パナソニック楠見CEO、成長に向けてギアチェンジ--「経営のお手本」とした日本企業は - (page 2)

車載電池事業は業績悪化を招いたディスプレイパネル事業とは異なる

 また、家電事業については、「ジャパンブランドでも、中国の資本で事業を行っている企業があり、そこと伍して戦わなくてはならない。そのためには、中国のスピードや、コスト競争力を取り入れていく必要がある。また、その力をアジアなどにも展開していくのが基本的な考え方である。一方、欧州では脱化石燃料の流れのなかで、『Air to Water(A2W)』事業を推進していく。それぞれの地域で、それぞれの事業を伸ばしていくことになる。同時に、地政学リスクへの対応をそれぞれの事業で適切にやっていくことになる」と語った。

投資領域と位置づける空質空調
投資領域と位置づける空質空調

 共同インタビューでは、環境への取り組みについて、質問が相次いだ。パナソニックグループでは、長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げ、2050年までの目標として、世界のCO2総排出量の約1%にあたる3億トン以上の削減を目指している。

 ここでは、「CO2削減貢献量」という指標を用いて、地球温暖化の阻止と資源循環を進めることになる。「電機業界をあげて、さまざまな企業が地球環境問題を解決していくことが必要である。パナソニックグループでは、その客観的指標として、CO2削減貢献量を用いており、今後、これを世界全体の標準的な指標にしていく必要があると考えている。この指標が投資家や金融業界からも認識されるようになれば、環境に貢献する事業や企業への投資が後押しされ、この分野で強みを持つパナソニックグループへの成長投資が促進されることになる」とした。

 CO2削減貢献量では、いま使っている機器を省エネ性能が高いものや、CO2排出量が少ないものに置き替えることによって、CO2排出量を減らすことを重視しており、具体的には、化石燃料で動いていたものを、電気で動くものに置き換え、そこで使用される電気が再生可能エネルギー由来のものに変わることを目指す。当然のことながら、10年前に使っていた家電を、省エネ性能が高い最新製品に買い替えることでも、CO2削減貢献につながる。

 「ただし、電気を作るために化石燃料を使っていたり、資源循環の際に廃棄物を溶かすために、化石燃料を使っていたりしていたのでは環境には貢献できない。社会全体の取り組みとして、供給電力を、再生可能エネルギーにする必要がある」と指摘した。

 また、「自動車業界を中心に、サプライヤーや顧客からの取引条件に、CO2排出削減への取り組みが含まれつつある。環境貢献は、パナソニックグループ全社をあげて取り組まなくてはならない課題である」とした。

 モビリティの電動化はカーボンニュートラル社会の実現に向けて、最も効果が大きい領域と位置づけ、その中核となる車載電池における貢献についても言及した。

 楠見グループCEOは、「宅配に使うラストワンマイルのクルマは小さく、EV化しやすいが、途中に充電をしないといけないような長距離を走る大型トラックの場合、充電のために時間がかかったり、一斉に多くの大型トラックが充電を開始すると系統電力がブラックアップしないように制御する必要が生まれたりする。物流業界でもEV化を促進したときに、発電量が賄えるのかという問題もある。フルスピードで充電できないという課題や、それによって、到着すべき時間に間に合わせられないという事態が発生する可能性も考えなくてはいけない。それならば水素電池を活用した方がいいのではないかという議論も生まれる。単にEV化すればいいという話ではなく、社会全体の輸送インフラを、どうグリーン化していくかという話で捉える必要がある」とした。

 また、車載電池事業では、生産設備に大規模な投資が行われことになるが、かつて大規模投資を行い、業績悪化を招いたディスプレイパネル事業と比較しながら、「ディスプレイパネル事業は、パネルサイズの大きさを追求していた事業であり、大きくするためには、新たな投資が必要になり、以前のものが使い物にならなくなるという構造だった。だが、車載電池は、サイズがそれほど変わるわけではなく、容量を改善し続けられる点が大きく異なる。また、多くのシェアを取らないといけないわけではなく、一定の市場において、特定の顧客としっかりと手を握って、そこでお役立ちをすれば収益を確保できる。レッドオーシャン化が予想される市場とは言われるが、シェアを獲得しないと、コスト競争力を維持できないというビジネスではない。技術で勝っていくことができる市場である」と自信をみせた。

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