大学教員による、「ノートを使えていない学生がいる」という投稿が話題を集めた。学生たちは、資料をプリントで配布しても以前のものは持ってこず、考えが深まっていかなかったようだ。そこで学んだことをノートで整理させたところ、考えが整理できるようになったという。
小学校や中学校などでは、主に紙のノートで記録したり勉強したりしたはずだが、もっと上の高校生や大学生では少々様子が異なるようだ。今どき高校生や大学生の学習実態と理由について見ていきたい。
大学の講義にスマホ程度しか持たずに来る学生はいる。大学生ならPCは持ってくるものと思っていたが、実態は持ってくる割合はけして多くはない。
最近では、リアクションペーパーやアンケートなども、スマホで作業できるものを用意するようになった。その方が確実にすべての学生が回答できることがわかったからだ。彼らはスマホならば持っているが、他のものは持っていないことも多い。スマホから作業できるものを用意しなければ、多くの学生から「できません」という声があがることになってしまうのだ。
プリントを配布すれば筆記具を取り出して直接書き込むが、ものによっては、板書をスマホで撮影することも。確かに、学習でもスマホさえあれば事足りることは多くなっている。
高校生で既に学習のやり方が変わっていることをご存知だろうか。マイナビティーンズラボの高校生の勉強法・自習スタイル調査(2021年10月)によると、高校生が自習するときに「記録するものとして使っているもの」について聞いたところ、1位は「スマホ」(62%)という結果に。続いて「ルーズリーフ」(54%)、「ノート」(53%)となった。
小学校・中学校などではノート、ルーズリーフなどで記録することがほとんどだ。しかし、中学生くらいからスマホを所持するようになり、高校では学内への持ち込み、校内での利用などを許可しているところも増える。GIGAスクール構想で一人一台の端末が貸与され、学習用アプリの利用、オンライン学習なども増えており、スマホやタブレットなどでの学習がしやすくなっているのだ。それに伴ってスマホによる記録も増えており、ノートやルーズリーフなどを上回ったと考えられるのだ。
LINEリサーチの、高校生を対象とした使っている文房具についてのアンケート(2022年3月)でも同様だ。学校の授業や勉強でどんなノートを使っているか聞いたところ、最多は8割強の「綴じノート・大学ノート」に。「ルーズリーフ/バインダー」は女生徒の利用率が7割強と人気が高く、「写真を撮る」は3〜4割程度。「スマホ(写真は除く)」は3割弱などとなった。
高校生が学習する際は、塾のオンライン授業やオンライン・タブレットの通信教材なども使われており、最近では学校でも学校貸与タブレットも使われる。このような背景から、学校の勉強でもスマホが活用されるようになっているのだ。
「生徒はスマホが好きだし、嬉々として取り組む。うまく活用すれば学習効率も上がるし、悪いものではないと思う」とある高校教員はいう。
「スマホは写真も動画も撮れるし、学習時間もアプリで記録できる。ひと目でどのくらい勉強したのかがわかるから、達成感もある。むしろスマホだけでいいのでは」とある高校生はいう。
その生徒は、普段から自分の学習している様子を写真や動画に撮り、勉強垢に投稿している。勉強垢と同様に使える「Studyplus」を使って学習時間を記録している友だちもいるそうだ。高校への通学には片道40分以上かかり、その時間をうまく生かすことも大切と考えている。
「通学時間が長いから、その間に勉強することも多い。授業の後に学校の図書館や自習室を使ったり、学校近くの図書館に寄ったりして、勉強してから帰ることもある。スマホを使えばいつでもどこでも勉強できるのもいいのかも」
計算したり漢字を書いたりの勉強にはノートを使うこともある。しかし、年号やスペルの暗記などにはスマホのほうが時間効率がいいし、スキマ時間にも使いやすいという。
スマホというと娯楽のためのものという先入観がある大人は少なくない。しかし、今の若者たちはスマホも学習にうまく取り入れて、柔軟に活用しているのだ。
ただし、学習の中にも、暗記などスマホが向いているものもあれば、計算などノートで整理したり書いたりしたほうがいいものもある。うまく使い分けられるようアドバイスすることも必要かもしれない。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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