「AIの利用は思われているほど簡単ではない」--IEEEレポート

Joe McKendrick (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 佐藤卓 吉武稔夫 (ガリレオ)2023年11月14日 11時27分

 生成人工知能(AI)は素晴らしい生産性ツールかもしれないが、ITユーザーやビジネスユーザーは、日常業務やビジネスプロセスが複雑化していることへの警戒心も持つ必要がある。米国電気電子学会(IEEE)が新たに公開した調査レポートの執筆者らはこのように警告し、「AIの利用は思われているほど簡単ではない」と注意を促した。

脳と回路のようなイメージ
提供:AerialPerspective Images/Getty Images

 9月に世界各地のさまざまな業界のIT幹部350人を対象として行われた調査の結果によれば、多くの企業がAIの可能性を活用したいと考えているが、その過程で教育や組織的な準備に取り組むことが必要だという。

 とはいえ、さまざまな障害にもかかわらず、AIへの大規模な移行は起きている。自然言語処理を利用したツールをすでに導入したか、1年以内に導入する計画があると答えた回答者は70%と、前年の67%から増加していた。今後1年に想定されているAIのユースケースは、リアルタイムのサイバーセキュリティ対策、サプライチェーンの効率化、ソフトウェア開発の支援と加速、カスタマーサービスの自動化、求職者の審査の迅速化などだ。

 もっとも、AIへの移行が一夜にして実現することはない。「AIを既存の業務に組み込む作業は、スイッチを切り替えるように単純な話ではない」と、調査レポートの執筆者らは指摘している。これまでも、クラウドコンピューティングからIoTデバイスまで、導入が容易とされていた過去のテクノロジーの多くは、「成功例と失敗例が混在している」ケースが多いとしている。むしろ、デジタルトランスフォーメーション戦略は「失敗する確率が驚くほど高く、期待に応えられなかったり、予算を超過したり、期限を守れなかったり、場合によっては中止に追い込まれたりしている」という。

 幹部が自社のAI利用において最も懸念しているのは、「AIへの過度の依存と潜在的な不正確さ」だ。調査に参加した幹部の59%が、重要な意思決定やプロセスにおいてAIに依存し過ぎることへの懸念を示していた。

 次に大きな懸念は、知識の共有と従業員教育の難しさで、50%の回答者がこの点を挙げている。具体的には、「今いる専門スタッフが持っている組織的ノウハウを活用して新しい担当者をトレーニングする」能力への懸念だ。

 また、半数近い47%の幹部が、既存のワークフローにAIを組み込むことの難しさを、今後1年間の生成AIの利用における主要な懸念事項の1つとして挙げていた。

 さらに、AIの利用が加速度的に進む中で、トレーニングデータの質も問題の1つとして浮上していると、IEEEのレポートの執筆者らは述べている。

 生成AIはまだ比較的新しい分野で、適切な専門知識を持つ人材がほとんどいない。AI関連の仕事を希望する求職者に求める主なスキルを幹部らに尋ねたところ、さまざまな技術スキルが挙げられただけでなく、各種のソフトスキルも上位にランクインしていた。

 「プロンプトエンジニアリング、クリエイティブシンキング、そしてAIの成果物を検証する能力。この3つのスキルが、生成AIの力を借りて有意義な成果を生み出すために必要なものだ」と、IEEEの上級メンバーであるYu Yuan氏はレポートの中で述べている。

IEEEのレポート

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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