国内初のショールームがオープン--スウェーデン発バイクブランド「CAKE」の日本戦略を聞いた

 スウェーデンの電動バイクメーカー「CAKE 0 emission AB(ケイク)」が、日本展開を加速させている。

 2016年にスウェーデンで創業したCAKEは、ゼロ・エミッション社会の実現をミッションに掲げプレミアム軽量電動バイクを開発するメーカーだ。こだわりが光るデザインや機能性に二酸化炭素を排出しない持続可能性を兼ね備える。

(出典:CAKE)
(出典:CAKE)

 2022年10月にスポーツアパレルメーカーのゴールドウインと日本国内における独占的パートナー契約を締結し、2023年5月25日からウェブ販売を開始する。4月28日には日本初の公式ポップアップショールーム「CAKE Tokyo」が、丸の内ビルディングにオープンしたばかりだ。

 「進化する北欧イノベーションの今」を届ける本連載。今回は、CAKEの日本展開を担うゴールドウインを取材した。ゴールドウイン事業部 CAKEグループ 熊谷泰男氏、マーケティング グループ PR・クリエイティブチーム 佐藤浩貴氏に、CAKEのプロダクトの特徴や国内戦略を聞いた。

全く新しいモビリティ体験を提供

(左から)ゴールドウインの代表取締役社長 渡辺貴生氏と、CAKEの創業者 Stefan Ytterborn氏(出典:CAKE)
(左から)ゴールドウインの代表取締役社長 渡辺貴生氏と、CAKEの創業者 Stefan Ytterborn氏(出典:CAKE)

 CAKEは、アウトドア業界での成功実績を持つ起業家、Stefan Ytterborn氏がスウェーデンで創業した電動バイクメーカーだ。当初から「ゼロ・エミッション社会の実現」を掲げ、軽く、静かで、クリーンな電動バイクをモットーとしている。

 同社の電動バイクは、静寂なモーター、走行中の二酸化酸素の排出量がゼロ、ミニマルで洗練されたデザインが共通点となる。筆者のようなバイク素人であっても、その印象的なビジュアルに強烈なこだわりや“北欧らしさ”を感じた。

 主要展開モデルは、普通自動二輪(中型)免許が必要な「Kalk&(カルク アンド)」と「Osa+(オッサ プラス)」、原動機付自転車免許が必要な「Makka range(マッカ レンジ)」だ。

キャプション:主要展開モデルの「Kalk&(カルク アンド)」(税込価格:291万5000円)、最高時速:90km(出典:CAKE)
主要展開モデルの「Kalk&(カルク アンド)」(税込価格:291万5000円)、最高時速:90km(出典:CAKE)
キャプション:主要展開モデルの「Osa+(オッサ プラス)」(税込価格:225万5000円)、最高時速:90km(出典:CAKE)
主要展開モデルの「Osa+(オッサ プラス)」(税込価格:225万5000円)、最高時速:90km(出典:CAKE)
キャプション:主要展開モデルの「Makka range(マッカ レンジ)」(税込価格:86万9000円)、最高時速:25km(出典:CAKE)
主要展開モデルの「Makka range(マッカ レンジ)」(税込価格:86万9000円)、最高時速:25km(出典:CAKE)

 熊谷氏は、CAKEの電動バイクの革新性に魅了されたと話す。

 「CAKEのプロダクトは、独自開発された全く新しいパーツや仕組みを用いて設計されている。ムダがなく軽量、かつ普遍的な美しさを追求したデザインでもある。さらに走行中の二酸化炭素の排出量がゼロと、環境にも配慮されている。機能性、デザイン性、持続可能性が高く、イノベーションの本質を感じている」(熊谷氏)

キャプション:荷物を置くためのパーツを取り付けるなど、カスタマイズ性も魅力(出典:CAKE)
荷物を置くためのパーツを取り付けるなど、カスタマイズ性も魅力(出典:CAKE)

