AI搭載の「Ray-Ban | Meta」スマートグラスを試す--実用的で違和感なし

June Wan (ZDNET.com) 翻訳校正: 湯本牧子 高森郁哉 (ガリレオ)2023年10月18日 11時44分

 仮想社会の創造を追求する中で社名まで変更した企業にしては、Meta Platformsがアピールする299ドル(約4万5000円)からのスマートグラスは、その製品カテゴリーから想像されるよりも普通のメガネらしい(そして親しみやすい)見た目だ。

Ray-Ban | Metaスマートグラスを手に持つ筆者
提供:June Wan/ZDNET

 まさにそれが、Ray-Banとのコラボレーションから生まれた新しいスマートグラス製品群、「Ray-Ban | Meta」コレクションの長所なのだ。デザイン面では、従来のRay-Ban製品でよく知られたスタイリッシュさがそのまま踏襲されている。一方で機能面では、写真や動画を撮影したり、スマートフォンとペアリングして音楽やポッドキャストを再生したりできるほか、知りたい疑問に答えてくれる「Meta AI」を搭載している。

 Ray-Ban | Metaスマートグラスはそうした普通の見た目のおかげで、筆者を含む多くの人にとって、ライフスタイルになじみやすいものになっている。例えば、同じように顔に装着するMetaの他の新型デバイス「Quest 3」ほど大袈裟なものではないからだ。筆者はこの最新のウェアラブルデバイスを着けて週末を過ごしてみて、これを普段使いのメガネに切り替える気になっている。その理由は次の通りだ。

Ray-Ban | Metaスマートグラスと筆者のRay-Banブランドのメガネを並べた様子
Ray-Ban | Metaスマートグラス(左)と筆者のRay-Banブランドのメガネ
提供:June Wan/ZDNET

 筆者はいつも度付きのメガネをかけている。Ray-Ban製で、見た目はRay-Ban | Metaスマートグラスに非常によく似ており、スマート関連技術を搭載していないだけだ。そのため、Ray-Ban | Metaスマートグラスに切り替えても驚くほど違和感がなかった。日常的にサングラスを使っている人も、同じように感じるだろう。

 フレーム部分にはカメラやスピーカーなどのさまざまなモジュールが収められているが(半透明のフレームに刷新され、内部のモジュールが見える)、驚くほど軽量だ。そのため、疲労感を覚えるのは、最初にかけて不慣れな間だけだ。

 新しいRay-Ban | Metaスマートグラスの他の主な改良点として、3024x4032ピクセルの鮮明な静止画と解像度1080p(1440x1920フレーム)動画を撮影できる約1200万画素の超広角カメラが挙げられる。留意すべきは、静止画と動画のいずれも縦長のアスペクト比で撮影されること。このスマートグラスの理想的な使用ケースは、「Facebook」や「Instagram」といったMetaのソーシャルプラットフォームで縦長のコンテンツを共有することだからだ。コンテンツ共有機能ではライブストリーミングにも対応し、メガネのボタンを数回タップするだけでライブ配信を開始できる。

Ray-Ban | Metaスマートグラスとスマートフォンをそれぞれの手に持つ筆者<br>提供:June Wan/ZDNET
提供:June Wan/ZDNET

 スマートフォンを使ってMetaのプラットフォームでライブストリーミングをすると、画面にカメラボタンが表示され、スマートグラスのカメラに切り替えられる。この新機能はインフルエンサーやコンテンツクリエイター向けだが、筆者も米ZDNETのソーシャルページ用に製品デモや他の短尺コンテンツをハンズオンで録画する際、縦型動画の撮影向けに設定されている点が便利だと感じた。

 筆者は通常、製品説明会や展示会で「Insta360 GO 3」を使って一人称視点(POV)映像を撮影しているので、周りを見渡すだけで映像に収められるのは個人的に実に重宝する。また、運転中に景色を録画したいときや、事故に備え(ドライブレコーダーに加えて)2台目のカメラが必要な場合も、スマートグラスは有用だと感じた。

