【BTW RADIO】食べ残しから肥料とエネルギーを作る--ビオストック熊谷智孝氏

 テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。

 ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。第1回のゲストとして登場いただいたのは、超小型バイオガスプラントを展開するビオストック 代表取締役社長の熊谷智孝氏。NTT東日本の子会社として、今までは廃棄されていた畜産のふん尿や食品残渣から液体肥料とエネルギーという2つを作り出す事業に取り組む。大きい、移動できない、建設までに時間がかかると重厚長大だったバイオガスプラントを身近なものに変えたその手法に迫る。

ビオストック 代表取締役社長の熊谷智孝氏
ビオストック 代表取締役社長の熊谷智孝氏

バイオガスプラントを設置すると工場内で資源を循環できる

大野氏:ビオストックはどのような事業を展開している企業なのでしょうか?

熊谷氏:NTT東日本の子会社として、資源循環で地域に力をつけていく事業を進めています。主にバイオガスプラントの導入促進を事業の柱としています。

大野氏:NTTがグループ会社でバイオガスプラントの事業を展開していることは、知らない方も多いですよね。まずは「超小型バイオガスプラント」についてご説明いただいてもいいでしょうか。

熊谷氏:我々はもともと、地域の資源である畜産のふん尿の処理から事業を開始したんです。この事業を進めていく中で、都市部の食品の生ごみを同じように処理できないかという声がたくさん出てきました。都市部でそれらを処理しようとすると、スペースが限られるので小さいサイズのものが必要です。そこで、20フィートのコンテナにおさまるサイズのバイオガスプラントを2022年から提供開始しました。

大野氏:20フィートのコンテナにおさまるサイズの中に、必要なものがすべて入っているんですか?

熊谷氏:正確に言いますと、お客様が処理する量によってコンテナが2つ、あるいは3つ、4つと増えることはありますが、必要なものはすべてその中に詰まっています。

東京都調布にあるNTT中央研修センタに設置されているバイオガスプラント。こちらは20フィートのコンテナを2つつなげたものになる
東京都調布にあるNTT中央研修センタに設置されているバイオガスプラント。こちらは20フィートのコンテナを2つつなげたものになる

大野氏:地域では、食品の残渣が大きな問題になってきているのでしょうか。

熊谷氏:たとえば自治体の場合ですと、人口がどんどん減少していく中で、ごみの焼却施設をどうしていくかなどが議論になっています。3つの自治体で1つの焼却施設を使用し広域で処理するという方法もありますが、そうなると、ごみをその焼却施設まで遠い距離を運び、かつ燃やすことになる。結果、コストも環境負荷も大きくなるのです。そこで、水気を含んでいて重い生ごみだけでもそのエリア内で処理しましょうということで、地域内に設置が可能な小型のバイオガスプラントを重宝していただいています。

大野氏:比較的多いのは自治体からの問い合わせですか。

熊谷氏:自治体だけではなく、民間企業からの問い合わせも非常に多くなっています。特に、食品加工工場などからの反響が大きいです。今までたくさんの廃棄物を、高額な処理費をかけて処理されていたそうなのですが、工場内にバイオガスプラントを設置すると、廃棄物処理をDIYで対応が可能となり、かつ処理した廃棄物からエネルギーを得てまた工場にいかすことができます。工場の中で資源を循環させられるんです。

加納:行政や住民の方と密着した取り組みになっていると思うのですが、どのように関係性を築いているのでしょうか。

熊谷氏:おっしゃる通りでして、廃棄物ですと、まずは分別をしていただかないと生ごみの処理ができなかったりします。住民のみなさんに協力していただくところからが始まりです。今手がけている自治体の案件は、もともと分別はされていて堆肥化なども行っていたけれど、なかなか経済的に回っていかなかったとい案件も多いです。そういった自治体には、バイオガス化をして経済性を良くする提案をしています。また、液体の肥料を、休耕地に散布し、家畜のえさ用の作物を生産し、新たな地域産業を作るような提案もしております。

大野氏:今までこういった処理施設は、大規模でないとできなかったということでしょうか?

熊谷氏:そうですね。こういった食品廃棄や生ごみを原料とするバイオガスプラントは今までもあったのですが、だいたい1日あたりの処理する量が100トン近くでした。今回私たちが導入を促進しているコンテナ型の超小型バイオガスプラントは、1日1トンくらいから処理が可能です。100分の1くらいの規模でも回すことができます。

大野氏:今までは数十、数百トンの規模だったものが、1トンから可能になったんですね。お話だけですとさらっとできたように聞こえるんですが、小型化するにあたってだいぶ苦労もされたのではないかと思います。どのようなところで苦労されましたか?

熊谷氏:小型化にあたっては、技術力のあるプラントメーカーと協業して開発しています。キーとなったのは、バックボーンがNTTであることをいかして、無人で、自動で運転させることでした。そのため、各プラントのパーツにいろいろなセンサーを組み込んでいます。ごみの処理状況や量に応じて、自動で制御して動くことをNTTの技術で実現しているのです。あわせて、情報をクラウドに上げ、運転管理している方がどんな端末からでも手軽に確認できるシステムを組み込んでいます。非常に導入しやすい形を作れていると思います。

加納:センサーはどれくらい組み込まれているんでしょう。またどのようなセンサーがあるのかも知りたいです。

熊谷氏:バイオガスプラントは非常に多くのパーツで構成されています。たとえば、原料を投入する口がありますよね。そこで原料を砕いて、調整槽というところに入れ、水を混ぜて一次分解をしてから肝である発酵に移ります。それぞれの通路にセンサーを入れていまして、今どれくらいの量の原料が入っているか、希釈水がどれくらい量で入っているか、判断しながら調整槽の中で最適なスピードで攪拌します。あとは調整槽から発酵槽にどれくらいの量の原料を送るかも、最適な量に調整されています。

 ガス精製のところにも非常にたくさんのパーツがありまして、センサーがついています。ガスの量、ガスにどういった成分が含まれているかなども、すべて見えるようにしています。

大野氏:タブレットか何かですべて見られるようになっているんですか?

