日本電信電話(NTT)は10月19日、NTT法の廃止を検討する自由民主党(自民党)のプロジェクトチームに提出した「NTT法のあり方についての当社の考え」と題した資料を一般公開した。
政府は2023年度からの5年間の防衛費を43兆円程度に増額する方針を閣議決定し、その財源として日本電信電話(NTT)株を売却する案が急浮上している。しかし、売却にはNTT法の改正が必要で、自民党は「『日本電信電話株式会社等に関する法律』の在り方に関するプロジェクトチーム」で同法の改正や廃止を議論している。
全19ページにおよぶPDFによると、NTTは公正競争条件について、NTT法ではなく電気通信事業法で規定されていると指摘。NTT法が廃止されても、NTT東西は電気通信事業法を遵守し、他の事業者に光ファイバーを公正に貸し出すとした。
また、NTT法廃止後も、NTT東西とドコモを統合する考えはないとも述べた。NTT東西はドコモだけでなく、さまざまな事業者との取引を拡大することが重要とも付け加えた。
なお、「NTT東西とドコモを統合しない」という主張については、KDDIらがNTTによるドコモの完全子会社化を引き合いに「法律に書いていないという理由でしれっと実行された」と指摘。「NTT法で縛ることが重要」とも反論している。
KDDIやソフトバンクらは、NTT法の廃止に反対する理由として「外資に買収されるリスク」を挙げていた。ドコモ以外の携帯キャリアもNTT東西の電柱等や光ファイバーを利用しており、これが外国資本となれば、経済安全保障上の重大な脅威になるという指摘だ。
この指摘に対してNTTは「当社だけに外資規制を課すことは無意味」と反論。ソフトバンクがロシアの産業スパイに情報を窃取された事例も挙げ、「NTT法ではなく外為法やその他の法令等で、主要通信事業者を対象とすることを検討すべき」とした。
そのほか、NTT法が弊害となっている事例が列挙された。
1つは社名だ。法律名が「日本電信電話株式会社法」であるため、電信サービスは20年前に提供終了しているにも関わらず、NTTは自ら社名変更できないことを問題視した。
また、NTT法ではNTTに研究成果の公平な開示義務が課しており、懸念国の政府機関や企業から開示要請があった場合でも、研究開発成果を開示せざるを得えない。NTTは光電融合ネットワークの「IOWN」などを推進しているが、こうした技術開発の成果が海外に流出するリスクは、経済安全保障の観点からも課題だとした。
さらに、外国人役員の登用禁止の規定によって、NTTグループ従業員34万人中、15万人が外国人であるにも関わらず、グローバルかつ多様な視点でのマネジメントができないほか、どんなに業績を上げても役員に登用できないため、外国人従業員のモチベーション低下に繋がっていることなどを挙げた。
一方、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルらは、研究成果の開示義務の撤廃などを含む「NTT法の改正」には賛成の立場だ。
資料では、NTT法で規定されている、全国あまねく固定電話を提供する責務についても言及。これを、電気通信事業法で定められているブロードバンドのユニバーサルサービス規定に統合すべきと主張した。
また、採算の取れない過疎地でもサービスを提供する、いわゆる「ラストリゾート事業者」としての責務については、モバイル通信や衛星など低コスト手段の利用が認められることを条件に、引き続き責務を全うするとした。
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