 しかし、Meta | Ray-Banスマートグラスの動画撮影は完璧ではない。1200万画素のカメラは、スマートフォンやアクションカメラほど高度にダイナミックレンジを処理できるわけではなく、空が白飛びする傾向がある。また、動画撮影時のスタビライゼーション(手ぶれ補正に相当)の感度が強く、ソフトウェアが振動を適切に処理できないと動画に乱れが生じることもある。それでも、このスマートグラスのカメラは、その場の雰囲気を捉える程度なら十分に信頼できる。

 撮影機能を補強するため、Metaはこのスマートグラスに5つのマイクを搭載し、そのうちの1つをノーズパッドに配置して、着用者の声を最適に収音できるようにしている。他のマイクは前面と側面に分散されており、360度音声を録音できるようになった。この新機能の動作は申し分ないが、筆者が聴く他の音声フォーマットはすべてステレオ再生なので、耳目を集めるためだけの仕掛けのようにも感じる。

 特筆すべきは、周囲の人のプライバシーに配慮して、撮影中はLEDインジケーターの点滅動作がはるかに目立つようになったことだ。LEDインジケーターが何かで覆われていることが検知されると、何も撮影されない。これは誰にとってもうれしい機能だ。

Meta | Ray-Banスマートグラスを横から撮影した写真
サイドにはタッチパッドが搭載されている
提供:June Wan/ZDNET

 写真や動画の撮影という点に加えて、Ray-Ban | MetaスマートグラスはBluetoothヘッドホンの音質もまずまずだ。筆者が2年前にテストしたスマートグラス「Ray-Ban Stories」より良い音だが、大きな差があるわけではない。筆者がMetaから聞いた話によると、重要な改良点の1つが新しい指向性出力で、音漏れが大幅に低減したという。しかし、正直に言って、公共の場で音量を上げるのはまだ罪悪感があった。厳しい視線を浴びたことから、遮音が完璧でないのは明らかだ。

 ただし、このスマートグラスに搭載されているチャットボットMeta AIに質問して返ってきたときの音声が、周囲の人に聞こえなかったのはまず間違いない。というのも筆者自身、この音声アシスタントが言っていることをほとんど聞き取れないことが何度かあったからだ。また、AIチャットの音量を調節する手段は見つからなかった。

 Meta AIはまだ歴史が浅く、質問に対する答えに一貫性がない点にそのことが表れている。Meta AIとの会話は「ChatGPT」の初期の頃とよく似ている。より説明的な質問をしたり、より長い会話をしたり、時にはフォローアップをしたりすることが推奨されているが、Meta AIがより詳しい情報を提供できるかはまだ分からない。例えば、夕食のレシピを尋ねたとき、チャットボットが提供した「詳しい」答えは、「簡単な」答えより長くはなかった。違いは「私の好きな味付け」が加わった点だけだった。

Meta | Ray-Banスマートグラスとケースを並べた様子
提供:June Wan/ZDNET

 最後に、スマートグラス用の新しい充電/持ち運びケースを紹介したい。メガネをはめ込むとワイヤレス充電器として機能することに変わりはないが、前バージョンよりもかなりスリムになり、ハードクッションのカプセル型に代わって革製の冊子スタイルになっている。Metaによると、前モデルより32%軽くなり、8回のフル充電による32時間のバッテリー駆動が可能だという。

 Meta | Ray-Banスマートグラスは、伝統的なアイウェアのように感じられ、「glasshole」たちが着けていた10年前のメガネのようには感じられない。というのも、Metaはこのスマートグラスで、筆者のようなテクノロジーマニアに別世界のような体験を印象づけようとしているわけではないからだ(実用性のおかげで、ある意味そうなったが)。

 その代わり、このスマートグラスは、Bluetoothでの音楽鑑賞、AIによる音声アシスト、ハンズフリーでの写真や動画の撮影など、必要不可欠な機能を中心としている。これらの機能は、よりメインストリームのユーザー、中でも200ドル以上のメガネやサングラスにお金を払うことに慣れている人々を魅了するはずだ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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