アップルは、9月13日(日本時間)に開催したイベントで、iPhone 15/iPhone 15 ProとApple Watch 9/Apple Watch Ultra 2などを発表した。
オープニングは、「Apple Watchに命を救われた人たちの誕生日」を祝う映像からスタート。その冒頭に、一人の日本人男性が登場した。それが「Apple Watchは命の恩人」と話す飯村正彦氏だ。
じつはこの映像、IT業界で記者をしている人の中には驚いた人がいるかもしれない。飯村氏は、セキュリティソリューションサービスなどを提供するラックで、コーポレートコミュニケーション室 担当部長を務めており、筆者も顔なじみがあった。どのようにApple Watchで心臓疾患を見つけ、現在に至ったのかについて話しを聞いた。
映像の冒頭は、風鈴と洗濯物というありふれた日本の風景からはじまり、Apple Watchの通知音。そして「パパ、お誕生日おめでとう。今日の誕生日パーティ、楽しみにしててね」という音声が流れた。
飯村氏が利用していたApple Watchが不規則な心拍数を検出し、重大な心臓不整脈の手術につながったという。「やっぱりこういう人生を送れるとか、仲間が集まってくれるっていう幸せな時間ってすごくすてきだなというふうに感じる」とコメントした。
2016年ごろから急に心拍数が上がり、ふらつく感じや立っていられないほど苦しくなることが起き始めたという。突然に始まって突然に止まる動悸の発作で、心拍は150~200/分。150超えるのはおよそ全力疾走レベルで、200にもなると苦しくて動けなくなるという。当初の頻度は年に1~2回ほどだったが、そのうち半年に1回、数カ月に1回起きたり起きなかったりする状況に変わっていった。
症状が出るのはだいたいスポーツのあとの安静時だが、趣味のサーフィン中に海で波待ちをしている安静時に「なんか怪しい」と感じることも何回かあり、海の中で軽く発作が起きたこともあるという。「もし海で心拍が200に上がったら死んでしまうかもしれないし、これは怖いなと思った」(飯村氏)
あるとき家族の病院引率で行った心臓のドクターに聞いたところ、「発作が起きた時に心電図をとらないと、安静時に受診してもわからない」と言われたという。
病院では、1週間程度をめどにホルター心電計をつけて病気を探すが、その期間に発作が起きなければ、病気を探すのに時間がかかる可能性がある。飯村氏のように発作の頻度がそこまで高くない場合は、診断が難しい。
このことをきっかけに、飯村氏は心電図(ECG)機能がついた「Apple Watch Series 4」に買い換えた。2019年当時、日本で販売していたApple Watchではまだ心電図機能に対応していなかったため、出張で米国に行ったおいに頼み、購入したという。
そうして発作が起きたときに身に着けたApple Watchで心電図を記録。どこの病院へ行くか迷っていたある日、歩いていると自宅の近所に開業したばかりの不整脈専門のクリニックを見つけたという。Apple Watchの心電図の記録を見せて診断を受けたところ、すぐに診断が下った。
結果は、心臓の4つあるうちの上の部屋である心房が関与する不整脈「発作性上室性頻拍(PSVT)」。上室性頻拍では命の危険はないと言われたが、けいれんで気絶する可能性があるという。「もしサーフィン中に発作が起きたら溺れてしまう」――そうして、すぐに手術を決意。2020年5月に手術となった。
その開業した病院の医師は、アブレーションと呼ばれるカテーテルの不整脈手術で日本で一番の実績を持つスーパードクターだったという。2023年9月現在、飯村氏は再び不整脈が起きることなく、元気に過ごしている。心電図以外にも、「いびきラボ」というアプリでいびきをチェックしたことをきっかけに、鼻の手術をしたり、スリープトラッカーの「Sleep Cycle」で睡眠状態をチェックしたりと、iPhoneとApple Watchをフル活用してライフログをとり、健康管理をしている。
そんな飯村氏が愛用しているのは、「Apple Watch Series 6」だ。サーフィンに加えて、新たにスキューバダイビングを始めたという飯村氏は、「今回のこと(Appleの発表会に出演)もご縁なので、ダイビングのためにApple Watch Ultra 2を買おうかな」と笑った。
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