実店舗を体験型ストアとして展開する“売らない小売り”のb8ta Japan(ベータジャパン)は、6~7月にかけて一時的なポップアップストア「b8ta Pop-up Osaka - Hankyu Umeda 2023」を実施した。
本記事ではその中でも、筆者の目の前で「どうして(今日)買えないんだ」というクレームが発生するほど注目を集めていた、DG TAKANOの「水ですすぐだけで油汚れも細菌も落とせる食器」と、その理由を紹介しよう。
DG TAKANOが「meliordesign」(メリオールデザイン)ブランドで販売する食器は、一見ただの食器だが、ナノテクノロジーを使った表面改質技術を世界で初めて採用。食品衛生検査指針で推奨されている「ATPふき取り検査法」の合格基準をクリアし、水ですすぐだけで油汚れを落として除菌できるという。
洗剤やスポンジ、お湯、食洗機などが不要になり、最大98%の節水が可能。洗剤不要で手が荒れず、洗う時間1秒で年間約10日分の食器洗浄時間をなくせるという。4枚入りの「meliorkitchen STARTER SET」として販売しており、価格は1万3800円となる。
エビチリを落とすところ
口紅を落とすところ
DG TAKANOは、meliordesignのほか、超節水ノズル「Bubble90」を販売するなど、水不足という課題に対してアプローチしている。
DG TAKANO 代表取締役を務める高野雅彰氏は、「便利になることで人類が発展する一方、地球環境がボロボロになる――今まではそういう社会を生きてきた。だからといって、人類が前の時代の生活に戻ることはできない。これからは、便利になってかつ快適な暮らしができ、かつ地球環境もよくなる。私たちメーカーはそういった商品を出していかなければいけない」と、メーカーのあるべき姿を語る。
また、同社が取り組む水不足という課題について、「2050年には、人口の半分が水不足の影響を受ける時代が来ると言われている。日本ではあまり実感がないかもしれないが、蛇口をひねっても水が出ない、洗車できる日が決まっているといった国も出てきている」(高野氏)と説明し、危機感を表す。
DG TAKANOは水不足に対して、環境負荷を下げて貢献するというアプローチで取り組んでいる。2009年から展開するBubble90では、国際特許を取得した「パルセーションフローテクノロジー」を採用し、通常の水流を水の玉が勢いよく断続的に打ちつけるマシンガンのような水流(脈動流)に変えることが可能で、ほとんどの蛇口にシームレスに取り付けられるという。
Bubble90は、日本全国の3万8000店舗以上が採用しており、レストランチェーン店のシェアは80%にのぼるという。「10%の水しか使わず、汚れが早く落ちる。日本中のレストランの水使用量を激減させている」(高野氏)。スーパーや病院、発電所のようなインフラ施設でも採用されており、海外でも高い評価と信頼を得ていると話す。
高野氏は、DG TAKANOがヒット商品を生み出せる理由として、メーカーとデザイン会社の視点の違いを説明する。「メーカーは、“自分たちの技術やノウハウを使って何を作るか”という、日本の製造業が得意な視点を持っている。対して、アップルやテスラに代表されるデザイン会社は、“何の課題をどう解決するか”という視点を持ち、そのために必要な技術を集める」(高野氏)という。
加えて、イノベーションを起こせるチャンスとしては、(1)技術や素材、(2)それらを何に使うかという“デザイン”、(3)デザインしたものの“ビジネス”化の3つがあると補足する。
「日本企業は、(1)技術や素材のイノベーションがとても得意。対して、(2)デザイン、(3)ビジネス化は米国が得意。0.5mmのシャープペンシルの芯に穴を開けられるという技術があったとして、その技術が何の役に立つかは技術者ではなく、デザイナーであるスティーブ・ジョブズ氏やイーロン・マスク氏が考えており、日本企業はあくまでも技術や素材、部品の提供しかできていない。一方、DG TAKANOは、日本では珍しい、実現したいもののために必要な技術を集めるデザイン会社だ。日本中の中小製造業の技術を社会課題の解決にどう使うか。つまり、技術と課題の直結をしている」と、同社の立ち位置や考え方を説明した。
ノズルの次の商品にお皿を選んだことも、デザイン会社ならではと続ける。「メーカーの視点だと、ノズル(Bubble90)のあとの商品展開としては蛇口、シャワー、トイレと“小さなTOTO”を目指すと思われがち。デザイン会社の“何の課題をどう解決するか”という視点では、水不足を解決すべく、洗うものと組み合わせる“洗われる側”という発想になった」と、水不足という課題に向けた2つ目のラインアップにお皿を選択した背景を説明した。
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