量子ドットはこうして作られる--サンノゼでNanosysの工場を見学

Geoffrey Morrison (Special to CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年03月16日 07時30分

 どのようなものなのか、予想もつかなかった。筆者は、量子ドットに興味を持っている。微細な粒子で、テレビの輝度や発色に効果を発揮する。そのような物質がどうやって存在するのか、マクロなレベルでは理解しているものの、それを作っている工場となると、果たしてどのようなものが見られるのだろう。科学という名の大釜が煮立っているのはどんな様子で、どのような火が燃えているのか。3人の科学者が、呪文を唱えながらそれをかき混ぜているのだろうか。自分の目で確かめてみたかった。

NanosysのCEO兼プレジデントであるJason Hartlove氏が、2本の瓶に紫外線を当てているところ
Nanosysの最高経営責任者(CEO)兼プレジデントであるJason Hartlove氏が、2本の瓶に紫外線を当てているところ。中には、製造工程の段階が異なる量子ドットが入っている
提供:Geoffrey Morrison/CNET

 Nanosysは、量子ドットを製造している大手メーカーの1社だ。当然ながら、顧客にどのような企業がいるのか明言しなかったが、おそらく皆さんも同社の量子ドットを使ったテレビを見たことがあるだろう。Nanosysはその量子ドットを何十億も作っている。といっても、数を言ったところで、もちろんあまり説明にはなっていない。量子ドットそのものは、あまりにも微細だからだ。量子ドットを作っているメーカーは他にもあるが、同社の製造工程を見れば、その作り方がよく分かるだろう。

 筆者が向かったのは、カリフォルニア州サンノゼにある同社の工場兼研究所だ。科学っぽいものがたくさんあって、小型のビール工場のようなものが見られると予想していた。どちらの予想も、結果的には驚くほど当たっていたことになる。そのときの見学の様子をご紹介しよう。

量子ドットが生まれ、成長して、召喚される場所

 少し補足しておくと、量子ドットとは、エネルギーの供給によって発光する微細粒子だ。用途は多岐にわたるが、米CNETとして特筆すべきは、テレビの性能を強化する性質だろう。通常、青色LEDが緑と赤の量子ドットを励起し、LED液晶ディスプレイ(LCD)の性能が、数年前までは不可能だったレベルにまで向上する。映像が明るくなったり、発色も鮮やかになったりするのだ。

 最近、サムスンは量子ドットを使って有機LED(OLED)の性能を同じように引き上げ始めている。「CES 2023」では、次世代のディスプレイ技術をかいま見る機会があった。エレクトロルミネセンス方式の量子ドットである。この方式のディスプレイも、数年後には登場しそうだ。量子ドットのみで成り立っており、OLEDやLCDの技術は使われていない。

 では、その量子ドットはどうやって製造されているのか。筆者がサンノゼに向かった目的は、それを知ることだった。Nanosysの本社は、これといった特徴のない建物で、市内に無数にあるオフィスパーク風の建築群の一角をなす。工場というよりも、どちらかと言えば、説明できないものを販売するスタートアップ企業が入っている建物のように見える。

各種配合や手法を試験する装置一式の小規模版
各種配合や手法を試験する装置一式の小規模版
提供:Geoffrey Morrison/CNET

 中に入れば、よりはっきりと、ここが本格的な場所であることが分かる。安全のためのゴーグルを渡され、研究室に向かう。筆者のような稼業としては、そうした装備を渡してくれるのは、良い兆しだ。大きい建物ではないが、商品が微細粒子なのだから、大きくなくてよいのだ。電子顕微鏡、積分球、試験室などが並んでいるところを抜けていく。筆者が特に気に入ったのは、回転しながら発光している液体の入った球形の大きなガラス器具だ。三角フラスコくらいは知っているという程度なので、恥をかかないように、それ以外のフラスコの名前も必死になって思い出そうとする。思い出せなかったので、黙っていることにした。

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