「ターミネーター」のような古典的なものであれ、「ミーガン」のようなより最近のものであれ、SF映画を見たことがある人ならばおそらく、人工知能(AI)によって世界の安全が脅かされるというストーリー展開にはなじみがあるだろう。
「ChatGPT」の公開に端を発した最近のAIの急速な進歩は、そうした脅威をフィクションではなく現実に近いものにする可能性がある。
AI業界に対する先駆的な貢献を理由に「AIのゴッドファーザー」の1人とみなされているGeoffrey Hinton氏は最近、AIのリスクについて自由に発言したいという思いから、10年間勤めたAlphabetを辞めたという。
Reutersとの最近のインタビューの中でHinton氏は、AIのリスクを気候変動になぞらえた。
「気候変動の深刻さを軽視するつもりはない。『気候変動を気にするべきではない』とは言いたくない。それも重大なリスクだ」と、同氏は述べ、こう続けた。「しかしこれ(AI)は、それ以上に差し迫ったものになる可能性があると私は考えている」
AIの危険性に対する懸念を表明したのは、同氏が初めてではない。Teslaの最高経営責任者(CEO)であるElon Musk氏、Apple共同創設者のSteve Wozniak氏、Stability AIのCEOのEmad Mostaque氏など、IT業界などのリーダーらが、大規模なAI実験の一時停止を求める書簡を公開した。
しかし、AI分野におけるHinton氏の広範な貢献と経験を考えると、同氏の懸念には顕著な重要性がある。
Hinton氏は1986年に、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)に関する論文を共同執筆した。これは、AI技術の基盤にあるニューラルネットワークの応用やディープラーニングの現在の成功に欠かせないマイルストーンだった。同氏はその功績が認められて、2018年にチューリング賞も受賞している。
同氏は、AIの問題は、潜在的危険性を緩和するために適用できる簡単な対策が存在しないため、より解決が難しいとしている。
「気候変動は、やるべきことを推奨するのが非常に簡単だ。炭素の燃焼を止めれば、やがて問題は解決される。AIについては、何をやるべきかがまったく明らかになっていない」と、Hinton氏はReutersに対して語った。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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