 独自性や新規性ゆえ高価格帯ではあるが、その分、新しいモビリティやアウトドアの体験を提供していきたいという。

展示会・試乗会の反響も上場

 ゴールドウインがCAKEと日本国内における独占的パートナー契約を締結するにいたった背景をたずねてみると、両社はかなり以前から互いに引かれる点があったという。

 「創業者のStefanはCAKEの創業以前から、長くアウトドア業界で事業を展開している。同業者として国際的な展示会等で出会い、以前から彼のプロダクト開発への姿勢や洗練されたデザインセンスに惹かれていた。そんな彼が新たにメーカーを立ち上げるということで、日本でのパートナーシップの誘いがあり、契約にいたった」(熊谷氏)

 これまで、日本では報道・一般向けの展示会や試乗会を実施したほか、3月に開催された第50回東京モーターサイクルショーにも出展した。いずれも反響は上々だったそうだ。

 「原宿という場所柄もあってか、一般向けの展示会・試乗会は非常ににぎわっていた。週末は1日100人以上は来場していたと思う。男女比でいうと男性のほうが多いとは思うが、20〜30代くらいの女性の来客も目立っていた。『こういったデザインのバイクなら乗ってもいい』『かわいい』という反響が女性から多く聞かれた」(熊谷氏)

3日間で約10万人が来場したという「第50回東京モーターサイクルショー」での展示の様子(出典:CAKE)
3日間で約10万人が来場したという「第50回東京モーターサイクルショー」での展示の様子(出典:CAKE)

 東京モーターサイクルショーでは、ブースの作り込みや展示方法を本国スウェーデンに合わせて出展。こちらも多くの来場があり、反響がよかったという。

東京・丸ビルに日本初のショールームがオープン

 直近の動きとしては、4月28日に日本初の公式ポップアップショールーム「CAKE Tokyo」が、東京駅からすぐの丸の内ビルディングにオープンしたところだ。

ショールームの外観もシンプルで洗練された印象だ(出典:CAKE)
ショールームの外観もシンプルで洗練された印象だ(出典:CAKE)
オープンしたばかりの「CAKE Tokyo」の内観(出典:CAKE)
オープンしたばかりの「CAKE Tokyo」の内観(出典:CAKE)

 同ショールームは半年の期間限定でオープンする予定で、5月25日から発売開始する計8モデルを順次展示する。東京丸の内周辺の街中を実際に走行できる試乗会も開催中だ。

 その後は、場所を移しながらポップアップショールームを開催する予定だが、常設のショールームを構えたい意思もあるという。

先んじて発売されるのは、「Kalk&」や「Makka range」を含む計8モデル。子ども向けもある(出典:CAKE)
先んじて発売されるのは、「Kalk&」や「Makka range」を含む計8モデル。子ども向けもある(出典:CAKE)

 国内の販売台数の目標は3年間で5000台となる。価格帯を踏まえると、かなりチャレンジングな目標設定となるが、欧州諸国と比較して遅れている「日本のEV化」への挑戦でもあると考えているそうだ。BtoCのみならず、BtoBでの展開も見込んでいるという。

国内展開の課題は「アフターサービス」

 CAKEの国内展開にあたりハードルになるのは、「アフターサービス」だと熊谷氏はいう。電動バイクは車検がなく、長く乗り続けるには必要に応じてメンテナンスを施さなければならない。そこで、購入後の顧客へのスムーズな対応が求められるというわけだ。

 「何かあったらすぐに相談に乗れる、車体の状態を確認できる状況を作りたい。ショールームで受け付ける体制づくりのほか、サービス拠点を準備している」(熊谷氏)

所有することでアウトドアシーンでの楽しみが広がるかもしれない(出典:CAKE)
所有することでアウトドアシーンでの楽しみが広がるかもしれない(出典:CAKE)

 購入した顧客へ迅速、丁寧、安心に対応していくことで顧客満足度を高め、ファンを拡大していく。まずはサービスの土台を固めて、普及を目指す意向だ。

 新規のモビリティであることから、バイクが好きな層だけでなく、デザインにこだわりがある人や環境意識が高い人とも親和性が良いと見込んでいるという。軽くて操作性が良いこともあり、試乗してみて購入の熱量が高まることもありそうだ。

 

小林香織

フリーライター/北欧イノベーション研究家
「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】などの記事を執筆。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6ヵ月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材する。2022年3月より東京拠点に戻しつつ、北欧イノベーションの研究を継続する。

公式HP:https://love-trip-kaori.com

Facebook :@everlasting.k.k

Twitter:@k_programming

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