三井不動産は3月1日、フューチャーと共同でデジタル訓練サービス「&Resilience」などを提供する新会社「アンドレジリエンス株式会社」を設立したと発表した。三井不動産の災害対応ノウハウと、フューチャーのITコンサルティング力を掛け合わせ、災害時の行動力強化を支援していく。
アンドレジリエンスは、三井不動産とフューチャーが資本業務提携を目的とした合弁契約を締結し、1月に設立した会社。三井不動産グループの提案者が事業責任者となり事業を推進する、事業提案制度「MAG!C」発の事業になる。
アンドレジリエンス 代表取締役社長の伏木宏之氏は「三井不動産では安全安心な街づくりをグループのミッションとして掲げ、取り組んでいるが、災害時に施設運営者が正しく、等しくサポートしていくことは難しい。重要なのはテナント1社1社、社員一人ひとりが自助力をつけること。私たちが不動産会社として培ってきたノウハウやスキルがこの自助力強化にいかせるのではという思いからサービスをスタートした」と新会社設立の背景を話す。
三井不動産では、震災後の2011年から2016年の5年間、既存ビル約60棟に対し約200億円の防災、BCP関連の投資を実施。日本橋と豊洲で展開している電気、熱供給事業といったスマートシティプロジェクトや、行政、地域住民と連携した大規模な防災イベントの実施など、安心、安全に寄与する施策に取り組んできたという。
&Resilienceプリンシパルコンサルタント、NPO法人事業継続推進機構 副理事長の伊藤毅氏は「東日本大震災や新型コロナウイルスによる感染拡大など、取り巻く脅威が拡大する中、企業は生き残れる力を身に着けているか疑問に感じている。災害が起きたときは取り組みをするが4~5年で忘れてしまう。それを繰り返す状態を続けてきたが、やはり底上げしないと災害時に日本企業、経済は生き残れない。災害に備え続けられる体制づくりが日本企業のミッション」と説明する。
&Resilienceは、災害時の被害を事前に減らすための「脆弱性診断」と災害を疑似体験することで気づきや災害発生時の行動力を可視化する「見える化訓練」を通じて、BCPにおける課題を抽出するというもの。
脆弱性診断は、問診への回答により事前対策の進捗度を可視化。見える化訓練は災害が発生した際のさまざまな状況を想定したシナリオ動画を視聴し、災害を疑似体験することで、訓練の必要性への気づきや災害発生時における行動力の可視化を促すという。
発表会では見える化訓練のデモも実施。スクリーン上に「地震発生」「社員1人が負傷」などのリアルなシナリオが映し出され、訓練を受ける側はシーンごとに自分が取るべき対策を書き出していくというもの。訓練後には各シーンに応じた対策のチェックシートが配布され、できたこと、できなかったことをチェックしていく流れだ。
「災害訓練というと、びっくりして終わってしまうケースもあるが、&Resilienceは、チェックシートで取るべき行動を確認するなど、その後の改善活動につながることが特徴。シナリオは災害時に直面し、悩んだ具体的なものを落とし込んでおり、追体験できるのが訓練のポイント」(伏木氏)とポイントを話す。
現在はZoomを使って提供しているが、2023年秋にはオンデマンド型サービスも開始する予定で、スマートフォンから自分の都合に合わせて訓練の受講ができる環境を整える。
サービス内容は、年2回の見える化訓練が受けられるほか、毎年の脆弱性診断と訓練結果による自社対応能力レベルと課題解決進捗状況の管理、自社の行動計画の最新家など。利用料は年額30万円としている。
三井不動産のビルなどに入居しているテナントに紹介していくほか、セミナーを実施し入会を募っているとのこと。対象は企業のほか、店舗、医療現場など。「家庭向けなどシナリオのバリエーションも増やしていく」(伏木氏)とする。
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