。
だが、Microsoftに取り込まれれば、すでに慣れ親しんだ指導体制の下で、今までのペースを維持し、すでに策定していた計画を継続できる。
MicrosoftがこれまでOpenAIにつぎ込んできた金額を考えれば、他の企業が買収を検討した場合ほど大きな金額は必要ないかもしれない。
これらはすべて、OpenAIの取締役会が大きなミスを犯し、Altman氏が根本的に重大な失態を犯していないことを前提としている。
また、技術革新に対するMicrosoftのアプローチは、Altman氏がOpenAIで築き上げた技術革新の文化とはかなり異なるだろう。Microsoftの関与がそこにどれほどの摩擦をもたらすかは定かではない。ChatGPTをMicrosoftの製品にすることで、ChatGPTの驚異的な進化にブレーキがかかるかどうかも不明だ。
われわれは、ただ様子を見守るしかなさそうだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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