ChatGPTは、OpenAIによって開発されたチャットボットだ。AIと対話しながら、知りたい情報を導き出せる。今、ChatGPTによって我々の仕事がどう変わっていくのかが注目されている。
ここでは、歯科矯正サービス「Oh my teeth」を提供するオーラルテックスタートアップで働く私が、ChatGPTによって日々の業務を効率化するアイデアや活用メリットを紹介する。
Oh my teethは創業4年目。とにかく業務効率化が求められる。通常業務をこなしながら、日々新しいトライも必要だからだ。新しいアイデアのために思考を働かせるには、効率化できる業務を探し、それらに使う時間をどんどん圧縮しなければならない。
そんなときにChatGPTのリリースを知った。今回実際にChatGPTを業務に活用してみて、使用前は想像できなかった使い方や、効率的な使い方が見えてきた。今日から使えるプロンプト(呪文)を、実例を交えて紹介するので参考にしていただければ幸いだ。
今回私がChatGPTにやってもらったことは以下だ。
私のOh my teethにおける主業務は、オウンドメディア「歯科矯正ブログ」の記事作成や編集だ。記事作成にあたりよく行うのが、ユーザーインサイト調査である。現場で直接ユーザーの声を聞いたり、メンバーが残したメモをチェックしたりして、ユーザーがなぜOh my teethを選んでくれたのかを分析し、記事に反映している。
ただし、毎日記事を更新していると、専門用語を当たり前のように使ってしまったり、前提知識がないことをベースに考えられなかったりと、Oh my teethを初めて知ってくれたユーザーの気持ちに寄り添えなくなることがある。そういうときに使えるのがChatGPTだ。たとえば「矯正相談に初めて来た患者が知りたいこと」を、ChatGPTにたずねてみる。
続いて、抜歯矯正に関する記事の見直しのため、ChatGPTに助言を求めた。
上記の回答から「歯科矯正によって健康上の問題を解決するためには抜歯が必要」といった、患者が納得できる説明があるかどうかが、不安を解消するために重要であることがわかった。
これまで、新規記事作成と既存記事をアップデートする際は、現在、検索上位にある記事の内容や歯科矯正に関する資料を調査してプラスアルファの情報を追記していた。その点、ChatGPTは問いかけるだけでアイデアが出てくるため、各資料一つひとつに目を通す手間がない。もちろん信憑性をチェックする必要はあるが、多角的な視点をサクッと得られる点は大きなメリットだろう。
歯科矯正ブログではOh my teethを導入しているクリニックの歯科医師のアドバイスを得ながら記事を公開、更新している。ただ、どんなに高品質な記事を作成しても、読者にクリックしてもらえないと読まれない。読者にクリックしてもらえるタイトルにするには、そのキーワードで検索する読者のニーズの分析が不可欠だ。そこでChatGPTに「SEOのプロ」になってもらい、以下のようにリクエストしてみた。
「命令文がイマイチだった」と感じつつ、2の「そんなに悪くない歯並びでも矯正が必要かも」のタイトルの方向性が良いと感じたので、実際の記事に反映した。結果、公開翌日に検索キーワード1位を獲得し、CTR(クリック率)も検索順位1位の平均的なデータを上回っている。
ちなみに、ここでのChatGPTへのリクエスト文がこれまでのリクエスト文とは少し異なる点にお気づきだろうか。このようなリクエスト文の作成方法は、後ほど改めて紹介するので参考にしてほしい。
Oh my teethでは各メンバーが1週間単位で業務計画を立て、遂行している。タスクをToDo・Doing・Doneの段階に分けて管理し、週に1回チームで行う「スクラム」でタスクの消化状況や成果を共有する。
私は毎週、直属の上司であるCEOの西野(Oh my teeth 代表取締役CEOの西野誠氏)と1on1を行っている。1on1の課題として、議論が発散して気づいたらブレストに発展してしまう点がある。その場でアイデアがどんどん生まれること自体はポジティブに捉えているが、本来の目的である「成果とリスクを正しく伝える」からは遠回りになっているのではないかと反省することが多くある。この点を解決するため、ChatGPTに自分の成果を効率的に伝える方法を聞いてみた。
