筆者は、手に持ったスマートフォンのカメラで自分を映し出してみた。その姿は、ごく普通の「Ray-Ban」ブランドのサングラスをかけているようにしか見えない。しかし、メガネのボタンをタップすると、このメガネを通して見ている風景が「Instagram」にストリーミング配信される。
本格的な拡張現実(AR)メガネを作り出すという野望を抱くMetaだが、同社が今回発表したのは、2年前に発売したRay-Banシリーズのスマートグラスのアップデート版だ。米国時間9月27日に開幕した開発者向けカンファレンス「Meta Connect 2023」で、最新の複合現実(MR)ヘッドセット「Meta Quest 3」とともに発表されたこのスマートグラス「Ray-Ban | Meta Collection」は、音楽を聴いたり、電話をかけたり、フレームの角に埋め込まれたカメラで写真や動画を撮ったりするために作られたという点では以前と変わらない。米国では価格が299ドル(約4万4700円)から、出荷が10月17日からとなっている。2年が過ぎているにもかかわらず、そのコンセプトは2021年バージョンから大きく変わっていない。ただし、最新バージョンはメガネ部分のデザインの種類が増えたほか、パフォーマンスが向上したとMetaは明言している。
実際、カメラとマイク、それにスピーカーは、いずれも今回改善された。また、このスマートグラスに搭載された最新のQualcomm製チップによって、2024年には他社からも改良されたスマートグラスが続々と登場し始めるかもしれない。もっとも、Amazonが最近発表した、アイウェアブランドのCarreraと共同開発したスマートグラス「Echo Frames」の改良版は、音声機能しか利用できない。
新しいRay-Banグラスに搭載されたQualcommの「Snapdragon AR1 Gen 1 Platform」は、スペック的には内蔵ディスプレイのサポートも可能だが、Metaは今回新たなディスプレイを追加しようとはしなかった。その代わりに、Metaは2021年に発売した「Ray-Ban Stories」と同じような機能を提案している。すなわち、電話をかける、音楽を聴く、写真や動画を撮る、そして「Hey Meta」(当時は「Hey Facebook」)という音声コマンドでいくつかの基本的なタスクを実行するというものだ。ただし、今回はデザインとカラーの種類が大幅に増えている。例えば、フレームはスクエア型の「Wayfarer」(ウェイファーラー)とラウンド型の「Headliner」(ヘッドライナー)が存在し、さまざまなカラーが用意された。ブルー、イエロー、ブラックのスケルトンタイプのフレームもあり、こちらは普通のメガネと同じようなデザインだが、テンプル部分に回路が透けて見える。
このメガネに搭載された5つのマイクアレイは音声コマンドに対し、より敏感に反応し、空間オーディオを動画に録音できる。スピーカーは相変わらずテンプル(つる)に搭載されたオープン型だが、音声の水準と低音は向上している。筆者が初めてレビューしたRay-Ban Storiesよりも低音が効いて、一般的なヘッドホンに近いように感じた。
ナビゲーションはこれまで通り、音声コマンドか片方のメガネのつるにあるタッチパッドで行う。タッチパッドの面積は広くなった。フレームの横にある撮影ボタンでは、写真の撮影のほか、新機能の目玉となるライブ配信の開始ができる。
Metaがこれまでよりも機能を向上したチップをこのスマートグラスに搭載した狙いは、人工知能(AI)機能の提供にある。2024年には、カメラに写った物体の認識に加え、テキスト読み取りなどのAI機能を搭載すると同社は予告している。今後は、生成AIで写真を撮影し、AIが書いたキャプションをつけて投稿できるようになる日が来るかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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