筆者は今、緑と黒色をした陽気な小型のバーチャルペットとボール投げをして遊んでいる。子どもと一緒に、このぬいぐるみのようなペットをLeopardと名付けた。ヒョウによく似ているからだ。スマートフォンの画面をタップして、仮想のテニスボールを投げると、そのボールが床や肘掛け椅子に当たって跳ね返る。Leopardはボールを追いかけているようだ。これらはすべて、筆者のスマートフォン上で起こっている。「Pokemon GO」などのアプリで何年も前から使用されてきたのと同じタイプの拡張現実(AR)技術で実現している。Pokemon GOの開発元であるNianticにとって、これは、今後10年以内に到来するかもしれないARメガネの未来の世界に対する自社のビジョンを示すプロトタイプでもある。それから、このアプリでは、Amazonの新しいショッピングサービスも初めて採用している。
かわいらしい小型バーチャルペットにとって、それは大きなプレッシャーだ。現在、「Android」版と「iOS」版が無料で提供されているこの「Peridot」というアプリは、ARに対応した「たまごっち」と例えた方が近いだろう。Nianticは、たまごっちをデザイン面の目標にしているように思える。だが、Peridotには興味深い背景がある。このアプリはもともと、Nianticが思い描く、未来のメガネやヘッドセットで動くARのバーチャルコンパニオンのビジョンを示すコンセプトだった。そうした未来のデバイスでは、ユーザーが画面に触れるのではなく、浮遊する3Dオブジェクトを見ることになる。今回、そのコンセプトがスマートフォンのゲームとして実現した形だ。このゲームには、孵化や繁殖することもできるペットがたくさん登場し、ユーザーはスマートフォンでそれらを育てたり、餌を与えたりすることができる。
このゲームの理念は、Nianticがすでに提供しているAR対応のスマホゲームと大きく異なるわけではない。Pokemon GOには、プレーヤーが世話をする小さな生き物が登場する。「Pikmin Bloom」(ピクミン ブルーム)も同様だ。Peridotは、Pokemon GOなどのNianticの典型的なゲームと比べると、マップへの依存度やソーシャル性が少し低いとすぐに感じられるが、筆者がPeridotをプレイしたのは、リリース前のことだ。他のPeridotの飼い主と会って、ペットたちを遊ばせたら(繁殖もできるのだろうか)、そうした印象は大きく変わる可能性が高い。
独特なのは、Peridotが周囲の世界を把握し、ユーザーに見せる方法だ。このゲームは、スマートフォンの背面カメラを使用して、即座に周囲をマッピングする。また、障害物を避ける方法を把握し、テーブルに飛び乗ったり、さまざまなものの後ろを走っているように見せたりすることもできる。これは、Appleが「iPhone」のLiDARセンサーを利用して実現したのと同種の技術だが、ここでは、より多様なスマートフォンでシームレスに実現する(ただし、Peridotでは、ペットが壁を通り抜けてしまうこともある)。このアプリは、花やペット、椅子、壁など、現実世界にある物体や生物も認識できる。スマートフォンのカメラを使用して、ユーザーの周りの世界をスキャンし、少なくともその一部を理解する。このような機能は、「semantic understanding」(意味理解)と呼ばれる。
その意味で、これは、Qualcommと共にARメガネの開発を続けるNianticのAR技術のテストベッドだ。Appleが独自の複合現実(MR)ヘッドセットの準備を進めており、Googleやサムスン、Qualcommも未来のMRヘッドセットの開発に取り組んでいるが、ある疑問が生じている。つまり、これらのデバイスでは、どのようなアプリが使われるのだろうか。Nianticは、その問いへの答えを見つけようとしているのだ。
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