音楽やビジュアルアートなど、私たちの好きなほぼあらゆるタイプの芸術に進出している人工知能(AI)が、今度は映画にまで入り込むかもしれない。米映画俳優組合(SAG-AFTRA:Screen Actors Guild - American Federation of Television and Radio Artists)によれば、AIによってエキストラの映像や肖像が永久に使い回しされる可能性があるという。
米国の映画、テレビ、ラジオの出演者で構成される労働組合のSAG-AFTRA理事会が、全米映画テレビ制作者連盟(AMPTP:Alliance of Motion Picture and Television Producers)との新たな契約で合意に至らず、満場一致でストライキを承認したことが大きく報じられている。
SAG-AFTRAの交渉責任者を務めるDuncan Crabtree-Ireland氏が、米国時間7月14日にストライキを発表した記者会見で述べたところによると、AMPTP側はエキストラをAIでスキャンし、1日分の出演料を払ってその映像や肖像を会社が所有して永久に使用できるようにすることを提案したという。
「AMPTPの提案は、エキストラをスキャンして1日分の出演料を払い、そのスキャンされた映像や肖像を会社が所有して、同意も報酬もなしに好きなプロジェクトで永久に使用できるようにすべきだというものだった」と、Crabtree-Ireland氏は述べている。
Studios' proposal to SAG-AFTRA included scanning background actors using AI and paying them for a days work
— Culture Crave (@CultureCrave) July 13, 2023
The studios would then be able to use that likeness forever with no payment or consent pic.twitter.com/PqIbHFA1hs
同氏が明かした提案は、労働者たるエキストラが自分の仕事に対して得られるはずの報酬を失うことになるため、倫理的に大きな問題をはらんでいるだけでなく、演技の将来性や信頼性に疑問を投げかけるものだ。
だが、AMPTPは米ZDNETに宛てた声明で同氏の話を否定し、デジタル複製映像を使用した場合にも俳優に報酬を支払い、また俳優の同意を求めることになると語った。
「エキストラのデジタル複製映像が、同意も報酬もなしに永久に使用される可能性があるとするSAG-AFTRA幹部らの主張は誤りだ。それどころか、AMPTPが現在提案している内容は、エキストラのデジタル複製映像の使用を、そのエキストラが出演している映画に限って認めるというものだ。それ以外の使用についてはすべて、そのエキストラの同意と使用のための交渉が必要になる。最低賃金も保障される」と、AMPTPの広報担当者は米ZDNETに対して説明した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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