熊谷氏:タブレットでもPCでもスマホでも見ることができます。どんな端末でも画角が合うように設定しています。

タブレット、PC、スマホなどから、中の様子を確認できる
タブレット、PC、スマホなどから、中の様子を確認できる

大野氏:私や加納さんのような初心者でも使えますか?

熊谷氏:セキュリティの権限をお渡しすれば見られます。「お任せバイオガスプラント」というサービス名をつけているのですが、名の通りどなたでもわかるような形にしています。

大野氏:地域に納品されたときに、地元の人が使いこなせないと意味がないですものね。

熊谷氏:私たちのコンセプトとして、ごみが出るその場所で処理していくというのがあります。ごみを運ばなくていい、また燃やさなくていい。経済的にも環境的にも負荷がかかりません。それを実現しようとすると、どなたでも管理、運転ができることがキーになってくると思います。

大野氏:お話を聞いていると、もともとそういった事業を専門的にやっていたという印象を持ってしまいます。会社自体はまだ設立して間もないですよね?

熊谷氏:2020年に創業していますので、ちょうどこれから4期目に入るところですね。

大野氏:そもそも、なぜこのような会社を設立しようと思ったのでしょうか?

熊谷氏:私はNTT東日本の社員でもあります。NTT東日本は、ご存知の通り電話とインターネット回線の会社です。これまでは通信によって地域の課題を解決してきたのですが、現在、地域の方々の課題は多様化していまして、通信だけでは解決できないケースも多くなってきています。そこで、地域の課題にそのまま対応できるようなソリューションを子会社として提案し、地域の力をつけていく。地域に力がつけば、よりNTT日本の事業も広がっていきます。そうした世界観を作りたくて、会社を設立したんです。

加納:NTTグループとしては、どのようなシナジー効果が出ているのでしょうか。

熊谷氏:自治体とプロジェクトを進めていて、廃棄物の資源循環を私たちがやっていきます。そのほかに、たとえば大型の太陽光発電を取り入れたいという声があったとき、組み合わせて提案することができます。クリーンエネルギー事業を手掛けるるNTTアノードエナジーという会社があるのですが、そういった会社と連携して進めていくことも多いですね。

大野氏:最近、NTTグループは地域の課題解決に向けて会社を挙げて取り組んでいる印象があります。そのあたりはどうお考えですか?

熊谷氏:おっしゃる通りでして、今まで、NTTは電話とインターネット回線の会社でした。しかし、今後はより事業を広めていく必要があると考えています。日本の地域をいかに強くしていくか、元気にしていくか。ここはNTT東日本のコンセプトにもなっています。たとえばNTTアグリテクノロジーという会社がありまして、こちらは大規模な施設園芸をソリューションとして提供し、施設も増えています。ほかにはドローンの会社などもありまして、農業用のドローンや、橋梁などの点検をする国産ドローンを提供しています。

大野氏:陸上養殖や食用コオロギなども手がけていますよね。最近は、地域をサポートする研究所も設立されたとか。

熊谷氏:地域循環型ミライ研究所というのを設置しています。地域の食や伝統芸能など、いろいろな要素を吸収し研究していきながら、私たちのような子会社が情報を活かしていく。そういった研究所を作っています。

大野氏:バイオガスプラントの事業に参入した中で、NTTの強みとして出ているのはどういったところだとお考えですか?

熊谷氏:大きくは2つあります。1つは、バイオガスプラントを運営するためのセンサーやIoT技術、クラウドといったところです。バイオガスはメタン菌という菌が有機物を分解してガスを生んでいまして、菌をどういう状態にしておくといちばんいい形で発酵が進むか、これまで職人の技術次第でした。これを、今はAIなどで解析しまして、少しの原料でもいちばんいい形で発酵させ、たくさんガスを生むための研究をしています。プラントの技術はどんどんアップデートされています。

 もう1つは、NTTというブランドや背景の力があります。どんなプロジェクトであっても逃げないという信頼感を持っていただけていると思います。

加納:バイオガスプラントは限られた業界のものなのかと思ってしまうのですが、販路の開拓などはどのように進められているんでしょうか?

熊谷氏:ありがたいお話で、いろいろな取り組みをメディアでも扱っていただいたおかげで、お問い合わせは非常に多く来ています。自治体のほか、有名な食品メーカーからもお問い合わせがありました。たくさんお声がけいただいて、対応が追いつかないほどです。

大野氏:嬉しい悲鳴ですね。実績もそれに伴って上がってきているということでしょうか?

熊谷氏:そうですね。バイオガスプラントはコンテナ型で小さくはあっても、導入までは1年ほどかかります。現在、私たちが納品して稼働しているプラントが2機、受注いただいて構築に入っている案件もありますので、それらが実績になっています。

大野氏:すでに黒字化している事業ということですか?

 音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」では、このお話の続きを配信しています。このあとは音声にてお聞きください。

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