トヨタ自動車は4月7日、4月1日に発足した新体制に伴う方針を発表した。
LexusやGAZOO Racingでプレジデントを務めた社長・執行役員の佐藤恒治氏と、副社長・執行役員を務める中嶋裕樹氏、宮崎洋一氏が、新体制のテーマや経営ビジョン、目指す未来などについて語った。
トヨタの新体制では、「継承と進化」をテーマとして掲げている。トヨタが従来から目指す“町いちばんのクルマ屋”で“もっといいクルマをつくる”を追求し続けるというものだ。佐藤氏はさらに、チーム経営にもこだわりたいと加える。
「小さいころからクルマが大好きで、トヨタでクルマづくりに長年携わり、クルマづくりの楽しさを学んだ。その楽しさを多くの仲間に伝えたい。また、クルマづくりは、世界37万人のトヨタの仲間と、仕入先、販売店と一緒に全員で取り組むチームプレー。今のような環境変化が激しい時代は、肩書ではなく役割で、機能を超えて動き、何倍ものスピードで実践の量を増やすことが何よりも大切。新体制では、“チームで、同時に、有機的に動く”新しい経営スタイルで、未来への挑戦を加速させ、“モビリティ・カンパニー”への変革を目指す」(佐藤氏)
さらに、グルーバル企業であるトヨタの使命は「幸せの量産」であり、美しい地球を守り、世界中の人々の暮らしを豊かにするため、クルマの未来を変えていく必要があると続ける。そのためにも、「カーボンニュートラル」と「移動価値の拡張」にこだわるという。
カーボンニュートラルでは、“2050年時点で、クルマのライフサイクル全体でのカーボンニュートラル”を目指す。
具体的には、現時点では徹底的に、電動化に取り組む。電動車の普及を進め、新興国も含めたハイブリッドの販売を強化し、プラグインハイブリッド(PHEV)の選択肢を増やす。電池の効率を上げ、EV航続距離は200km以上に延ばすという。
BEVのラインアップは2026年までに10モデルを追加、販売台数を150万台に到達させるとともに、普及期に向けて次世代BEVの専任組織を新設。また、“高効率”で“こころ揺さぶる”、「クルマ屋が創る今までとは全く異なる次世代バッテリーEV」(中嶋氏)を2026年に投入するという。
新しい事業モデルの構築、その先の水素社会の実現に向けたプロジェクトなど、将来への仕込みも大胆に進める。「タイや福島での社会実装や、商用FCEV(燃料電池自動車)の量産化、モータースポーツの場を活用した水素エンジン技術の開発など、産業や国を超えたパートナーの皆様と一緒に、水素を“使う”領域を進める。エネルギー産業とも連携し、カーボンニュートラル燃料の技術開発を進める」(佐藤氏)
新興国も含めて誰ひとり取り残さない電動車の普及、CO2の低減に全方位で取り組み、全世界で販売するクルマの平均CO2排出量を2019年と比べて2030年に33%、2035年に50%を越える削減を目指すとした。
佐藤氏は、「カーボンニュートラル」「移動価値の拡張」を柱に、トヨタが目指すモビリティ社会のあり方をまとめた「トヨタモビリティコンセプト」も紹介した。
コンセプトでは、BEVを「電気を運ぶモビリティ」という新しい可能性として捉えるといった、クルマの価値を拡張させる「モビリティ1.0」、クルマが成熟していない新興国や空の移動など、今のトヨタの事業範囲を超える「モビリティ2.0」、「Woven City」での実証実験など、クルマと社会システムを融合させる「モビリティ3.0」に分類している。
また、それぞれをクルマの“電動化”と、さまざまな情報をプラットフォーム「arene OS(アリーン)」と組み合わせることなどで実現できる“知能化”、サービスやエネルギー源の拡張といった“多様化”の観点で、拡張していくという考えだ。
佐藤氏は、「クルマが進化した先にモビリティがあり、モビリティ・カンパニーへの変革の中心にはクルマがある。クルマの持つ可能性を広げるためには、これまで培ってきた“もっといいクルマづくり”と、(トヨタが従来から目指すしている)“町いちばんのクルマ屋”の考え方を基盤にした進化が必要。商品と地域を軸に、クルマの未来を変えていく」という。
新体制では、中嶋氏が「商品」を担当し、宮崎氏が「地域経営」を担当。クルマづくりと町いちばんのクルマ屋を追求していく考えだ。
「トヨタは、“商品で経営する”会社で、世界中で、お客様や社会の多様化にこたえ、幸せを量産する会社だ。グローバル、フルラインアップの力を磨いてきたトヨタだからこそ、目指せるモビリティ社会の未来がある。未来を変えていくのは意志と情熱にもとづく“行動”と捉え、仲間とともに挑戦し、クルマの未来を変えていきたい」(佐藤氏)と語った。
【4月10日10時00分追記】タイトルを一部修正しました。
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