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注目集める「私人逮捕」系動画--盗撮等をYouTuberらが勝手に逮捕、問題点や要件は

 「私人逮捕」動画が話題だ。パトロール系、世直し系などとも呼ばれ、盗撮や痴漢、転売などの犯罪行為をしている人たちを私人逮捕する動画がSNSで多数公開されているのだ。実態と問題点について考えたい。

待ち伏せ、追いかけ、囲んで詰問--人気も賛否分かれる「私人逮捕系」動画

 ある私人逮捕系YouTuberは、「X(旧Twitter)」のプロフィールに「ジャニーズチケット不正転売撲滅!私人逮捕!」などと書いている。ジャニーズの公演がある会場付近で転売ヤーの女性を待ち伏せ、糾弾して追いかける動画を多数投稿しているのだ。複数の男性で「不正転売してますよね、通報しました」と女性を追いかける多くの動画は、現在でもモザイクもかけず、顔が分かる状態で公開され続けている。

 ある動画では、ジャニーズのミュージカル作品「DREAMBOYS」のチケットを7万円で転売しようとした女性を羽交い締めにしている。なにわ男子の1万円のチケットを7万円で転売しようとした女性に対して、タクシーへの乗り込みを妨害する動画なども公開されている。

 確かに、チケットの不正転売はチケット不正転売禁止法に違法する行為であり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金もしくはその両方とされる。しかし、見知らぬ複数の男性に追い回された女性らは明らかに怯えており、腕を掴んで羽交い締めする行為はやりすぎのように見える。

 Xでは「リプや引用は批判多いですが批判よりも応援DM沢山来てます!」としており、「やりすぎ」「ここまでやっていいのか」という声も多いが、喜んで見ているユーザーも少なくないようだ。

 別のパトロール系YouTuberは、駅で3時間以上徘徊していた男を数人で囲んで詰問した挙げ句、警察へ連行する動画を公開している。結果的にその男性は盗撮を告白していたようだが、証拠も見つかっていない中で私人逮捕していたことに対しては非難が集まっている。

私人逮捕は行き過ぎると罪に--本来は「緊急を要する」場合のみ

 そもそも、警察ではない一般人による「私人逮捕」の扱いはどうなるのか。通常、一般人が他人を拘束し自由を奪うこと、つまり不法に逮捕する行為は「逮捕罪」に当たり、罪に問われる行為だ。例外として、緊急を要する場合は、一般人が逮捕することが認められている。ただし条件があり、条件に沿わない逮捕や行き過ぎた取り押さえなどによる暴行は、逮捕した側が逮捕罪や暴行罪に問われることもあるのだ。

 犯人が現行犯人または準現行犯人であること、または、侮辱罪や過失傷害罪等の軽度の犯罪の場合は、犯人の住所、氏名が明らかでなく、犯人が逃走する恐れがあることなどが条件となる。つまり目の前で犯行を目撃した場合、その場から逃げ出そうとした場合などが該当するというわけだ。

 また、私人逮捕を行った場合も、すぐに地方検察局・区検察庁の検察官、または司法警察職員に引き渡す必要がある。

 ところが、投稿されている動画の多くは、自ら呼び出したり通報を受けてわざわざ会いに行ったりしている。しかも、はじめからカメラを回しており、女性1人に対して男性が2、3人以上で囲んでいることもある。緊急を要するとは言いづらいのだ。犯罪をなくすことが目的であれば事前に通報するなど別のやり方もあるのに、あえて動画に撮影し投稿しているのだ。

 実際、「(男ばかりだと)逮捕される可能性がある」と考えているようで、同活動に協力する女性YouTuberも募集している。警察の取り調べを受けたこともあるようだが、やめる気はないようだ。

 ある動画は、Xで約3400万インプレッションを獲得している。Xでは有料のXプレミアムに加入し、フォロワーが500人以上おり、過去3カ月におけるインプレッションが500万以上で、ドラッグなどの収益化できないジャンルではない投稿は、収益化できるようになっている。つまり、このような投稿も収益化できていると考えられるのだ。

喜ぶ人がいても、迷惑行為はやはりNG

 痴漢や盗撮などは紛れもない犯罪行為であり、被害にあったという人も多いはずだ。転売も本当に求める人が手に入らず、不当に高く値を吊り上げる迷惑な行為だ。痴漢や盗撮、転売に腹を立てている人は多いため、スカッとするとこのような動画を喜んでいる人もいるだろう。

 迷惑系YouTuberとの違いとしては、迷惑系YouTuberはPVのために過激な迷惑行動をする一方、パトロール系・世直し系YouTuberは行動を喜ぶ人が一定数いることだろう。

 しかし、人違いや冤罪の可能性もあり、そもそも顔がわかる状態で犯人扱いした動画を公開し続けることは、肖像権侵害や名誉毀損などに当たる可能性もある。また、前述のように、撮影時の行動は傷害罪や暴行罪、逮捕罪等に問われるかもしれない。

 ネットでは無責任に過激なものが求められ、喜ばれる傾向がある。しかし、他の人に迷惑をかけたり、名誉を毀損したりすることはやはりするべきではない。真似して過激な投稿などはしないようにしてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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