パナソニック、くらし事業への投資増額へ--「成長機会のがさず事業成長につなげる」 - (page 2)

消費者、流通、メーカーの三方良しを目指した取り組みを

 パナソニック くらしアプライアンス社社長の松下理一氏は、2023年度の国内白物家電事業の重点施策として、「商品力の強化」「流通改革」「コスト・オペレーション改革」の3点に取り組む考えを示した。そして、2024年度には国内白物家電市場で30%のシェア獲得を目指すという。

パナソニック くらしアプライアンス社社長の松下理一氏
パナソニック くらしアプライアンス社社長の松下理一氏

 「商品力の強化」では、顧客インサイト起点で実用化価値を絞り込む引き算の商品企画を実践。2023年度からは、商品コンセプト構築から開発、市場投入までを、職能横断の1チーム体制で取り組むME(マイクロエンタープライズ)制を採用した商品が登場するほか、グローバル競合と対峙できる原価力、スピード力を実装することで普及価格帯でも戦える商品も強化。ノンファン世代からZ世代、高齢者向けの多様なニーズに対応したモノづくりや、キッチンルート向けのビルトインキッチンの商品群の強化も進める。

さらなる原価力強化の取り組み
さらなる原価力強化の取り組み

 「流通改革」では、先にも触れた新販売スキームへの取り組みが中心になる。新販売スキームは、「製品価値を適切に反映した価格で購入してもらうことを目的としており、価格に対する信頼を取り戻すことを目指している」と位置づける。

 販売店では、値崩れを過度に心配することなく、安心して販売ができ、商品の売り残りのリスクも無くなる。さらに、販売ピークをライフサイクルの前半に引き付けることで、経営の安定化が図れること、商品サイクルの長期化により、開発リソースを革新的な商品の開発に振り向けることで、顧客満足度の向上につなげられるとする。「消費者、流通、メーカーの三方良しを目指した取り組みであり、この1年で、効果の実感が深まっている」とした。

 現在、新販売スキームは、国内白物家電全体の3割を占めており、テレビやエアコンを含むと2割弱。2024年度には白物家電全体で5割、テレビやエアコンを含めて3割にまで引き上げるという。

新販売スキームの取り組み
新販売スキームの取り組み

 品田CEOは、「市場の論理で価格が下がることに対して、メーカーが意思を持って価格コントロールをしていくことになる。2022年度のなかでは、対策する際の意思決定に時間がかかったり、その判断を市場に徹底するまでに時間がかかったりし、後手にまわった結果、その間に市場価格がさらに下がり、打った手が有効に機能しないということがあった。ここを圧縮し、3分の1のリードタイムで意思決定ができるようにした。2023年度は迅速な意思決定により、増販につなげることができる」と、改善に自信をみせた。

毎年のように新製品を投入する仕組みからの脱却

 さらに、流通改革では、顧客エンゲージメントの強化にも取り組む。先行体験ができる「Future Star Program」やオウンドメディアの強化などを通じて、多様なタッチポイントで、商品やサービスに触れることができる「知る・体験する」、幅広い商品群や地域密着型の販売チャネル、IoTを活用した延長保証サービスなどを提供する「購入・サポート」、サブスクリプションサービスの「foodable」や、家電付き賃貸事業の「noiful」などのサービス事業、中古リユース事業を行う「新たな価値創造」に取り組むという。

顧客エンゲージメントの強化
顧客エンゲージメントの強化

 また、D2C(直販、サービス事業)については、2022年度には33億円の事業規模であったが、2023年度には100億円、2024年度には400億円に拡大することを目指す。

 品田CEOは、「メーカーがダイレクトに顧客につながっていくことは中長期的に見ても、極めて重要である。Z世代は所有に対する考え方が異なり、必要な時にサービスを受けたいと考えている。販売の仕方や商品の届け方には、多様性を持った形で準備をしなくてはならない。2040年頃の視座で、サーキュラーエコノミーという観点から見ると、商品を長く使うということが、より重視され、長く利用するためのサービスや、故障予知をもとに修理することで長期間利用できる仕組みも必要になる。その際に、直接的な接点が差別化になる時代がくる。いまから準備をしていくという意味でも力を入れていく」と述べた。

 3つめの「コスト・オペレーション改革」では、グローバル標準部品の採用、製品設計のプラットフォーム化およびモジュール化を推進し、2022年度実績で約100億円のコスト削減効果を創出しており、2023年度にはテーマ数を増やして、150億円のコスト削減規模に拡大する考えだ。

 パナソニック くらしアプライアンス社の松下社長は、「グローバル標準部品の採用数を増やすとともに、全社推奨部品の活用、キーデバイスの集中契約、戦略購入先への発注シフト、理論原価によるコスト低減活動を進めている。また、設計部門と調達部門のITインフラの連動により、開発上流段階から、商品力、顧客価値、規格基準を適正化していく。これらは、全社横断プロジェクトとして推進し、グローバル標準レベルのコスト競争力を獲得する」と述べた。

 また、SCM改革により、実需連動型オペレーションを推進。2022年度は、ドラム式洗濯機で効果を検証。生産拠点である袋井工場との連動により、即納率は90%以上となり、流通在庫が半減し、欠品がなくなったという。2023年度は、冷蔵庫、エアコンなどのほか、シェーバー、ドライヤー、炊飯器、電子レンジにも商品レンジを広げるとともに、対象パートナーを広げるという。

 パナソニックの品田CEOは、「実需連動型SCMを実現するには、販売パートナーにも情報投資をしてもらう必要があるが、その投資をしてもWin-Winの関係を構築することができると感じてもらいたい。2023年度から、量販法人との本格運用に向けた準備を進めることになる」とした。

 パナソニックでは、SCM改革により、3年累計で100億円以上の営業キャッシュフローの改善を目指すという。

 また、ECM改革により、デジタルを活用した商品開発を促進する考えも示した。実機試作を無くすことで、開発リードタイムの削減と、コスト削減につなげる考えだ。

SCM改革
SCM改革
ECM改革
ECM改革

 パナソニック くらしアプライアンス社の松下社長は、「洗濯機では、CAE(Computer Aided Engineering)の活用による試作レス、耐久試験レス化により、フルモデルチェンジにおいて、開発リードタイムを半減できる」としたほか、「今後は、市場環境がさらに悪化することになる。3年累計のコスト削減目標を650億円から、730億円に見直し、コスト競争力の強化を進める」とした。

 一方、パナソニックの品田CEOは、B2C事業の将来像についても言及。そのなかで、商品やサービスを基軸にした、顧客との循環型バリューチェーンループの構築について触れた。

BtoC事業で目指す将来像
BtoC事業で目指す将来像

 「業界のリーダーとして、サステナビリティとウェルビーイングに貢献し続けるために、サーキュラーエコノミー時代を見据えた取り組みを進めている」とし、「良い製品を長く使ってもらうことが前提になる。そのためには、サーキュラー型に対応した強い商品の創造、IoTによる故障の予知診断、補修パーツの長期供給対応、顧客とのエンゲージメント強化が不可欠である。また、毎年のように新製品を投入する仕組みから脱却し、商品ライフサイクルの長期化にも取り組むことが大切になる。それを実現するためには市場価格が安定していることが求められ、そのためには新たな販売スキームにより、価格の信頼性を高め、常に一定の在庫量で、欠品がなく供給し、実需連動型SCMでマネジメントすることが必要となる。これらを連鎖的にすることで、商品ライフサイクルの長期化、顧客エンゲーシメントの向上、高価値商品の創造という形で輪がつながり、循環型のバリューチェーンを構築できる」と述べた。

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