上記の回答から考えるに、やはり明確な数字とともに成果報告するのが望ましいようだ。私自身、この点は課題であると日々痛感している。ふんわりとしたアイデアのままで実行し、成果が測定不能であることに後から気づくことも多々ある。ChatGPTの回答によって改めて改善点を認識できた。
このほか、以下のような相談もしてみた。
最初の回答からさらに質問すると、具体的なツールや方法も提示してくれる。誰かに相談したいとき、相手にただ頷いてもらうだけでいいときもあるかもしれないが、具体的な解決策まで聞きたい場合、ChatGPTは良い相談相手になるだろう。
ChatGPTを使ってみてわかったことは、向き不向きがある点だ。質問をそのまま投げるよりも、すでにある文章をまとめたり、適切に指示を出して回答してもらったりするほうが効果的に使える。
なぜならChatGPTはインターネット上にある情報から「確率的に高い」回答を返しているからだ。単純に知識を問うと、インターネット上で多くの人が誤っている情報があれば、誤った情報をそれっぽく回答してしまうことがある。一方、こちらがある程度条件を定めてしまえば、確率的に高い回答(言ってしまえば当たり障りのない無難な回答)から、一気に的を得た回答を得られるようになる。例えば以下のような具合だ。
最初の質問よりも、前提条件「プロのSEO担当者」や、知りたい情報「H2タグ(見出し)」を設定することで、実際に使えそうな内容が返ってきた。
以下は上記のような前提条件を設定できるテンプレートだ。ChatGPTを使う際はぜひ活用してみてほしい。
ちなみにこのようなプロンプトの作成方法は、noteのセミナー「【アーカイブ公開中】あなたの仕事が劇的に変わる!? チャットAI使いこなし最前線」で学んだ。これからChatGPTを使い始める人はぜひ参考にしてほしい。
ChatGPTを使いこなせるようになると、単純に情報を引っ張ってきたり、アイデアを膨大に出したりすることに時間を費やす必要がなくなる。得られた情報をどう分析していくか、どのアイデアを採用すべきかに思考が使えるようになる。つまり社員一人ひとりにChatGPTというアシスタントがいて、社員自身はより生産性の高い仕事ができるようになるイメージだ。
ただ、ChatGPTを「丸投げすると何でも答えてくれるAI」と思っていると、思うような回答が得られず逆に非効率になってしまうことがある。ChatGPTを実際の業務に活用するには、その特徴を踏まえておかなければならない。特に注意すべきなのが、次の点だ。
以下の質問と回答を見てほしい。
質問の「インシグニア」と、回答の「Invisalign(インビザライン)」は全く別物だ。試しに「インシグニア矯正」「インビザライン」をそれぞれGoogle検索してみてほしい。
このように学習できていない情報でもそれっぽく返してしまうことがある点は、ChatGPTを使う上で念頭に置いておかなければならない。
続いての質問に対する回答も不正確だった。
なぜChatGPTが「現在の日本の総理大臣は菅義偉です」と答えたかというと、2021年9月ごろまでの情報しか搭載されていないからだ。菅前総理大臣の任期は2020年9月16日から2021年10月4日まで。確かにChatGPTにおける「現在」の総理大臣は菅前総理大臣と言える。
一方、すでに道筋は見えているが専門性の高いアドバイスによって精度を高めたい場合や、前提条件をもとに人間では到底出せないほど大量のアイデアが欲しい場合など、ある程度こちらが指示出しをすれば、ChatGPTは頼れる相棒になる。
今後は、Google検索エンジンにおける「ググり力」のように、ChatGPTといったAIツールにおいては「AI対話力」のようなものが必要になってくるのかもしれない。ChatGPTが得意なことを見極め、よき相棒として使いこなせるようになれば、私たちの業務は格段に効率化されていくだろう。
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