シャープ、KDDI、日本総合研究所、やさしい手の4社は11月13日、コミュニケーションロボット「RoBoHoN(ロボホン)」に、対話AIシステム「MICSUS」(Multimodal Interactive Care SUpport System)を搭載した対話AI搭載型ロボットによる介護サービス実証を実施すると発表した。
ロボホンに搭載するMICSUSは、KDDI、情報通信研究機構(NICT)、NECソリューションイノベータが、日本総研の協力を得て開発した、介護モニタリングの一部を代替するマルチモーダル音声対話システムとなる。
実施期間は、11月17日から12月18日まで。対象は、やさしい手が運営する東京都内のサービス付き高齢者向け住宅の棟外利用者計10名。
団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、介護需要がさらに増加することで、介護業界の人手不足が深刻化する「介護の2025年問題」が社会課題になっている。加えて、一人暮らしの高齢者の増加による社会からの孤立や、コミュニケーションの不足による健康状態悪化のリスクも課題となっているという。
高齢者のケア・介護領域におけるきめ細やかな対応の需要が増加するなかで、介護業務を効率化しつつ質を高める具体策が求められている。
KDDIでは、2022年6月28日から2023年1月28日まで、MICSUSを搭載したぬいぐるみ型の専用端末による実証実験を実施。高齢者の健康状態や生活状況の変化の情報を収集するための面談と、その記録業務に要する時間を約7割削減することに成功している。
一方で、端末に対する関心度の低下、雑談内容の充実度、会話内容を家族へと共有できないといった課題もあったという。
そこで、同実証では、ロボホンにMICSUSを搭載。MICSUSによる言語コミュニケーションだけでなく、ロボホンによる身ぶり手ぶりなどの非言語コミュニケーションを組み合わせて効果を検証する。
具体的には、高齢者の普段の生活リズムに合わせて、同ロボットの発話時刻をケアマネジャーなどが事前に設定。指定時刻になると、同ロボットから高齢者へ話しかけ、健康状態のヒアリングやイベントの案内などを実施する。なお、発話時刻以外でも高齢者から、同ロボットに呼びかけることで雑談が可能となっている。
高齢者の日常生活に溶け込む身近な存在になることで、ロボットへの関心維持および、高齢者のコミュニケーション不足解消を図るのが目的だという。
また、従来のMICSUSに「雑談機能」「対話履歴と対話要約の共有機能」「注意すべき回答があった際の警告機能」を追加。
介護業務に必要な情報だけでなく、雑談を通じた高齢者の日常の関心など、情報収集を行うほか、健康状態や日常の関心などを家族へと共有。ケアマネジャーの面談業務の負荷軽減に加え、離れた場所で暮らしている家族と高齢者とのコミュニケーションを活性化し、健康維持を目指す。
健康に関する注意すべき回答があった際は、専用サイトで警告画面が表示され、不測の事態があった際の迅速な対応が可能だという。
4社は、同実証を通じて、同ロボットによるケアマネジャーなどの業務負荷軽減や高齢者と家族とのコミュニケーションの活性化への効果を検証。少子高齢化に伴う介護人材不足の解決を目指す。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果