目的は業務効率化から価値創造へ--電通デジタルが注力する「企業DXコンサル」の現況

 電通デジタルは7月26日、トランスフォーメーション領域における事業説明会を開催。同社で代表取締役社長執行役員を務める瀧本恒氏、執行役員を務める安田裕美子氏が登壇し、大企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するコンサルティング事業の現況と展望について説明した。

代表取締役社長執行役員を務める瀧本恒氏
代表取締役社長執行役員を務める瀧本恒氏
執行役員を務める安田裕美子氏
執行役員を務める安田裕美子氏

 「デジタル広告」のイメージが強い同社だが、主に大企業の「DX」を支援するコンサルティング事業を展開していることはあまり認知されていないという。

 そこで、電通デジタルは2023年4月から、自社を「クライアント企業と社会・経済の『変革と成長』にコミットする総合デジタルファーム」と定義。DXコンサルティング事業のさらなる拡大を目指している。

 なぜ今、DXコンサルティング業務に注力するのか。安田氏は「DXのこれまでのニーズはIT導入や業務効率化が中心だったが、それらが一巡した現在は、DXでいかに事業を変革し、新たな価値を創造できるかが問われるようになった」と説明する。

 そして、DXによる新たな価値を「いかに世の中に広めていくか」が今後のDXでは重要になるといい、ここに電通グループの「世に新しいことを広める力」を活かせると話す。


具体的な支援策を実例とあわせて紹介

 電通デジタルのDXコンサルティングでは、「既存事業の深化と高度化」と「新規事業の創造」を両輪で提供する。


 既存事業の深化と高度化では、バリューチェーンに応じたさまざまなアプローチを展開する。同社が手掛けた小野薬品工業の事例では、コロナ禍で変化した医師への営業スタイルに対応すべく、小野薬品オリジナル顧客データプラットフォーム「MIRAI DB」を構築。医師チャネル変革と組織変革を目指したという。


 また、新規事業の創造や開発に関しては、2023年1月に新組織「電通デジタルBIRD」を設立し、同機能の強化を図っている。

 新規事業の立ち上げでは、幾重もの「成功の壁」があるというが、同社では新規事業のフェーズごとに最適な専門人材を配置し、それを1人のディレクターが統括するという形で、フェーズごとの「壁」を打ち破るという。


 ブラザー工業での事例では、伝統的な製造メーカーである同社のSaaS型新事業を開発。モノ売りからサブスクモデルの導入を提案したという。その際には、0からの事業構想、北米展開を見据えたサービス具体化と事業計画とPoC(概念実証)、そして新業務モデルを導入し、DX人材育成など組織変革も支援した。


 GDBLとの事例では、電力データのビジネス化を課題とする同社に対し、地域脱炭素に向けた分析や計画から、住民参加を含めた具体的な施策実行までをワンストップで提供するSaaS型サービスを立ち上げた。自治体を巻き込んだPoCやプロダクトの自走化も実施した。


 電通デジタルでは、DXコンサルティング事業を拡大するために、中途採用を強化している。現在ではコンサルティングファーム、Sler、広告会社、事業会社出身の専門人材を有している。

 また、前述の通り、今後のDXにおいては、DXで生まれた新たな価値を、いかに世の中に広げるかが重要になるという。電通グループが得意とするクリエイティビティや、早期話題化のためのデジタルマーケターの活用は、他のコンサルティングファームとの大きな差別化要素になると安田氏は話す。

全社員がChatGPTを使える環境を導入

 設立7年目を迎えた電通デジタルだが、4月1日にはdentsu JapanのAI専門会社であるデータアーティストと合併。社員全員がChatGPTを使える環境を整えた。

 「AIのいい部分と悪い部分を誰よりも知っている会社になりたい」と瀧本氏は意気込む。

 また、データアーティストとの合併後、新たなAI事業をスピーディーに推進するための全社横断型組織「AIコミッティ」を設立。今後は社内システムをAI対応型にするコンサルティングメニューや独自プロダクトを提供するという。

 さらに、別領域としてGreen Techにも取り組み、さらなる成長に取り組むとした。

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